経済・政治・国際

2007年5月 5日 (土)

ネットで読める靖国判決(リンク訂正につき再up)

 過去記事でしたが、裁判所判例へのリンクが切れていることに気付きましたので、これではまずいと、リンクを最新のものに訂正しました。悪しからず。

↓過去記事
*****************************************************************
 本日、久しぶりに、裁判所(COURTS IN JAPAN)、をチェックしました。

 そうしたら、ようやく、H.17.09.30、大阪高裁靖国判決文*、がアップされてましたので取り急ぎ、お伝えしておきます。

 ついでに、H.17.09.29、東京高裁靖国判決文**、も記しておきます。ご関心があり、かつ根気のある方は、見比べてみてください。

 私の以前の記事もご参照戴ければ幸いです。

大阪高裁、靖国違憲判決をめぐる所感と文句(1)
大阪高裁、靖国違憲判決をめぐる所感と文句(2)
9/29東京高裁、靖国判決コメント(1)
9/29東京高裁、靖国判決コメント(2)


*平成16(ネ)1888 損害賠償請求控訴事件  
平成17年09月30日 大阪高等裁判所 棄却 大阪地方裁判所

**平成16(ネ)6328 各損害賠償等請求  
平成17年09月29日 東京高等裁判所 千葉地方裁判所

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人間の尊厳に関心のある方は、下記のサイトにアクセスしてみて下さい。一人のアフガニスタン青年を救うことができます。
Alijane Project Homepage

「ある民族の強靭さは、その社会の最も弱いものの幸福によって測られる」
the strength of a people is measured by the welfare of the weakest
of its members  (スイス憲法前文)
スイス憲法
(中の、Japanese を選んでください。)

なお、下記もご参照↓戴ければ幸甚です。
国民(?)にしか認められない基本的人権(3)

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2006年1月24日 (火)

共和制の理解のために

 ヨーロッパにおける共和制を知るための古典として、知人に教えてもらった本に下記がある。まだ未読だが、アクセス可能な方はご一読あれ。内容をご教示戴ければ幸甚。

The republican tradition in Europe,
Fisher, Herbert Albert Laurens.
London,Methuen
1911

 

 なお、

続きを読む "共和制の理解のために"

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2006年1月 7日 (土)

厚生労働省は二度赤ちゃんを殺す

再び、「ハンセン病療養所における胎児等標本に関する要望書」に賛同のお願いです。

 標題の賛同申し込み期限は、本日(1月7日)です。まだご存じない方、また、迷われている方、是非ご検討の上、ご賛同戴きたくお願い申し上げます。

要望書の賛同のご連絡ならびにお問い合わせは下記事務局へ。
メール: sandosha@hotmail.co.jp
TEL:   080-3130-8028

要望書は下記です。
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2005年12月20日

厚生労働大臣 川崎二郎様
ハンセン病問題に関する検証会議・座長 金平輝子様

ハンセン病問題研究会
世話人代表 村岡潔
連絡先
京都市北区紫野北花ノ坊町96
佛教大学社会福祉学部村岡研究室気付

ハンセン病療養所における胎児等標本に関する要望書

 本年1月、「ハンセン病問題に関する検証会議」(金平輝子 座長)は、全国の
国立ハンセン病療養所など計6施設で、114体(邑久光明園49体、多磨 全
生園35体、星塚敬愛園17体、駿河療養所10体、松丘保養園1体、国立 感
染症研究所ハンセン病研究センター2体)の胎児標本、そして2000体 を超
える病理標本、さらに多くの手術摘出材料が放置・残さ れていたことをまとめ
た「胎児等標本調査結果報告書」を厚 生労働省に提出しました。
 114体のホルマリン漬けにされた新生児や胎児らは、90年にわ たる「ハ
ンセン病者」への強制隔離・絶滅政策という人間の尊厳を根底から奪う極限の
差別への証言者です。
新生児や胎児らが、どのような経過で「生まれる」ことを拒まれたの か、その
事実をつまびらかにし検証すること、そして、責任の所在を明らかにし国公立療
養所内で行われていた組織犯罪の全容を解明すること、さらに、このような理
不尽な人権侵害を二度と起こさぬよう具体的方策を講じることは、国や療養 所
関係者のみならず、私たちすべてにとっての責務と考えま す。
 しかしながら、発表された「調査結果報告書」を見る限り、最も被 害を受け
た当事者(とりわけ女性)の声が反映されておらず、調査・検証作業は全く不十
分です。「胎児等標本調査結 果報告書」とは別の「ハンセン病問題に関する被
害実態調査報告書」(95頁)には、1942年に療養所に入所した女性 の声で 「堕
胎されて30年後、医局に行くとホルマリン漬けの我が子と、知り合いの子供の2
体が目に入る。後でそ の知り合いの人にもホルマリン漬けの子供が医局 にあっ
たことを話し、2人で泣いた」と聞き取り調査で報告されています。
 にもかかわらず、厚生労働省は「今年度中に焼却、埋葬・供養など を行うと
した案を各施設に通知した。検証会議が求めていた検視の申し出はしない」(朝
日新聞、05年 11月 28日付け)と報道されています。そして、この厚労省案を受
けて「敬愛園が来年1月をめどに慰霊式典を計画している」「慰霊碑 は 建立し
ない」「半数以上の親を園側は把握しているが、精神的ショックに配慮し個別に
告知しない」(南日本新 聞、05年 12 月11日付け)とあります。
 実態解明も不十分なまま、当事者本人に通知せず、「供養」の名の もとに焼
却することは、隔離政策・強制堕胎の事実を再び暗闇へと葬り去ることに他な
りません。

