【ロシア・米英戦争】としての、《ロシア・ウクライナ紛争》
弊ブログ最新記事にコメントを頂いております。私の応答に関して、広く閲覧して頂き、ご批判を浴びたいと思いましたので、コメントへの応答ではなく、弊記事とさせて頂きました。下記です。
◆「ライア・グリーンフェルド(Liah Greenfeld)"ナショナリズム三部作”: 本に溺れたい」コメント欄
ライア・グリーンフェルド、まったく知りませんでした。たしかに、いま読むべき本かもしれません。なかなかすぐには取り掛かれません。プーチンは、ゆがんだナショナリズムでロシアを破綻させようとしていますが、「特別軍事作戦」を停止させるナショナリズムはないものでしょうか。
投稿: 塩沢由典 | 2022年4月29日 (金) 02時05分
◆renqing、こと上田悟司の応答
塩沢先生、コメントありがとうございます。
今回の露・ウクライナ戦争に関して言えば、理はロシア側にあると思われます。
※この文言を、訂正します。本記事、ブログ主コメント欄をご覧ください。(2022年04月30日)
私の情報ソースは相も変わらず、「田中宇の国際ニュース解説」ではありますが、彼は、15年前からロシア関連でウクライナ問題のウォッチャーでもありました。従いまして、現在の雨後の竹の子のような、にわかコメンテーターより、この問題への発言は適切ではないか、と考えます。例えば、
20140305「危うい米国のウクライナ地政学火遊び」そして、下記の最新記事において、ジャック・ボー(Jacques Baud)という元NATO軍参謀本部大佐、元スイス戦略情報部員、東欧諸国の専門家、の発言記事を引いて、自説を補強しています。
田中氏が引いている、ジャック・ボーの記事(20220401)は、ロシア・メディアではなく、影響力は小さいですが、複数のインデペンデントなメディアサイトと思われます。これをフェイク記事と十把一からげにするのは、適切だとは思えません。一つ、その記事ソースを引いておきます。
Jacques Baud: The Road to War | Natylie's Place: Understanding Russia
参考まで、最後に米国の国際関係論/紛争問題解決学の専門家、リチャード・E・ルーベンスタイン(Richard E. Rubinstein)の著書の一節を引いておきます。
『殺す理由:なぜアメリカ人は戦争を選ぶのか』2013年紀伊国屋書店、p.261
( Reason to Kill: Why Americans Choose War, 2010, Bloomsbury Press )
「アメリカは比類ない徳を有するという思いこみは、過去に行った数々の介入のよりどころとなっていた。それはまた、私たち(米国人のこと:引用者註)に自己欺瞞と度重なる非人道的抑圧という堕落への道に導いてきた。」
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コメント
塩沢先生、再びコメントをありがとうございます。本記事中の文言に、訂正と修正を付加します。
1.国際紛争には、たいていの場合、事件以前に長い前史があります。今回のロシアのウクライナへの武力行使にもその可能性は同じようにあり、それを念頭に置いたうえで、今回のロシアの国際法違反を非難する必要があります。
2.最新の弊ブログ記事(Jacques Baud筆の記事の日本語訳)から、二つの事実を確認する必要があります。
①ロシア軍がウクライナ国境を越えたのは2月24日ですが、ウクライナ軍がドンパスのロシア語圏住民に(内戦規模を超えて)砲撃を開始したのは2月16日であること。つまり、戦争が始まったのは、ロシア軍の越境より前です。
②遡れば、ミンスク1(2014年9月)とミンスク2(2015年2月)合意があるにもかかわらず、ウクライナ政府はそれを遵守しなかったし、EU諸国がウクライナ政府に遵守させていなかった。つまり、ウクライナ内戦は継続していました。
3.私たちは、国際法の観点から見て、2022年2月24日のロシア軍のウクライナへの侵攻を、国際法違反と認めることは可能です。ただ、そうであれば、同時に、2003年3月20日に勃発したアメリカ軍のイラク侵攻を国際法違反とし、ジョージ・ブッシュ元大統領を戦犯として告発すべきです。開戦の最大の理由だった大量破壊兵器は、誰が探しても実在していなかったのですから、こちらのほうが明確に国際法違反です。イラクの民間人は少なく見積もっても10万人以上死んでいます。
法が正義を実現できるのは、全てのメンバーが等しい法の下にあるときです。アメリカ合衆国が国際法に服していないこの現代で、ロシアだけにそれを求めることは現実的に難しいし、不当だと考えます。
4.ウクライナの地政学的地位は、米国のメキシコやキューバに相当するでしょう。米国は、メキシコで反米的な軍事活動が行われたら即座に軍事行動をとるのではないでしょうか。実際、キューバ危機では核戦争寸前までいきました。
以上の点から見て、今の、ウクライナ危機に関して、確信をもってロシア非難をすることは、私にはできそうにもありません。
投稿: renqing | 2022年4月30日 (土) 21時46分
ご指定の田中宇氏の記事および今年の2月24日以来のかれの記事の要旨(いくつかは全文)を読みました。わたしは英米がつねに正しいなどとは思っていませんが、田中さんの記事がどのていど信頼できるかとなると、かなり疑問だと思います。欧米の言い分とロシアの言い分とどちらが正しいかなどといいだすと複雑なことになりますから触れません。24日以来かれが書いた戦況に関する記事の大部分はその後の事態の推移でまちがいないしは希望的観測だったことが明らかになっていると考えます。かれの世界観の中で、かなり作りあげてしまった妄想の世界です。2月・3月に書いた記事がいまだに上げられているのには感心しますが、わたしだったら恥ずかしくて下ろしてしまうでしょう。
Michel Beau氏の記事もざっと読みました。もしかれのいうとおり、そしてそれを田中氏が解釈したとおりとするなら、なぜロシアの正規軍が士気の最悪なウクライナ軍にてこずっているのでしょう。
ロシア側にいろいろ言い分はあるものの、ソ連崩壊時に相互の合意にもとづいて協定で決めた国境を軍隊を送って占領しよう、政権を転覆させようということは許すべきではありません。その点を考えたうえで、「理はロシア側にある」(上田悟司)といいますか。言い分はなんであれ、理があるなら、戦争を始めるまえにその理で世界を味方につけるべきだったったでしょう。
「米英の諜報界(軍産複合体)が、ロシアを挑発してウクライナ東部に侵攻させようとしている。」(2022.1.24)とか田中さんがいうのは自由ですが、それに乗って現実に戦争を始めたのはフーチンです。そんな挑発に乗らない選択肢があったはずです。
投稿: 塩沢由典 | 2022年4月29日 (金) 23時41分