昭和

2021年12月31日 (金)

2022年はインフレ元年:コストインフレの半世紀へ/ 2022: The First Year of Inflation: Toward a Half Century of Cost Inflation

 2022年は、ドネラ・メドウズ(Donella H. Meadows)を主査としてローマ・クラブ・レボート『成長の限界 The Limits to Growth 』が1972年に発表されてからちょうど50周年です。50年後の眼から見ても、驚くべきことにこの報告内容はほぼ正確だった、と言えるようです。下記はその内容を象徴する有名なシミュレーションモデル図です。
〔出典は、電力自由化Q&A :「電気を選ぶ」ってどういうこと? | 電力・ガス比較サイト エネチェンジ

Limit-of-growth-graph

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2021年12月30日 (木)

懺悔と免責/ Repentance and Immunity

 近現代日本人の「立場主義」は、人間の思考と欲望を《水路付け canalization》して、個人に組織の仮面をかぶらせることで、自己判断としての責任倫理の心理的圧迫から個人を解放し、爆発的なエネルギーを引き出しましたが、それは同時に、個人の行為から発生する《責任倫理》からの免責も意味し、普通の人々を徹頭徹尾、鉄面皮にする危険もありました。

※参照 漱石作品に見る近代日本人の《立場主義》化: 本に溺れたい

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2021年12月23日 (木)

佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔3〕

 普段、文学とは遠い生活をしている私が、この素晴らしい文章と出会う奇縁を作ってくれたのが、たまさか目にした故須賀敦子氏の素敵な書評 (毎日新聞1992/12/15、本記事下記)でした。そのころの私は日本経済新聞を長く購読していたのですが、熱心(=執拗)な毎日新聞の勧誘に根負けし、三ヶ月だけ?購読することにしたのです。そんな嫌々ながらの偶然が、それから三十年もつき合う本を私にもたらせてくれるとは「神のみぞ知る」を地で行く、でしょうか。人生の下山途中にいる証には違いありません。

 

佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔1〕: 本に溺れたい
佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔2〕: 本に溺れたい

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2020年5月 5日 (火)

徳川文明の消尽の後に(改訂版)/After the exhaustion of Tokugawa civilization (revised)

 徳川慶喜は、大正2年(1913年)11月22日に没しました。享年76歳。1868年の時点で、彼は31歳ででした。すると、不本意ながら人生の過半を、明治コンスティテューション(Meiji constitution)下で彼は過ごしたことになります。さて、そうすると、慶喜は江戸人なのでしょうか、それとも明治人なのでしょうか。

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2020年2月25日 (火)

鹿児島駅8時38分発 わが心の集団就職列車

 なんとはなしに、あるテレビドキュメンタリーをyoutubeで見ました。

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2018年11月17日 (土)

山川方夫「夏の葬列」1962年


『夏の葬列』1991年集英社文庫

「ヒッチコックマガジン」昭和三十七年八月初出

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2012年10月15日 (月)

ある俗謡

以下は、東京オリンピックの前後、東京多摩地方の小学生たち(もちろん男子)が下校途中で列をなして大声で唄っていた俗謡である。民俗学的資料として提供する(笑)。

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2007年5月18日 (金)

日本国憲法は、1946年、すでに「改正」されている

 日本国憲法は、昭和21年(1946)に公布される時点で、すでに「改正」済みである。

 ではいかなる意味でそう言えるのか。そのことのリアリティを実感してもらうため、一つのシミュレーションをしてみよう。現行の憲法がいかにあなたを守ってくれないか、という実験である。

〔註〕本記事は、「あなたが、ある朝突然、逮捕されたとき、」05/11/17、という過去記事の焼き直しである。国民投票法成立を「祝」して、再度掲載し直してみることとする。

Question 「あなたが、ある朝突然逮捕されたとき、日本国憲法(1946)はあなたを守ってくれるのか。」

 すぐ、私たちが頼りにしなければならないのは、第33、34条である。

〔逮捕の制約〕
第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

〔抑留及び拘禁の制約〕
第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

 あなたは、二つの事をすぐ実行する必要がある。

1)「逮捕令状を確認させて下さい。」、と令状を確認する。任意同行なら拒絶できるが、拒絶の仕方に難癖をつけて、公務執行妨害の現行犯として逮捕される可能性もある。

2)「弁護人を依頼します。(例えば)東京弁護士会の弁護士を選任しますから、連絡させてください。弁護士が来るまで、黙秘権を行使します。」

 ただ、警察官たちは、権利の説明をしながら、怒涛のように、あなたを何人もの捜査員で取り囲み、パトカーに押し込む。すると、弁護士会に連絡するのは、警察署に連行されてからになる可能性が高い。