それゆえ、私たちは、以下の点を強く要望します。

1.療養所での新生児殺し・強制堕胎の実態を詳細に解明すること

 報告書によれば、発見された114体の胎児標本のうち、29体は 妊娠8ヶ
月(32週)を過ぎていることから、生きて生まれた赤ちゃんが療養所職員らの
手によって殺害された可能性が高いと示唆されています。事実、多くの入所者
の証言がこれを裏付けています。また、32週未満の胎児についても、 直接あ
るいは間接的な強制による中絶により抹殺されたので す。 
 療養所内での中絶や出産と、その後の処置について、入所者やその 家族に加
えて、退所者、医師・看護師はじめ退職者を含む療養所職員への詳細な聞き取り
調査を行うこと。そして、これ ら証言とつき合わせながら、個人・親が特定 さ
れる胎児標本はもとより、不明な標本についても、その一体一体について、 誰
の子どもか、どのような経過で中絶や殺害が行われた のか、それに関わったの
は誰か、摘出後(殺害後)標本とされた経過を明らかにする作業を早急に開 始
することを求めま す。

2.調査時点で胎児標本の存在しなかった、あるいは既に「処分」し たとされ
ている療養所についても、詳細な実態を解明すること

 全国13の国立ハンセン病療養所のうち、調査時点で胎児標本の存 在が判明
したのは5ヶ所ですが、報告書にも記載されているように、全国すべての療養
所で同様の標本作製が行われていたと考えられます。そのため、既に「処分」
したという長島愛生園などすべての療養所を対象に、再度、入所者やその家
族、退所者、療養所関係者 (退職者を含む) すべてに聞 き取り調査を行い、強
制堕胎および新生児殺しの実態を明ら かにし、標本を作製し放置していた事実
を解明すること。また、既に「処分」されたとする胎児標本に関して、その経
過 についても詳細に調査・検証をすることを求めます。

3.胎児標本の医学研究への利用、外部研究機関への持ち出し等の実 態を明ら
かにすること

 報告書では断片的に言及されているに過ぎませんが、多くの胎児標 本が研究
材料とされたり、療養所外に持ち出されたりしたものと考えられます。作製し
た胎児標本を医学研究に用いたことを示す医学論文を詳細に調査し、研究材料
としての利用実態を明らかにすること。同時に、療養所に関係した大学、研 究
機関およびその関係者らに対する徹底した聞き取り調査を 行い、胎児標本の外
部研究機関への持ち出しおよび持ち出された胎児標本の現存の可否や処分の実
態について明らかにす ることを求めます。

4.病理標本や手術摘出材料の医学研究への利用、外部研究機関への 持ち出し
等の実態を明らかにすること

 入所者の死後解剖によって残された多数の病理標本や手術摘出材料 について
も、退職者を含む療養所職員全員、および関連する大学・研究機関の関係者全
てに聞き取り調査を行い、研究材料としての利用の実態、療養所外部への標本
持ち出しの実態、持ち出された標本の存在の可否や処分方法について詳細に 調
査・検証することを要望します。

5.不妊手術・断種について

 強制的中絶、新生児殺しと深く関係するものとして、入所者に対す る強制不
妊手術・断種がありますが、これらの実態についてさらに徹底的な調査・検証を
求めます。特に、「ハンセン病問題に関する被害実態調査報告書」の「国立療
養所入所者調査」の6.優生政策の項の6-4「未感染児童」の断種の項 に、
療養所の保育所に入所していた子どもが療養所から出る ときに断種や不妊手術
をされた可能性があるとの記述がありますが、これについて、さらに調査を徹
底し、実態を解明す ることを求めます。

6.国の責任で「実態解明・真相究明のための委員会」を組織すること

 これらの調査・検証を国の責任で継続して行うために、入所者やそ の関係
者、市民(特に女性を含む)を交えた新たな「実態解明・真相究明のための委員
会」を発足させること を求めます。そして、明らかになった事実を広く全市民
に報 告することを要求します。

以上
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以下のblog記事もご参照戴ければ幸甚です。

「ハンセン病療養所における胎児等標本に関する要望書」に賛同のお願い

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2006年1月 3日 (火)

明治エリートの起源

 明治期の爆発的な西洋文明導入が誰によって担われたか。それは無論、海外への留学生たちである。彼らの実態は、旧幕時代、徳川幕府、諸藩競って送り出した海外留学生だ。その数、152人。

続きを読む "明治エリートの起源"

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《弁護士》として逮捕された西村議員

 弁護士による、あるblog記事に重要な指摘がありましたので、問題点を共有したいと考え、重複を恐れず、記事化します。

その記事とは下記です。

西村議員に対する組織犯罪処罰法適用の狙いは何か?

