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2020年6月10日 (水)

塩沢由典『増補 複雑系経済学入門』2020年5月ちくま学芸文庫(1)

塩沢由典『増補 複雑系経済学入門』2020年5月ちくま学芸文庫

◆本書書誌

増補 複雑系経済学入門
塩沢由典著
ちくま学芸文庫
2020年5月10日発行
535ページ

◆本書詳細目次
序文
第1部 なぜ、複雑系経済学か
第1章行き詰まった経済学
第2章計画経済の失敗が教えるもの
第3章新古典派経済学批判
第2部 科学知のパラダイム転換
第4章複雑系科学の広がり
第5章ニュートンとラプラスを超えて
第6章新しい数学的自然像
第3部 合理性の限界とその帰結
第7章複雑系経済学の構想
第8章経済システムの特性と経済行動
第9章複雑系としての企業
第4部 自己組織する複雑系
第10章自己組織系としての経済
第11章収穫逓増の諸概念とその仕組み
第12章市場変化のダイナミクス
第13章二十一世紀の企業と経済
読書案内
引用図版出典一覧

補章『複雑系経済学入門』以後の二〇年
二十年の歩み
ブライアン・アーサとサンタフェ研究所の貢献
サンタフェ流アプローチへの不満
進化という視点
新しい価値論と経済像
技術進歩と経済発展
金融経済の経済学
一般読者への読書案内
索引


◆著者の近著と本書

 著者は、2017年、2019年と、続けて2著、世界最大手の理工学系学術出版社から、以下の英文共著書を出版されています。

※その3年前の2014年には、『リカード貿易問題の最終解決――国際価値論の復権』(岩波書店/単著)、『経済学を再建する―進化経済学と古典派価値論 (中央大学企業研究所研究叢書)』(中央大学出版部/共著)の二著を3月ほぼ同時に出されています。

・2017年
A New Construction of Ricardian Theory of International Values: Analytical and Historical Approach (Evolutionary Economics and Social Complexity Science Book 7) English Edition
2017/4/10, Springer, 346pages
Yoshinori Shiozawa , Tosihiro Oka, Taichi Tabuchi

・2019年
Microfoundations of Evolutionary Economics (Evolutionary Economics and Social Complexity Science Book 15) English Edition
2019/7/10, Springer, 303pages
Yoshinori Shiozawa, Masashi Morioka, Kazuhisa Taniguchi

 上記2点は共著とはいえ、ともに first author は塩沢由典氏です。氏は本年、77歳になられますので、これは慶賀すべきことであると同時に、誠に驚くべきことです。

 最近、人類史学者ジャレド・ダイアモンド氏(82歳)があるインタビュー(※)で、「わたしは82歳です。60歳になる直前に『銃・病原菌・鉄』を刊行しました。振り返ってみるともっとも生産的だったのは70歳代でした。」と述べているのを鑑みると、この島国日本にも、ダイアモンド氏級の知的先端を切り開く70歳代のパイオニアが存在することに歓びとともに、驚きを禁じ得ないのです。ジャレット氏の著書はいずれも浩瀚な歴史書ですが、塩沢由典氏は全て尖鋭な理論書なのですから、十分比肩し得ると評価できますし、後世への影響を考慮するなら、21世紀末に書かれるであろう経済学史の教科書には、塩沢由典氏の名が特筆大書されるのは確実ですから、学問史の重みから言ってむしろ、こちらのほうが余人に代えがたい知的達成と言えるでしょう。

日本は人口減少社会を恐れるな / ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』)|文藝春秋digital


◆手早く本書内容を知りたい方へ

 本書は浩瀚な書です。旧版単行本で442頁、この増補版文庫では535頁もあります。この版で初めて本書を知った方で、「なにが書いてあるのか」だけ知りたい方は、書店店頭、あるいは図書館新刊コーナーで、著者「序文」を読むことをお薦めします。気の短い方なら、「序文」中の「本書の構成」だけでも可です。著者によって緊密かつ整然と本書内容が要約されています。概観を得るだけならそれで必要かつ十分でしょう。読みたくなったら、購入等され、腰を据えて取り組んで頂ければよろしいと思います。

 本書の二度目の読者であれば、「補章」のみ必要であろうかと思います。ただ、この「補章」だけで、引用文献表を含めて75頁もあり、21世紀における20年間の、著者の学問の歩みと経済学界の「複雑系」絡みの動向が濃縮して(つまり「研究者」向けに)書かれていますので、立ち読みレベルでは困難でしょう。むしろ、「補章」だけでもこの新刊文庫を買う価値はありますので、値段を見て一瞬「ウッ」となるでしょうが、ここは目をつぶって購入されるのが賢明であろうと考えます。


 ではいよいよ、本書内容の検分に入りますが、何分、五百頁を超えるものなので、二度目の通読となる私ですがこれを一気に評するのは難しい。そこで、幾つかに分割しながら、進める事と致します。従いまして続きは次回となります。

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