「ノスタルジア」の起源
「ノスタルジア」の起源は意外とはっきりしています。1688年、スイスの医学生がバーゼル大学に提出した学位論文にこの語があります。原題は次のようなものです。
"Dissertatio medica de nostalgia, oder Heimwehe".
Death by Nostalgia, 1688 | TS Digest | The Scientist
『故郷や母国に帰りたいという病的な憧れ、病気とみなされる重度のホームシック』、現代ラテン語、1688年の造語です。
ヨハネス・ホーファー(1669-1752)は、この現象をギリシャ語の語源である「故郷に帰る」という意味の「nóstos」と、痛みや悲しみを表す「algos」(>-algia )を使って「ノスタルジア」と名付けました。
また、「言葉」に先立つ「感性」としての「ノスタルジー」の文学的表現があることが示唆されています。
エドマンド・スペンサーが1595年に発表した詩「Colin Clouts Come Home Againe」は、前近代的なノスタルジーを象徴している。
Coming home again : Johannes Hofer, Edmund Spenser, and premodern nostalgia - CORE
しかし、エドマンド・スペンサーの生涯を見ると、「ノスタルジー」というより「デラシネ」であるような気がしますが・・・。
「詩人の中の詩人 poet of poets」E.Spenser(1552-1599)は Shakespeare (1564-1616)とほぼ同世代とみなせますから、「言葉」の出現以前に近代の「感性」が形成されていたと考えても良さそうな気がします。
参照
1) nostalgia | Search Online Etymology Dictionary
2) Coming home again : Johannes Hofer, Edmund Spenser, and premodern nostalgia - CORE
3) Death by Nostalgia, 1688 | TS Digest | The Scientist
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