 上記記事の主旨はこうです。

西村議員が逮捕された。それはあたかも、よくある国会議員の政治スキャンダルのように見える。しかし、そこには隠された意図がある。それを理解するには、本事件の違法立件に使われた法律をみなければならない。それは、二種類ある。

1)弁護士法違反
2)組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受罪)

問題は、2)である。これで重要なことは、弁護士に対して組織的犯罪処罰法を適用して検挙したのは、初めてケースだということ。そして、特に「犯罪収益等」が重要。

ある収益が犯罪によって得たものかどうかを判断するための前提を、前提犯罪という。

そして、その前提犯罪に関して、これを懲役4年以上の犯罪の全てに拡張する法案が国会で継続審議中であり、それこそが、例の《共謀罪》新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」である。

この改正が恐ろしい点は三つ。

①「犯罪収益」が極めて広い前提犯罪から生じること。

②ということは、「犯罪収益」の認定もだだっ広くなり、かつ、「朱に交われば赤くなる」で、その超広義の「犯罪収益」が少しでも混じった「混和財産」から、それと知って、弁護士報酬を受け取っちゃったら、「犯罪収益等収受罪」が成立してしまうこと。

③ということは、犯罪被疑者から依頼されて弁護をしようという私選弁護人はいなくなってしまう、ということ。現に、同様の法律のある米国でも、被訴追の危険から、麻薬密売人の弁護人が不足し、被疑者の弁護を受ける権利が侵害されている。

そして、結論は
弁護士であっても、決して、犯罪収益等収受罪適用の例外にはしないという大阪地検特捜部の宣言に他ならない」
である。

 つまり、お上に楯突く《弁護士潰し》*の前触れと考えられる、ということです。

*西村議員逮捕の本命は弁護士潰し、か~“国策説”百花繚乱の渦に飛び込んでみる
より。

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2005年11月15日 (火)

日本国憲法(1946年)は、本当に憲法なのだろうか?

 憲法学では、「憲法の名宛人」は国家であり、憲法は政治権力に約束させた「証文」となっているらしい。

 しかし、大阪高裁9月30日の判決で、内閣総理大臣の靖国神社参拝は憲法違反である、と判断されているにも関わらず、内閣総理大臣小泉純一郎氏は、堂々と10月17日に参拝をしている。

 はて?、高等裁判所において、首相の靖国参拝は宗教行為だから憲法に違反する、と判断がでているのに、首相が靖国に参拝できるのはなぜだろう?

 本来なら、水戸黄門の印籠よろしく、判決文中の「違憲」という文字を目にしたら、首相は「ヘヘェー」と引き下がらなくてはならないはずだ。それが立憲政治というものだと思う。

 普通の法なら、違法行為に対して、国家権力から命令された、警察官や執行官を通じて、行刑的、経済的制裁が与えられる。しかし、憲法には、その名宛人たる、政治権力者が確信犯的に、違法(違憲)行為をしても罰する条項がない。というより、そもそも政治権力者たちが憲法違反をするなどということは、憲法は想定していない、と見るべきだ。

 あらゆる権力者が、足を向けて寝れないほどの権威を持つ(はずの)日本国憲法。にも関わらず、軽やかにそれを犯し続ける日本国権力者。

 ここまで、憲法の建前と実態が分離しているなら、権力者を拘束する憲法は日本に存在しない、と考えるが素直な理解ではないかと思うのだ。

 違憲行為をし続ける為政者に、単なる立法行為では対抗できないのは自明といわねばならない。

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2005年11月 5日 (土)

9/29東京高裁、靖国判決コメント(2)

 よーするにー、

 靖国に行く途中  ⇒    靖国参拝    ⇒  靖国から帰る途中
  (公務)         (私的な宗教行為)       (公務)

という訳です。

 下世話なたとえで言うと、内閣総理大臣が、愛人と逢引して、公務の途中で、どこかで「ご休憩」に及んで、事済ませてのち、公務に復帰した、と同じということですね。

 しかし、ことは一国の首相の行動ですからねぇ、首相自身がなんと自己の行動を規定しようと、東京高裁のこの判断は、ちょっと無理があるんじゃないでしょうか。その意味で、前回記事、コメント(1)の結論9に抵触すると思うんですけど。

 で、翌日の、大阪高裁の違憲判決です。この判決の法的意味を極小化しようと躍起になっている一群の人々より、当の靖国神社の弁護団はさすが法律専門家ですから、この判決のもたらす外延の意味に、しっかり懸念を持っています。下記↓参照。

権限の無い高裁が傍論で違憲判断
http://hajime1940.blog.ocn.ne.jp/hajime/2005/10/post_a127.html

  この記事で、なんといっても重要な指摘はここでしょう。

>  それにしても憤りを感じるのは、判決文の中で「靖國神社の本殿において、
> 祭神と直に向き合って拝礼するという極めて宗教的意義の深い行為」の中に
> 「追悼行為を、神社において祭神を対象としてする時は、宗教的な概念による
> 畏敬崇敬行為と一体として受け取られるべきものである」という件を強引に
> 入れてしまうと、神社で参拝すること自体が宗教的意義の深い行為となって
> しまい、これでは伊勢神宮への首相参拝も論理的には憲法違反になってしまう
> という、なんとも大変な解釈が成り立ってしまう点である。

 そういえば、伊勢神宮もお参りしてましたね。これも宗教行為となれば、違憲ですわね。ウーン、なんとも意義深いご指摘です。

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2005年11月 4日 (金)

憲法は《不磨の大典》か?

