佐野英二郎

2021年12月23日 (木)

佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔3〕

 普段、文学とは遠い生活をしている私が、この素晴らしい文章と出会う奇縁を作ってくれたのが、たまさか目にした故須賀敦子氏の素敵な書評 (毎日新聞1992/12/15、本記事下記)でした。そのころの私は日本経済新聞を長く購読していたのですが、熱心(=執拗)な毎日新聞の勧誘に根負けし、三ヶ月だけ?購読することにしたのです。そんな嫌々ながらの偶然が、それから三十年もつき合う本を私にもたらせてくれるとは「神のみぞ知る」を地で行く、でしょうか。人生の下山途中にいる証には違いありません。

 

佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔1〕: 本に溺れたい
佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔2〕: 本に溺れたい

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2007年4月 3日 (火)

「言葉の力」を思い出させるエッセイ

「ところで、週末になるとホテルの酒場の様子は一変した。平日の夜は、スウェーデン人技師とぼくとが殆ど毎晩同じような話を繰り返しているだけで、あとはひっそり静まり返っている酒場は、土曜の夜には泥酔者たちで大荒れとなった。それは、回教の戒律がもっと厳格な南の方で、油田の開発に従事している欧州や米国からの人々が、強い酒に酔うために、大挙して北上してくるからであった。
 その中の何人かの人びととは次第に顔馴染になってゆくのであるが、彼らの中には、明らかに大戦中どこかの遠い荒い海に、長い間出ていたような匂を持ち続けている人たちがいた。
 あの、あお黒く光る鋼鉄の機械油のにおいを、ぼくらは相互のどこかに探り当てながらも、しかしながら、そこから先には踏み入らなかった。お互いに、浅くしか眠ることが出来なかった夜々のことを、おたがいの不運な時代のことを、ぼくらはまだ打ち明けることが出来なかった。」
佐野英二郎『バスラーの白い空から』青土社(2004年)、p.65-6

 

 

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2006年11月12日 (日)

美しき“青 azur”の、フランス・アニメ

 現役の外務大臣が、NPT体制への挑戦を口にして憚られない程、どうしようもなく、混迷を深めている現代日本へ、ヨーロッパから絶えず新鮮な空気を送り続けている、「ね式(世界の読み方)」さん。

 

 そこで、素晴しいアニメーションを紹介してくれています。

 

この映画は観るべし、Azur et Azmar

 

 私が勝手に連想したのは一つの絵と、あるエッセイ。

 

 絵のほうは、これ↓。

 

今村紫紅 「熱国之巻」

 

 エッセイのほうはこれ↓。

 

佐野英二郎『バスラーの白い空から』青土社(2004年)

 

 

 このフランス・アニメ。日本に来るといいなぁ。

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2005年10月27日 (木)

浅い眠り

 改正テロ特措法が成立した。下記↓

 

海自のインド洋派遣1年延長…改正テロ特措法が成立
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051026-00000203-yom-pol

 

 しかし、これを決めた人々は、現地を決して訪れないであろう。その人々に、再び下記の文章を捧げよう。

 

「あの、あお黒く光る鋼鉄の機械油のにおいを、ぼくらは相互のどこかに探り当てながらも、しかしながら、そこから先には踏み入らなかった。お互いに、浅くしか眠ることが出来なかった夜々のことを、おたがいの不運な時代のことを、ぼくらはまだ打ち明けることが出来なかった。」
佐野英二郎『バスラーの白い空から』青土社(2004年)、p.66

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2005年10月 6日 (木)

佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔2〕

「あの、あお黒く光る鋼鉄の機械油のにおいを、ぼくらは相互のどこかに探り当てながらも、しかしながら、そこから先には踏み入らなかった。お互いに、浅くしか眠ることが出来なかった夜々のことを、おたがいの不運な時代のことを、ぼくらはまだ打ち明けることが出来なかった。」
佐野英二郎『バスラーの白い空から』青土社(2004年)、p.66

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2005年5月 3日 (火)

佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔1〕

 表題作の「バスラーの白い空から」で、筆者が出会うビジネスマンの中に、ふと自分と同じ旧海軍軍人のにおい嗅ぎ取る場面があります。お互いにそれを感じ取りながらも、あえて互いに触れずまた別れていきます。そこに、戦争に青春を賭けざるを得なかった世代の国を超えた共感と痛みが、控えめだが動かざるものとして込められていました。痛切さも自分の存在の一部であることを改めて知らされる場面です。
 皆さん、是非、ご一読を。

佐野英二郎『バスラーの白い空から』青土社(2019/03/09)



〔参照〕
佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔2〕
佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔3〕: 本に溺れたい

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