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2021年2月 8日 (月)

人は言葉の外に出られない(2)/ People can't go outside the word (2)

前回(1)からの続き。

 すなわち、Kant の「物自体 Ding an sich 」も言葉の内側にあります。Kant も人類の一員ですから、それは仕方のないことです。むしろ当たりまえと言うべきでしょう。

 それでは、言葉という殻の囚人である人類は、なぜ致命的な error 等による絶滅を免れてこれたのしょうか。

 分子人類学の近年の知見では、現生人類は約20万~15万年前にアフリカで出現し、約7万年前に出アフリカを成し遂げ、ユーラシア大陸に拡散したとされています。どの時点から「言葉」を獲得/操作するようになったのかは不明ですが、おそらくその早い時期から使い始めていたのでしょう。すると仮に最初期に「言葉」らしきものを獲得してから、20万年の推移のなかで、人類は絶滅せず、今日にいたるまで生き延びてきていることになります。この間、顕著な身体器官の変異はなさそうなので、亜種を生むほどの進化上の変化はなかったと推定できます。

 その一方で、地球環境は温暖化と寒冷化を交互に繰り返し、海進/海退等、地球上の生物たちは大きな環境変化に見舞われていたはずです。身体器官の頑丈さからいえば、有利とは決して言えない人類は、身体器官上の進化なしで、さまざまな道具を生み出すことでサバイバルしてきたと想定されます。寒冷化/温暖化から身体を保護する衣服、住居。火の獲得によって可能となった、体温維持や食物の加熱と保存、日没後の光源等。他の生物では不要な、もの(objects)/道具(tools)類を創出することで環境への fitness を向上させました。

 それらは、身体と環境の境界に差し挟んだ、脆弱な肌を環境から保護する殻(shell)としての objects であり、interface でもあります。この interface はいかにも物質 materials のようですが、その実、「言葉」を有する人間にのみ有意味/有効(他生物には無意味/無効)なわけですから、「言葉」で構成(オブジェクト化 Objectified)されている、と言うしかありません。そして地球上に拡散した人類はこの非常に可塑的(malleable)な「言葉」という interface(境界面)を各自で各環境に適応するように縦横無尽に進化させてきた、と言う訳です。現状の、ありとあらゆる言語の存在様式は、その進化の帰結です。

 またしても同工異曲の記事を書いてしまいました。ご容赦。

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