 比較憲法というと、英米独仏の憲法を引き合いに出して、日本の1946年憲法と比べるのが、憲法学界のワンパターンだ。例えば下記。

比較憲法(岩波書店 2003年)
ISBN: 4000280317

比較憲法入門(有斐閣 1994年)
ISBN: 4641031932

 上記の4大国(?)以外が取り扱われている場合でも、それらは実質的に刺身のつま的扱いと考えてほぼ間違いなかろう。でも、サッカー・ワールドカップ予選に出てくるような、ちっちゃな国にだって立派な憲法はあるだろう。そういった小国の憲法や、もっと生(なま)な憲法情報を手に入れることは無理なのだろうか。

 そういう不満を多少なりとも、解消してくれるサイトが下記↓である。

International Constitutional Law
http://www.oefre.unibe.ch/law/icl/index.html

 憲法は当然、自国語で書かれるから、ご当地の言葉で書かれた原典は、ネット上でいくらドキュメント・ファイルが手に入っても読むのは難しい。上記のサイトは、90ヶ国の最新の憲法条文を、すべて英訳して紹介してくれる、非常に有意義なサイトだ。

 ここのトップ頁にある、Constitutional Documents、の、各国名をクリックすれば、その国、最新の、つまり、修正条項を含む条文を見ることが出来る訳だ。

 そこを概観してみると、1990年代に、独立国となって、新しく憲法を公布した国や、憲法を大改正した国、修正(amendment)した国が非常に多いことに気づく。憲法修正条項は米国の専売特許ではないのだ。それがリアルにわかる。

 ちなみに、憲法公布年、最新の憲法修正年、を10年ごとに分類してみると以下のようになる。
1900
Australia(1900年公布)

1940
Japan

1950
Denmark

1960
Cyprus, Kuwait, Libya

1970
Syria

1980
Canada, Iran, Liberia, Netherlands, South Korea, Sweden

1990
Albania, Algeria, Angola, Argentina(1853年公布), Armenia, Azerbaijan,
Belarus, Belgium, Bosnia and Herzegovina, Brazil, Bulgaria, Cambodia, Congo,
Czech Republic, Estonia, Ethiopia, Fiji, Finland, France, Hawaii, Hong Kong,
India, Ireland, Israel, Lebanon, Lithuania, Luxembourg, Macedonia, Madagascar,
Malta, Mauritania, Mongolia, Morocco, Namibia, Nepal, New Zealand, Norway,
Oman, Paraguay, Poland, Portugal, Russia, Saudi Arabia, Singapore, Slovakia,
South Africa, Spain, Taiwan, Thailand, Tibet, Tunisia, United States, Yemen,
Zambia

2000
Afghanistan, Bahrain, Chechnya, China, Croatia, Germany, Greece, Hungary,
Iraq, Italy, Latvia, Qatar, Romania, Rwanda, Slovenia, Switzerland, Turkey,
Vietnam

 1990年以降、75の国々が何らかの形で憲法を発布、修正をしている。なぜ、1990年以降に集中しているのか。すぐに思い当たることは、1991年旧ソ連の崩壊による冷戦終結だろう。constitution とは、憲法だけでなく、基本構造、といった意味もある。つまり、1990年代、一国だけでなく、世界の基本構造になんらかの変化があったと考えるべきなのだろう。それが、各国憲法の変化に現れているわけだ。

 さて、日本、および日本人はこのことをどう受け止めればよいのか。このblogでも、おいおい論じる予定だ。だが、その前に、積み残しの、東京高裁、靖国合憲判決へのレビュー等、を片付けねばならない。それは次回以降に。

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2005年11月 3日 (木)

9/29、東京高裁、靖国判決

  • 下記に、9/29東京高裁の靖国合憲判決の内容を掲示する。今回、これのレビュー等を書く予定だったが、睡魔に襲われ前頭葉が働かなくなっているので、議論のたたき台とし役立てていただきたい。次回に、レビューする予定。

◆H17. 9.29 東京高等裁判所 平成16年(ネ)第6328号 各損害賠償等請求

事件番号  :平成16年(ネ)第6328号
事件名   :各損害賠償等請求
裁判年月日 :H17. 9.29
裁判所名  :東京高等裁判所
部     :第21民事部
結果    :控訴棄却
原審裁判所名:千葉地方裁判所
原審事件番号:平成13年(ワ)第2870号,平成14年(ワ)第385号

判示事項の要旨:
 内閣総理大臣の職に在る被控訴人小泉純一郎が平成13年8月13日に靖國神社に赴き本殿に昇殿して戦没者の霊を拝礼したなどの行為が,被控訴人小泉の判断,意思,上記行為の目的,性質等,政府の主催する公式行事との関係等に照らし,被控訴人小泉が自己の信条に基づいて行った私的な宗教上の行為その他の個人的な行為であって,内閣総理大臣の職務行為として行われたものであるとは認められないとされた事例

