木下恵介作品集がDVD化され、そこに収録されていたが、近時、独立したDVD作品として出ていたので求めた。
実に、数十年ぶりの再会だ。中学生時代、校外学習の一環で、数クラス単位で見させられて以来だと思う。中1だったか。
主演の二人、政夫役の田中晋二、民子役の有田紀子は、台詞回しなど素人同然なのだが、その年齢の少年少女しか持ち得ない初々しさで、恋ともいえぬほどの幼い恋の嬉しさ、もどかしさ、そして別れの辛さを、よく画面から伝えていた。
数えで、政夫15歳、民子17歳というが、満年齢でいえば、13歳と15歳で、中1と中3の学齢だ。今日日、想像しにくいが、田園風景の中で違和感はあまりない。
二人は、縁の従姉弟どうしで、きょうだい同然に育った幼馴染だ。そのため、母親も、本人たちも、子どもの仲良し、好き同士が、恋に化学変化してしまうことの予感を無意識に遠ざけていた。しかし、周りからの別離の無理強いが仇となり、かえって互いの思いを抜き差しならぬほど強めてしまう。悲劇は、娘が己の恋のために殉じることで幕を下ろす。そして、後年の笠智衆演ずる政夫も、癒えぬ痛恨事としてこの幼い恋の記憶とともに生きながらえることになる。
リマスター修復版なので画面が暗い。特に有田紀子の表情が鮮明に捉えられない部分があるのは残念だ。この映画における有田紀子の可憐さは、仏映画「ヘッドライト」アンリ・ヴェルヌイユ監督(1955)での、クロチルド役フランソワーズ・アルヌールを想起させるので。
原作の伊藤左千夫『野菊の墓』は、高校に入ってから読んだように記憶しているが、実はその前に、おそらく小学生時代、従姉妹が読んでいた少女漫画雑誌に、この『野菊の墓』の漫画化されたものがたまたまあり、それを読んだのが『野菊の墓』との出会いだったと思う。今となっては、誰の作品かは不明だが。
はじめて見たときは、駅付近にある映画館へ、学年でぞろぞろ出かけたはずだ。映画が終り、席を立ちながら明るくなった周りを見渡すと、通路の生徒の流れの中に、目を真っ赤にし、またそれを見とがめられるのを気恥ずかしそうにしてなおさら頬を染めている、私の好きだった娘がいた。
彼女は父親(新聞記者)の転勤の関係で、中学に上がる際、神奈川から引っ越してきていた。そのため、準備していた制服も神奈川のもので、入学式の後、教室に入ると、1人、灰白色の見慣れぬ制服を着ており、初日から心ならずも目立ってしまっていたようだった。
彼女は、中3に上がる際、またしても父親の転勤に伴い、他所へ転校してしまった。彼女の思い出も、今の私の一部である。
登場した野菊がいったいなんという花だったか、調べた奇特な方がいらっしゃる。その写真を探しておられるので、その花の写真をお持ちの方はどうか連絡してあげてください。↓
■ 野菊の如き…