比較憲法というと、英米独仏の憲法を引き合いに出して、日本の1946年憲法と比べるのが、憲法学界のワンパターンだ。例えば下記。
比較憲法(岩波書店 2003年)
ISBN: 4000280317
比較憲法入門(有斐閣 1994年)
ISBN: 4641031932
上記の4大国(?)以外が取り扱われている場合でも、それらは実質的に刺身のつま的扱いと考えてほぼ間違いなかろう。でも、サッカー・ワールドカップ予選に出てくるような、ちっちゃな国にだって立派な憲法はあるだろう。そういった小国の憲法や、もっと生(なま)な憲法情報を手に入れることは無理なのだろうか。
そういう不満を多少なりとも、解消してくれるサイトが下記↓である。
International Constitutional Law
http://www.oefre.unibe.ch/law/icl/index.html
憲法は当然、自国語で書かれるから、ご当地の言葉で書かれた原典は、ネット上でいくらドキュメント・ファイルが手に入っても読むのは難しい。上記のサイトは、90ヶ国の最新の憲法条文を、すべて英訳して紹介してくれる、非常に有意義なサイトだ。
ここのトップ頁にある、Constitutional Documents、の、各国名をクリックすれば、その国、最新の、つまり、修正条項を含む条文を見ることが出来る訳だ。
そこを概観してみると、1990年代に、独立国となって、新しく憲法を公布した国や、憲法を大改正した国、修正(amendment)した国が非常に多いことに気づく。憲法修正条項は米国の専売特許ではないのだ。それがリアルにわかる。
ちなみに、憲法公布年、最新の憲法修正年、を10年ごとに分類してみると以下のようになる。
1900
Australia(1900年公布)
1940
Japan
1950
Denmark
1960
Cyprus, Kuwait, Libya
1970
Syria
1980
Canada, Iran, Liberia, Netherlands, South Korea, Sweden
1990
Albania, Algeria, Angola, Argentina(1853年公布), Armenia, Azerbaijan,
Belarus, Belgium, Bosnia and Herzegovina, Brazil, Bulgaria, Cambodia, Congo,
Czech Republic, Estonia, Ethiopia, Fiji, Finland, France, Hawaii, Hong Kong,
India, Ireland, Israel, Lebanon, Lithuania, Luxembourg, Macedonia, Madagascar,
Malta, Mauritania, Mongolia, Morocco, Namibia, Nepal, New Zealand, Norway,
Oman, Paraguay, Poland, Portugal, Russia, Saudi Arabia, Singapore, Slovakia,
South Africa, Spain, Taiwan, Thailand, Tibet, Tunisia, United States, Yemen,
Zambia
2000
Afghanistan, Bahrain, Chechnya, China, Croatia, Germany, Greece, Hungary,
Iraq, Italy, Latvia, Qatar, Romania, Rwanda, Slovenia, Switzerland, Turkey,
Vietnam
1990年以降、75の国々が何らかの形で憲法を発布、修正をしている。なぜ、1990年以降に集中しているのか。すぐに思い当たることは、1991年旧ソ連の崩壊による冷戦終結だろう。constitution とは、憲法だけでなく、基本構造、といった意味もある。つまり、1990年代、一国だけでなく、世界の基本構造になんらかの変化があったと考えるべきなのだろう。それが、各国憲法の変化に現れているわけだ。
さて、日本、および日本人はこのことをどう受け止めればよいのか。このblogでも、おいおい論じる予定だ。だが、その前に、積み残しの、東京高裁、靖国合憲判決へのレビュー等、を片付けねばならない。それは次回以降に。
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