                      主         文
                  1 本件各控訴をいずれも棄却する。
                  2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
                      事 実 及 び 理 由
            第1 控訴の趣旨
             1 原判決を取り消す。
             2 被控訴人らは,各控訴人に対し,連帯して10万円を支払え。
            第2 事案の概要
             1 本件は,控訴人らが,内閣総理大臣である被控訴人小泉純一郎(以下「被控訴人小泉」という。)は平成13年8月13日に靖國神社を参拝したが,この参拝(以下「本件参拝」という。)は内閣総理大臣の職務として行われたいわゆる公式参拝に当たり,本件参拝により控訴人らの信教の自由,宗教的人格権等が侵害されたとして,被控訴人国に対しては国家賠償法第1条第1項に基づき,被控訴人小泉に対しては民法第709条に基づき,各控訴人が受けたとする精神的苦痛に対する慰謝料として各10万円を連帯して支払うことを求めた事案である。
             2 原判決は,控訴人らの請求はいずれも理由がないとしてこれらを棄却したので,これを不服とする控訴人らが控訴を提起した。なお,本件訴えは,原審において,原告Aほか39名が提起した訴え(千葉地方裁判所平成13年(ワ)第2870号)に原告Bほか22名が提起した訴え(千葉地方裁判所平成14年(ワ)第385号)が併合されたものであり,原判決は,審理の上,上記原告ら合計63名全員につき請求をいずれも棄却したものであるところ,上記原告ら合計63名のうち39名だけが本件控訴を提起し,その余の24名は控訴を提起しなかったので,原判決のうち上記24名に関する部分は確定した。
             3 前提事実,争点及び争点に対する当事者の主張は,当審における当事者の主張を後記のとおり付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1から3まで(原判決1頁21行目から29頁23行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決2頁11行目から12行目にかけての「「内閣総理大臣小泉純一郎」との肩書を付して記帳し,」を「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し,」に,同頁12行目から13行目にかけての「黙祷した後」を「黙祷した後」にそれぞれ改める。)。
            第3 当裁判所の判断
             1 争点(1)(控訴人らの本件訴えのうち,被控訴人小泉に対する部分は訴権の濫用に当たるか。)についての判断は,原判決の「事実及び理由」欄中の「第3 争点に対する判断」の1(原判決29頁25行目から同30頁11行目まで)に記載するとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決30頁6行目の「人権の行使が一切不法行為になり得ないとはいえない上,」を削除する。)。
             2 争点(2)(本件参拝は,国家賠償法第1条第1項にいう「公務員が,その職務を行うについて」なされたものといえるか。)について
              (1) 判断の前提となる事実の認定については,次のとおり付加,訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄中の「第3 争点に対する判断」の2の(2)(原判決30頁23行目から38頁14行目まで)に記載するとおりであるから,これを引用する。
               ア 原判決30頁25行目の「(1)及び(2)」の次に「,23,24の1,2」を加える。
               イ 同34頁13行目の「献花一対を本殿に備えさせた。」の次に「被控訴人小泉は,玉ぐし料については公費,私費ともに支出しなかった。」を加える。
               ウ 同36頁19行目から同37頁11行目までを次のとおり改める。
                 「(イ) 昭和53年8月15日,福田赳夫内閣総理大臣は,公用車を使用し,3名の公職者を同行させ,靖國神社に参拝した。その際,同総理大臣は,「内閣総理大臣福田赳夫」と記帳し,私費で玉ぐし料を支出した。
                 同年10月17日,安倍晋太郎内閣官房長官は,参議院内閣委員会において,内閣総理大臣等の靖國神社参拝についての政府統一見解について次のとおり説明した。「内閣総理大臣その他の国務大臣の地位にある者であっても,私人として憲法上信教の自由が保障されていることは言うまでもないから,これらの者が,私人の立場で神社,仏閣等に参拝することはもとより自由であって,このような立場で靖国神社に参拝することは,これまでもしばしば行われているところである。閣僚の地位にある者は,その地位の重さから,およそ公人と私人との立場の使い分けは困難であるとの主張があるが,神社,仏閣等への参拝は,宗教心のあらわれとして,すぐれて私的な性格を有するものであり,特に,政府の行事として参拝を実施することが決定されるとか,玉ぐし料等の経費を公費で支出するなどの事情がない限り,それは私人の立場での行動と見るべきものと考えられる。先般の内閣総理大臣等の靖国神社参拝に関しては,公用車を利用したこと等をもって私人の立場を超えたものとする主張もあるが,閣僚の場合,警備上の都合,緊急時の連絡の必要等から,私人としての行動の際にも,必要に応じて公用車を使用しており,公用車を利用したからといって,私人の立場を離れたものとは言えない。また,記帳に当たり,その地位を示す肩書きを付すことも,その地位にある個人をあらわす場合に,慣例としてしばしば用いられており,肩書きを付したからといって,私人の立場を離れたものと考えることはできない。さらに,気持ちを同じくする閣僚が同行したからといって,私人の立場が損なわれるものではない。なお,先般の参拝に当たっては,私人の立場で参拝するものであることをあらかじめ国民の前に明らかにし,公の立場での参拝であるとの誤解を受けることのないよう配慮したところであり,また,当然のことながら玉ぐし料は私費で支払われている。以上が内閣総理大臣等の靖国神社参拝についての政府としての統一見解でございます。」
               エ 同37頁12行目から19行目までを次のとおり改める。
                 「(ウ) 昭和55年11月17日,次のとおり,国務大臣の靖國神社参拝についての政府統一見解が示された。
                 「政府としては,従来から,内閣総理大臣その他の国務大臣が国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは,憲法第20条第3項との関係で問題があるとの立場で一貫してきている。右の問題があるということの意味は,このような参拝が合憲か違憲かということについては,いろいろな考え方があり,政府としては違憲とも合憲とも断定していないが,このような参拝が違憲ではないかとの疑いをなお否定できないということである。そこで政府としては,従来から事柄の性質上慎重な立場をとり,国務大臣としての資格で靖国神社に参拝することは差し控えることを一貫した方針としてきたところである。」
