孔子様とマイケル・ポラニー
「伝える」ことは「伝わった」ことでしょうか。教育業界に身を置いているといつも悩みます。科学哲学者であるマイケル・ポラニーはこう言ってます。
「我々が…教えることができるのは、教師が示そうとしていることの意味を生徒がつかもうとして努力する知的協力が、生徒の側に期待できるかぎりにおいてである。」17頁
「言葉を用いたとしても、我々には語ることのできないなにものかがあとに取り残されてしまう。それが相手に受取られるか否かは、言葉によって伝えることができずにのこされてしまうものを、相手が発見するか否かにかかっているのである。」17頁
マイケル・ポラニー『暗黙知の次元 ―言語から非言語へ』(佐藤敬三訳)1980年、紀伊国屋書店
この悩みは、二千年以上前から、孔子様もおっしゃっています。
論語 (國譯漢文大成)/衞靈公第十五之十五
子曰:「不曰『如之何,如之何』者,吾末如之何也已矣」
〈子曰く、之を如何せむ、之を如何せむと曰はざる者は、吾之を如何にともするなきのみ。〉
論語 (國譯漢文大成)/衞靈公第十五 - Wikisource
生徒の学ぶ意欲が大切、とはしみじみ同感します。しかし、相手も一個の独立した人間です。「学ばされる」ことから「学びたい」へは、強制できません。試行錯誤を繰り返しています。
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