 問題はここから。警察官たちは、あなたを取調室に連れてきて、尋問を始める。そして、あなたの外部への連絡の要請を、のらりくらりと先延ばし、はぐらかしつつ、尋問を続ける。また、捜査員たちは、あなたを休ませないように、複数捜査員が交代であなたの取調べを延々と続ける。

 無実の罪だから、物的証拠はない(当然だ!)。すると、自白の実質的強要を画策する。それで、最も効果的なのは、上記のような外部との遮断、および疲労である。

 日本の刑事事件で冤罪が絶えないのは、憲法第38条で、自白の証拠能力について留保がついているにも関わらず、裁判でも自白が重視され、それにあわせて、捜査員たちが自白を創造してしまうためだ。

〔自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界〕
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 それらの防ぐには、最低限、被疑者が外部と連絡する権利が保障されている必要がある。それを「外部交通権」という。現行の1946年憲法ではその点が明示されていない。

 ところが、マッカーサー憲法案では、しっかり存在していた*。↓

《 he shall not be held incommunicado. 》*
「何人も、外部との連絡を一切遮断されたままで留め置かれることはない。」

 何のことはない、日本側の役人によって、削除されていたのである。

 また、外国の例で言えば、スイス憲法第31条第二項では、

Article 31  Habeas Corpus
(2) In particular, he or she has the right to have his or her close relatives informed.
特に、最も身近な親族にその旨を告げる権利を有する。

、という形で、「外部交通権」を保障する工夫をしている。

 憲法の“柔軟な”解釈運用は、結局、憲法の名宛人である“霞ヶ関”の恣意的な解釈を許してしまう。日本の1946年以降の半世紀はその連続だ。それは、彼らが、実は《改憲》より歓迎する、《憲法=法》の空文化、を可能とさせてきた。

 例えば「外部交通権」を明文化する憲法条項の改正は、恣意的憲法運用を防ぎ、より明確に権力者たちを縛る改正の、一つの例といえよう**。

〔註〕

*マッカーサー草案については、下記を参照。

国会図書館(NDL)、日本国憲法の誕生、資料と解説、第3章 GHQ草案と日本政府の対応、
3-15 GHQ草案 1946.2.13

**「外部交通権」を含む問題については、日弁連の下記サイト記事を参照。
第56回定期総会・未決拘禁制度の抜本的改革と代用監獄の廃止を求める決議

○また、「国民投票法」に関しても下記を参照。
日本弁護士連合会

○1946年憲法の成立過程を振り返りたい方は、ぜひ下記を参照されたし。
日本国憲法の誕生

○国民投票法については下記参照。
参議院ホームページ

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2007年4月13日 (金)

挫折と再生

「日本は万事が処世術で片付く、ある意味では幸福な国である。しかしマルクス主義者は、この日本の風土のなかで政治には思想と原則が必要なことを主張してきた人々である。せめて彼らぐらいは、挫折によって逆説的に勝利するという先例を日本精神史上に残してほしいと私は思った。思想と原則に拠って生きることの厳しさを感じさせるような滅び方をしてほしかったのである。

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2007年4月 3日 (火)

「言葉の力」を思い出させるエッセイ

「ところで、週末になるとホテルの酒場の様子は一変した。平日の夜は、スウェーデン人技師とぼくとが殆ど毎晩同じような話を繰り返しているだけで、あとはひっそり静まり返っている酒場は、土曜の夜には泥酔者たちで大荒れとなった。それは、回教の戒律がもっと厳格な南の方で、油田の開発に従事している欧州や米国からの人々が、強い酒に酔うために、大挙して北上してくるからであった。
 その中の何人かの人びととは次第に顔馴染になってゆくのであるが、彼らの中には、明らかに大戦中どこかの遠い荒い海に、長い間出ていたような匂を持ち続けている人たちがいた。
 あの、あお黒く光る鋼鉄の機械油のにおいを、ぼくらは相互のどこかに探り当てながらも、しかしながら、そこから先には踏み入らなかった。お互いに、浅くしか眠ることが出来なかった夜々のことを、おたがいの不運な時代のことを、ぼくらはまだ打ち明けることが出来なかった。」
佐野英二郎『バスラーの白い空から』青土社(2004年)、p.65-6

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