               オ 同37頁19行目の次に改行して次のとおり加える。
              「(エ) 昭和57年4月17日の閣議決定により,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」が設けられ,毎年8月15日がその期日とされ,その日に全国戦没者追悼式が実施されることとされた。「戦没者を追悼し平和を祈念する日」を設ける趣旨は「先の大戦において亡くなられた方々を追悼し平和を祈念するため」であるとされている。全国戦没者追悼式は,天皇皇后両陛下のご臨席を仰いで,毎年8月15日,日本武道館において実施することとされており,遺族のほか,内閣総理大臣,衆議院議長,参議院議長,最高裁判所長官,各国務大臣等が参列して行われている。平成13年8月15日にも全国戦没者追悼式が実施された。」
               カ 同頁20行目の「(エ)」を「(オ)」に,同38頁7行目の「(オ)」を「(カ)」に,同頁10行目の「(カ)」を「(キ)」に,同頁12行目の「(キ)」を「(ク)」にそれぞれ改める。
               キ 同38頁14行目の次に行を改めて次の文章を加える。
                 「(ケ) 被控訴人小泉は,平成16年4月7日,首相官邸において,記者団に対し,個人的信条に基づいて本件参拝を行ったことを明言した。また,被控訴人小泉は,同17年5月20日,参議院予算委員会において,議員の質問に対し,本件参拝を含めた平成13年から同16年の間に行った靖國神社への参拝に関し,いずれも個人として行ったもので,内閣総理大臣の職務として行ったものではない旨答弁した。」
              (2) 上記引用に係る原判決の認定事実(前記訂正部分を含む。)によれば,被控訴人小泉は,毎年8月15日の戦没慰霊祭の日に靖國神社に赴いて,尊い命を犠牲に日本のために戦った戦没者の霊を拝礼しなければならないとの自己の信念の下に,平成13年8月15日に靖國神社に赴いて戦没者の霊を拝礼するつもりであったが,内外から再考を求める声が強いなど,同日に靖國神社参拝を実施することにより,政権運営に事実上種々の支障が出ることを回避する等の考慮から,内閣総理大臣の立場においてその職務行為として参拝する趣旨であると受け取られることを避けるために,同日に靖國神社を参拝することについてはこれを断念して同月13日に本件参拝を私的に行うこととし,同日,靖國神社に赴き,同神社参集所において,「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し,本殿に昇殿して祭壇に向かって黙祷した後,一礼方式で拝礼したこと,これに先立って私費で献花代3万円を支払い,「献花 内閣総理大臣 小泉純一郎」と記載された名札を付した献花一対を本殿に備えさせたこと,以上の事実が認められる。そして,靖國神社が,国家のために戦没した軍人,軍属等の霊を慰めるためにお社(やしろ)を建立して戦没者の招魂慰霊の祭を行うことを目的としており,このようにして軍人,軍属等の霊を祀って宗教上の活動である祭祀を行う施設であることは公知の事実であることに照らすと,本件参拝は,仮に内閣総理大臣の職務行為として行われたとすれば,全体として,信教の自由に対する制度的保障である政教分離規定とされる憲法第20条第3項において国及びその機関が行うことを禁止されている「宗教的活動」に当たる可能性があるということができる(最高裁平成4年(行ツ)第156号同9年4月2日大法廷判決民集51巻4号1673頁参照)。
                そこで,本件参拝は控訴人らの主張するように被控訴人小泉が内閣総理大臣の職務行為として行ったものであるかどうかを検討するに,前記引用に係る原判決の認定事実(前記訂正部分を含む。)によれば,
               ア 被控訴人小泉の本件参拝実施に関する判断,意思としては,前記のとおり,平成13年8月15日の戦没慰霊祭の日に靖國神社に赴くことについて内外から再考を求める声が強いなど,同日に靖國神社参拝を実施することにより,政権運営に事実上の支障が出ることを回避する等の考慮から,内閣総理大臣の立場においてその職務行為として参拝する趣旨であると受け取られることを避けるために,同日靖國神社に赴くことを断念して同月13日に本件参拝を私的に行うこととしたものであること(前記引用に係る原判決の認定事実(前記訂正部分を含む。)によれば,現に,被控訴人小泉は,平成16年4月7日に首相官邸で記者団に対して,また,同17年5月20日に参議院予算委員会において,本件参拝について,内閣総理大臣の職務としてこれを行ったものではなく,個人としてこれを行ったことを明言していることが認められる。もっとも,前記引用に係る原判決の認定事実(前記訂正部分を含む。)によれば,被控訴人小泉は,平成13年4月18日の自民党総裁選の討論会で「尊い命を犠牲に日本のために戦った戦没者たちに敬意と感謝の誠をささげるのは政治家として当然。まして首相に就任したら,8月15日の戦没慰霊祭の日に,いかなる批判があろうと必ず参拝する。」と発言したこと,さらに,被控訴人小泉は,平成15年1月28日の予算委員会において,本件参拝について,自分が約束したことであり,8月15日に参拝することが公約であることのように発言したことが認められるが,本件参拝が,後記のとおり,全体として,被控訴人小泉において自己の信条に基づいて行った私的な宗教上の行為であるか,又は個人的な立場で行った儀礼上の行為であるというべきであって,内閣総理大臣の職務行為として行われたものとはいい難いことに照らすと,被控訴人小泉の上記各発言のみをもって,本件参拝を内閣総理大臣の職務行為と見ることも困難というほかない。),
               イ 被控訴人小泉が平成13年8月13日に靖國神社に赴いて本件参拝を行った一連の行為の全容は,靖國神社に赴き,同神社参集所において,「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し,本殿に昇殿して祭壇に向かって黙祷した後,一礼方式で拝礼したこと,これに先立って,私費で献花代3万円を支払い,「献花 内閣総理大臣 小泉純一郎」と記載された名札を付した献花一対を本殿に備えさせたこと(玉ぐし料については公費でも私費でも支出されていない。),以上に尽きるのであるが,被控訴人小泉が靖國神社の本殿に昇殿して戦没者の霊を拝礼した宗教上の行為は,被控訴人小泉が,専ら個人的な信条に基づき,戦没者の霊に拝礼するという宗教上の行為を行うものであって,元来純然たる私的行為として,むしろ私人としての被控訴人小泉個人が憲法第20条第1項により保障されるべき信教の自由の範疇に属する事柄というべきものであり,献花代3万円を上記のとおり私費で支払っていることに照らしても,被控訴人小泉による上記拝礼行為が総理大臣としての職務行為として行われたものとはいい難いこと,
               ウ 確かに,被控訴人小泉は,「献花 内閣総理大臣 小泉純一郎」と記載された名札を付した献花一対を本殿に備えさせているが,献花代は私費で負担していることは前記のとおりであって,したがって,上記献花は,専ら個人的な信条に基づく私的行為であるか又は個人の立場で行われた儀礼上の行為の域を出るものとはいえないこと,また,前記のとおり,玉ぐし料については公費でも私費でも支出されていないこと,
