エネルギー危機を深める原発推進/ Promoting Nuclear Power to Deepen the Energy Crisis
浅慮の政治家、官僚たちがまたぞろ、電力不足/エネルギー危機にかこつけて、原子力発電所新設を推進しようとしています。なんでそんなに原発が大好きなのか、私には理解できません。すでに原発が出す核のゴミが、JR山手線の一周分、日本中のあちこちに分散して溜まっているというのに、です。原発推進は、短期的にはカネ喰い虫であり、中長期的には、むしろ、人類のエネルギー危機を深める一方です。
なぜなら原発は、エネルギー収支的にマイナスだからです。その理屈は、原発の生み出すエネルギー(電力)で、新しい原発、一機分の建設を賄い、エネルギー余剰があるか想像してみればわかります。原発を一機新設し、運転/保守し、老朽化、廃棄処分するまでに必要なエネルギーをすべて、その原発で賄い、その上で余剰が残るでしょうか。
原発が生み出せるのは電力だけです。新規建設に必要なもろもろの建設資材資源(金属資源/コンクリ用資源等)の採掘、その日本の積み下ろし港までの船舶輸送のマイレージ、陸揚げ後の陸上輸送のマイレージの負荷、建設時のパワーショベル等の建設機器の運転必要エネルギー、これらは現状では電力ではほとんど賄えず、石油系資源(ガソリン、軽油等)の投入によって可能となっています。
また、運転を始めたら始めたで、燃料は、南アなどでのウランの採掘から、北米かフランスでの濃縮、パウダー化、その輸送、等にかかるエネルギーはほとんどすべて、石油によって駆動されています。これらは、石油が液体でかつ質量当たりのカロリーが高い、そしてなにより「自噴」するような、cheap & easy なエネルギー資源だから可能となっています。原発は、cheap & easy oilによって上げ底され、支えられている、「原子力湯沸かし器」であり、発動力系技術としては旧式テクノロジーといっても過言ではありません。
少し古いデータですが、東京電力(株)福島第二原子力発電所の、昭和50年代に着工して昭和60年代に運転を開始した、4機の原発の平均建設工事費は、1機あたり3100億円でした。これは新規建設費だけで、稼働中の保守・点検時の停止期間時の非稼働によるコスト、最終的な廃炉廃棄処分コスト、事故をカバーするための損害保険料などは、一円も算入されていません。無論、核のゴミの処理費用もはいっていません。
目先の電力不足に浮足立って、建設して運転すればこれから数十年間、カネ喰い虫で、むしろ貴重な石油を浪費してしまうようなテクノロジーにすがる、というのは合理的なのでしょうか。私はそのエネルギー収支的合理性、経済的合理性をかなり疑っています。そしてなによりも、既に積み上がっている核のゴミをどうするのかが解決を待たれている最優先事項であり、その点にこそ全国民的議論が必要です。
※参照
1)原発はなぜ儲かるか?(20190321リンク更新): 本に溺れたい
2)原発、トイレのないマンション( Nuclear power generation is a condominium without a toilet.): 本に溺れたい
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コメント
>遍照飛龍さん
コメント、ありがとうございます。深読みすれば、そういう類いの、隠れた動機も推定可能です。
官僚たちにも好都合なのは、「原発」は、推進派にとっても、原則自由、にはできない点です。つまり、原則規制、です。
いくら原発大好きな推進派の有権者でも、原則自由、でOK、にはできません。
そこが官僚のねらいで、喜んで監督、規制を引き受けます。彼らのあらたな権限(利権?)基盤にできるからです。
保守主義自由派なら、権源の削減に頭を使え、です。
>同感です。
>長期で見ると、原発は損でマイナス。
>ただ為政者は、、、「電力を中央で統一的に支配する」
>「なんなら、国民を脅すために事故らせて、国民を隷属させる」
>てのに好都合だからにも思えるような・・・妄想ですけど。
投稿: renqing | 2022年10月20日 (木) 13時53分
同感です。
長期で見ると、原発は損でマイナス。
ただ為政者は、、、「電力を中央で統一的に支配する」
「なんなら、国民を脅すために事故らせて、国民を隷属させる」
てのに好都合だからにも思えるような・・・妄想ですけど。
投稿: 遍照飛龍 | 2022年10月16日 (日) 20時11分