「コミュニケーション」:現代日本の《呪符》か《祝詞》か / Communication: Modern Japan's Spell or Spiritual lyrics?
仕事がらみで、二つのテキストを読みました。
1)竹内一郎『結局、人は顔がすべて』2016朝日新書
2)平田オリザ『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か 』2012講談社現代新書
竹内は1)の中で概略こう述べています。
アメリカはその国家創生の起源から多言語国家で、言葉が通じないので、表情・ボディランゲージ等を総動員して(説明過剰な)「わからせる」文化を形成し、それが米国の世界覇権とともに、米国製テレビドラマ、米国製映画を媒介として20世紀後半、グローバルスタンダードとして米国以外に押し付けられてきた。
平田は2)の中で概略こう述べます。
現代日本は少子化のため、子どもたちは狭い人間関係の中で、幼年期・少年期を過さざるを得ない。そのため他者と出会う機会がない。表現は他者を必要とするが、一方で子どもたちの教室には他者はいない。そのため子どもたちは自己を表現する欲求を失っている。「伝えたい」という気持ちは、「伝わらない」という経験からしか来ない。現代日本の子どもたちは、コミュニケーション能力が低下しているのではなく、「伝わらない」という経験が決定的に不足しているため、コミュニケーションへの意欲とそのスキル・能力を磨く機会が結果的に奪われているだけである。
ちなみに、「コミュニケーション」なる外来語の用例を小学館日本国語大辞典でみると、
・外来語辞典〔1914〕〈勝屋英造〉「コンミュニケーションCommunication (英)通信。交通。書信。交通機関」
・日本の思想〔1961〕〈丸山真男〉三「法律学、政治学、経済学というような本来密接な関連をもつ学問分野の間でさえコミュニケーションがあまりないという状態です」
・新西洋事情〔1975〕〈深田祐介〉舶来女房、愛すべし「夫がたくみに英語をあやつり、コミュニケーションが確保されるのであれば」
とありました。
次回へ、続く(予定)
| 固定リンク
« 故郷喪失者としての米国人/ Americans as déraciné [homeland losers] | トップページ | オジオン「聞こうというなら、黙っていることだ。」/ Ogion, "To hear, one must be silent." »
「近現代(modernity)」カテゴリの記事
- 対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案(昭和十六年十一月十五日/大本営政府連絡会議決定)/Japan's Plan to Promote the End of the War against the U.S., Britain, the Netherlands, and Chiang Kai-shek 〔November 15, 1941〕(2024.06.02)
- 自由と尊厳を持つのは、よく笑い、よく泣く者のことである(1)/ To have freedom and dignity is to be one who laughs often and cries often (1)(2023.06.05)
- 「ノスタルジア」の起源(2023.05.08)
- Origins of 'nostalgia'.(2023.05.08)
- "das Haus" as an outer shell of an isolated individual(2023.05.07)
「米国 (United States of America)」カテゴリの記事
- 対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案(昭和十六年十一月十五日/大本営政府連絡会議決定)/Japan's Plan to Promote the End of the War against the U.S., Britain, the Netherlands, and Chiang Kai-shek 〔November 15, 1941〕(2024.06.02)
- 「戦後神話」:なぜ昭和日本人は米国好きか?/ The Postwar Myth: Why do Showa Japanese Love the U.S.?(2024.04.14)
- 戦後日本の食料自給率なぜ低下したか?/ Why did Japan's food self-sufficiency rate decline after World War II?(2023.09.18)
- Seki Hirono and Feminism (2)(2022.05.08)
- 関 曠野とフェミニズム(2)(2022.05.08)
「知識理論(theory of knowledge)」カテゴリの記事
- Words, apophatikē theologia, and “Evolution”(2024.08.26)
- 塩沢由典『複雑さの帰結』1997年、の「解題集」(2024.08.13)
- DLT( Distributed Ledger Technology ) and Kegon (華嚴 Huáyán)Thought(2024.07.19)
- Can humans communicate with objects?(2024.05.04)
- 愚かな勉強法と賢い勉強法/ Stupid, or Smart Study Methods(2024.04.22)
「歴史と人口 (history and population)」カテゴリの記事
- 書評:関 良基『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』作品社 2024年3月(2024.05.13)
- 戦後日本の食料自給率なぜ低下したか?/ Why did Japan's food self-sufficiency rate decline after World War II?(2023.09.18)
- 「後期高齢化」社会の現実(2023.08.31)
- 人口縮小社会:一つの帰結(2022.12.09)
- 飯田哲也「複合危機とエネルギーの未来」岩波書店『世界』No.952(2022年1月号)(2022.01.10)
「社会科学方法論 / Methodology of Social Sciences」カテゴリの記事
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理,解説:張 彧暋〔書評①〕(2024.09.16)
- 塩沢由典『複雑さの帰結』1997年、の「解題集」(2024.08.13)
- Rose petals in the canyon(2023.10.25)
- 峡谷に薔薇の花弁を(2023.10.25)
- 弊ブログ主のインタビュー記事、第2弾(2023年2月)(2023.02.08)
「丸山真男(Maruyama, Masao)」カテゴリの記事
- 書評:関 良基『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』作品社 2024年3月(2024.05.13)
- Masao Maruyama, "Carl Schmitt (Schmitt-Dorotic) (1888-1985)," 1954(2022.06.06)
- 丸山真男「シュミット Carl Schmitt (Schmitt-Dorotic)(1888-1985)」、1954年(2022.06.06)
- 丸山真男,现代自由主义理论,1948年(2022.06.05)
- Masao Maruyama, "Modern Liberalism," 1948(2022.06.05)
コメント