               エ 被控訴人小泉が靖國神社参集所において「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳した行為についても,被控訴人小泉が個人として記帳するに当たって上記の肩書きを付したにとどまるものであって,この行為も,被控訴人小泉が専ら個人的な信条に基づいて行った私的行為であるか又は個人の立場で行った儀礼上の行為であるというべきであること,
               オ なお,被控訴人小泉は,本件参拝に際し,靖國神社への往復に公用車を用いており,内閣総理大臣秘書官及びSPを同行させたが,弁論の全趣旨によれば,内閣総理大臣の地位にある者が公務の完了前に私的行為を行う場合に必要な措置として執られたものであることが認められるから,靖國神社への往復に限っていえば内閣総理大臣の職務に関連して行われた行為であるということはできるとしても,上記の措置が執られたことをもって,被控訴人小泉が同日に靖國神社に赴いて本件参拝を行った一連の行為が全体として内閣総理大臣の職務行為として行われたことになるとまで評価することは困難というほかないこと,
               カ さらに,被控訴人小泉が本件参拝のために靖國神社に赴いた時期と政府が主宰する行事との関係についてみるに,昭和57年4月17日の閣議決定により,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」が設けられ,毎年8月15日がその期日とされ,その日に全国戦没者追悼式が実施されることとされており,平成13年8月15日にも全国戦没者追悼式が実施されたことは前記のとおりであるところ,被控訴人小泉が本件参拝のために靖國神社に赴いたのは同月13日であり,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」の行事として政府によりその実施が決定されていたものではなく,政府の主催する全国戦没者追悼式と一体性を有するものではないことが明らかであること,
                以上の事情が認められるのであって,これらによれば,被控訴人小泉が同月13日に靖國神社に赴いて本件参拝を行った一連の行為は,被控訴人小泉の判断,意思(内閣総理大臣の立場においてその職務行為として参拝する趣旨であると受け取られることを避けるために,同月15日に靖國神社に赴くことを断念して同月13日に参拝を私的に行うこととしたこと),被控訴人小泉が靖國神社の本殿に昇殿して戦没者の霊を拝礼した行為の目的,性質等(専ら個人的な信条に基づく宗教上の行為であって,元来純然たる私的行為として被控訴人小泉個人が憲法第20条第1項により保障されるべき信教の自由の範疇に属するものであること),政府の主催する公式行事との関係等の客観的状況(本件参拝が政府の主宰する「戦没者を追悼し平和を祈念する日」の行事として政府によりその実施が決定されていたものではないこと)等に照らし,上記の行為のうちに内閣総理大臣の職務行為として行われたものがあるとはいい難く,本件参拝は,被控訴人小泉が自己の信条に基づいて行った私的な宗教上の行為であるか,又は個人の立場で行った儀礼上の行為であるというべきであるから,いずれも個人的な行為の域を出るものではなく,本件参拝が内閣総理大臣の職務行為として行われたものであるとは認め難いものといわなければならない。
                以上によれば,被控訴人小泉が平成13年8月13日に靖國神社に赴いて本件参拝を行った一連の行為は,これらを一体の行為としてみても,また,個別の行為としてみても,いずれも国家賠償法第1条第1項所定の「公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについて」されたものには当たらないものというべきである。そうすると,本件参拝が内閣総理大臣の職務行為として行われたものであることを前提とし,これが憲法第20条第3項に違反するとする控訴人らの主張は,その前提を欠くものであり,控訴人らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がないといわざるを得ない。
                なお,公権力の行使に当たる公務員の地位にある者が専ら自己の利を図る目的で職務上の地位を利用してあたかも公務員の公権力の行使に関する職務行為であるかのように装い,その結果,公務員の上記職務行為であると誤信した者に損害を与えた場合等にも同項に基づく責任が肯定されることがあり得るとしても(最高裁昭和29年(オ)第774号同31年11月30日第二小法廷判決民集10巻11号1502頁参照),本件参拝に関して上述したところに照らすと,被控訴人小泉が,靖國神社への往復に公用車を使用し,秘書官及びSPを同行させ,内閣総理大臣の肩書きを付して記帳し,献花をし,参拝を行ったことによって,上記のような場合に当たるということはできないから,本件参拝が内閣総理大臣の公権力の行使に関する職務と法的関連性を有するものとはいえない。
              (3) 控訴人らは,被控訴人小泉が本件参拝の前後を通じて私人としての参拝と評価されるような配慮を全くせず,「公人としての参拝」であるかのような言動を取り続けたのであり,近時の被控訴人小泉の発言は中国や韓国との関係が悪化した状況を踏まえて関係改善策としてされたものであるにすぎないなどとし,これを理由に,本件参拝が私人の立場で行われたものであることを否定する。
                しかしながら,本件参拝が,被控訴人小泉において自己の信条に基づいて行った私的な宗教上の行為であるか,又は個人的な立場で行った儀礼上の行為であるというべきであって,いずれも個人的な行為の域を出るものではなく,したがって,本件参拝が内閣総理大臣の職務行為として行われたものとはいい難いことは前記のとおりである。したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。
              (4) 控訴人らは,争点(3)及び同(5)について,本件参拝が違憲,違法であること,被控訴人小泉は違法な職務行為であることを十分承知しながらこれを行ったものであり,個人としても損害賠償責任を負うべきであること,本件参拝により控訴人らの権利,法的利益が侵害されたことは明らかであることなどを主張する。
                しかしながら,被控訴人小泉が行った本件参拝に関連する一連の行為が,国家賠償法第1条第1項所定の「公権力の行使に当たる公務員が,その職務を行うについて」されたものには当たらないものというべきであることは前記のとおりである。したがって,控訴人らの上記主張は,いずれもその前提を欠くものであって,失当であるといわざるを得ない。
             3 以上のとおり,控訴人らの請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。
            第4 結論
               よって,控訴人らの被控訴人らに対する請求を棄却した原判決は結論において相当であるから,控訴人らの本件各控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。

