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2020年1月 1日 (水)

高校国語の教材におけるジェンダー問題

 どなたも、夏目漱石「こころ」、森鴎外の「舞姫」、中島敦「山月記」の、いずれかを高校国語の教科書で読まされた経験があるかと思います。私は、鴎外の「舞姫」でした。文庫も買っちゃいました。

 この3作品に共通することは何でしょう。それは、「エリート男子の苦悩と挫折の物語」というのが、新井紀子氏(国立情報学研究所)の見立てです。

 新井氏は、

「エリート男子に尽くして妊娠した揚げ句に捨てられた踊り子(舞姫)や、詩人として名声を獲得したいという野心と己の実力との乖離(かいり)から発狂した揚げ句、虎になった主人公の陰で貧窮する妻(山月記)に、女子生徒が共感したりロールモデルを見出したりすることは難しい」

とばっさり切り捨てます。新井氏自身がこういった「近代男流日本文学」に食傷し、新井氏の娘さんも同じ経験をされたとのこと。新井氏の調査では、高校国語の教科書に採択されている女性著作家は、小説/物語で約4割、評論分野では1割以下とのことで、隠れたジェンダー・バイアスがありそうです。

 漱石の「こころ」でも、「お嬢さん」は彼女の周囲の「先生」と「K」に勝手に自殺されて、彼女には何の咎もないのですから、いい迷惑ですし、物語での役回りも「客体」の「物品」扱いです。漱石がそう描くのは勝手ですが、それを現代日本の高校で、授業として女子に読解させては、彼女たちが辟易するのは非難できません。

ということで、興味深かったので、下記、ご紹介しておきます。

エリート男子の高校国語 新井紀子  :日本経済新聞

ついでに、私も生まれて初めて、漱石の「こころ」を完読してみました。
その顛末を下記、弊ブログ記事としました。ご笑覧下さい。

夏目漱石『こころ』1914年岩波書店: 本に溺れたい

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