「選択的親和性」から「進化律」へ / From "Elective Affinities" to "Evolutionary Law"
昨日、某読書会のたまり場である、某駅北口の喫茶ルノアールで、10月例会をしようとしましたら、そこがoutでした。そこで、しかたなく、南口の星乃珈琲店まで移動。それがOKというか、むしろ better でした。つまり、「怪我の功名」。
この「怪我の功名」というのが、野口雅弘『マックス・ウェーバー ―近代と格闘した思想家』2020年5月中公新書(2594)、p.76でも紹介されている、
「選択的親和性」「Die Wahlverwandtshaften」「Elective Affinities」
の、日本語の文脈でもっともフィットする言葉だと思います。
昔、山田大紀(Hiroki)というfootballer(山田大記はまだか・・・: 本に溺れたいを参照)がJリーグにいまして、「Jで一番うまい(ドイツに渡って以降、よくわからん)」と評されていました。山田は右利きなのですが、左足のキックも素晴らしい。中学のとき、練習中に右足を怪我しまして、リハビリの際、少しでも早くゲームに復帰したいので、徹底して左足の練習をして、結果、両足利きとなり、後年名手となりました。
こういう、事後的に見て後知恵で合理化できるプロセス、事後的にしか判明しない合理的プロセス、これが「選択的親和性」です。そして、これはダーウィンが明確にした「進化 evolution」(=事前的「変異」+事後的「選択」)と同じ論理構造を有します。
すなわち、《因果律》が「神(のように語る偉そうな哲学者)からみた時間律」であるならば、《進化律》は「人間からみた時間律」という訳です。
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コメント
塩沢先生
コメントありがとうございます。
弊ブログで、この「選択的親和性」には、かなりの頻度(計16回)で触れています。
それらを読み直したのですが、正面から論じたものが有りませんでした。先生からのご質問がありましたので、これを機に一度整理する必要を感じます。少しお待ちください。当座のご参考まで、下記弊ブログ記事をご参照してみて頂ければ幸甚です。
「歴史における発生と定着、あるいはモデルと模倣」
http://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2010/01/post-47f4.html
「マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波文庫(1989年)(その2、Jan.16追記)」
http://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2008/01/1989_822b.html
「ヒューム=ハイエク保守主義の理論的欠陥(3・結語)/ Theoretical flaws of Hume-Hayek conservatism (3 : a conclusion) 」
http://renqing.cocolog-nifty.com/bookjunkie/2007/11/humehayek_conse_b0be.html
投稿: renqing | 2020年10月28日 (水) 10時19分
ルノアールより星乃珈琲店の方がbetterであった理由がよく分かりませんでしたが、「怪我の功名」は経営学でも有名です。藤本隆宏先生の『生産システムの進化論』(有斐閣、1997)には、トヨタ生産方式は、3つほどの「怪我の功名」の結果であると指摘されています(この本の中核部分のひとつ)。ただし、これはたんに運が良かったということではなく、藤本先生の言われる「進化能力」=「能力構築能力」があったから可能になりました。
Weberに「選択的親和性」という概念があったこと、知りませんでした。どこかですでに紹介されていますか。もしまだでしたらいちど詳しく説明してください。
投稿: 塩沢由典 | 2020年10月27日 (火) 10時30分