             東京高等裁判所第21民事部
              (裁判長裁判官 浜野 惺  裁判官 高世 三郎  裁判官 長久保 尚善)

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2005年11月 2日 (水)

大阪高裁、靖国違憲判決をめぐる所感と文句(2)

 前回の続き。

 この件に関して、サイトめぐりした成果を披瀝しようと思っていたのだが、下記のサイトで、肝心な点は丁寧にわかりやすく説明されているので、その作業は不要と考える。まずは、下記の参照を請う。

[弁護士山口貴士大いに語る]
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/

の中の、一連(4つ)の記事のこと。

1)小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2005/10/post_78ca.html
2)【続】小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2005/10/post_2fed.html
3)【論点整理】小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2005/10/post_5a6a.html
4)【続々】小泉首相の靖国参拝はやっぱり違憲でしょう
http://yama-ben.cocolog-nifty.com/ooinikataru/2005/10/post_caec.html

 ただ、東京高裁の靖国合憲判決(9/29)と、大阪高裁の靖国違憲判決(9/30)を比較して、私なりに理解したことを、少し付言すればこうである。

Ⅰ.共通点
 靖国参拝が、内閣総理大臣の職務行為なら違憲、小泉純一郎氏の私的行為なら合憲。

 これはもう不動の司法判断だろう。ま、あたりまえだぁな。憲法読みゃ、中学生だってそう思うよね。

Ⅱ.相違点
 だから、小泉純一郎氏の一連の行為をどう事実認定するか、によって両高裁の判断が分かれた。

 東京高裁は、一連の小泉氏の行為を私的行為と事実認定し、大阪高裁はそれを内閣総理大臣の職務行為と事実認定した。だから、判断が真っ二つに分かれた。

 ということは、

Ⅲ.憲法解釈で司法の判断が分かれたのではない。

 内閣総理大臣の職にある者にとって、いかなる行為が、私的であり、職務行為なのか、という、事実認定の部分で両高裁の判断が分かれた、ということ。

 私の感触で言えば、東京高裁の判断は狭すぎ、ちょっと無理があるんじゃない?というもので、その点、大阪高裁の判断は広めで、一般常識にかなった妥当なもの、というところか。

 ただ、靖国神社サイドの弁護団には、この「広さ」に深刻な懸念を抱いている向きもあるようだ。この点、興味深いので、次回、東京高裁判決への感想とともに書くこととする。

P.S.昨夜、大阪高裁の判決を検索したときは、平成17年1月1日から平成17年10月30日まで、1件もヒットしなかったのに、先ほど検索したら、なぜか、7月中の判決2件がヒットした。どうしたんだろ(?-?

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