人は「子」として生まれる
この事実が示すことは、ひとは「誰か」の「子」として誕生し、経験と知識の段階を踏みながら、やがて「人間」となるということです。
それは、何人も避けることができない人類の永遠の謎と言ってよいでしょう。というのも、「子」から見て、「親」が誰であるかを選択できないのですから。つまりこの事実をまずは受け入れるという選択肢しか「子」にはない訳です。
それにも関わらず、思春期には「親」への反発や愛憎、葛藤から、「子」という status を拒絶しようとする場合があります。しかしそれを長く維持することは難しい。なぜなら結局、それは自分と言う存在の否定でしかないからです。従いまして、人は誰でも人生のどこかで遅かれ早かれ「親」と和解することを選ぶことになります。言い換えれば、「そのひと」が自分の「親」であることを渋々にしろ、認め、受容するに至る、と言うことです。
老いた「親」と既に大人になった「子」との「和解」は、相互の「許し」で成就します。拗れに拗れた文字通りの「葛藤」ですから、簡単ではありませんが、わけても「子」が「親」をどう許すかが焦点となります。それが可能となるのは、「子」が「親も実は心から血を流していた」ことに気付くことではないか、と思われます。ひとが他者を理解する媒介となるのが、人間の「傷つきやすさ vulnerability」だからです。
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