憲法

2022年11月28日 (月)

尾藤正英著『日本の国家主義 「国体」思想の形成』2020年岩波書店(オンデマンド版pbk)

 故尾藤正英氏の、思想史関連(近世/近代日本の国家思想史)の論文を集めたものです。白眉は、「尊王攘夷思想」1977年、「国家主義の祖型としての徂徠」1974年、の二編。

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2022年9月29日 (木)

日本の若者における自尊感情/ Self-esteem among Japanese Youth(3)

(2)より

 他のMLにて、下記の情報をご教示頂きました。

中華人民共和国憲法第38条
 中華人民共和国公民の人格の尊厳は、侵されない。
 いかなる方法にせよ、公民を侮辱、誹謗または誣告陥害
 することは、これを禁止する。

 中国人においては、「面子」は Human Dignity の基本中の基本であり、人倫の原理なのかもしれません。

 かつての「文革」での三角帽子を被らせての吊し上げ、はその原則を公然と踏みにじった空前の暴挙だったため、そういったことへの公法的安全装置の意味もあるような気もします。

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2022年3月20日 (日)

国家による「生」の選別=優生保護法

キャンペーン ・ 【緊急署名】今度こそ! #優生保護法裁判東京高裁判決に上告しないでください ・ Change.org
  【3月21日署名期限です。3月22日国会提出します】

 以下をお読み頂き、納得、共感、憤慨、して頂けたなら、ご署名(オンライン)をお願い申し上げます。
本ブログ主 renqing こと、上田悟司

参照1 強制不妊手術への賠償判決、国は上告を断念せよ - 前田哲兵|論座 - 朝日新聞社の言論サイト

参照2 国は上告せず早期解決を! 東京高裁でも優生保護法強制不妊手術に賠償判決 - 藤木和子|論座 - 朝日新聞社の言論サイト


 これまで本ブログで、ハンセン病療養所に残された「胎児標本」に関する記事を三つ掲載しています。

厚生労働省に二度殺される赤ちゃんたち: 本に溺れたい
1葉の写真: 本に溺れたい
「ハンセン病療養所における胎児等標本に関する要望書」に賛同のお願い: 本に溺れたい

 この闇から闇へ「処理」された赤ちゃんたちのような国家犯罪は、明治から続いた「癩(らい)」者への蔑視からきたもので、一部の閉じた世界での悪業だと私は思っていました。

 ところが、人工中絶を合法化する法律だと私が思い込んでいた「優生保護法」(1948年~1996年)は、1907年「癩予防ニ関スル件」から「らい予防法」の1996年廃止まで百年続いたハンセン病者への悪業と全く同質で、国家による「赤ちゃん」の選別を合法化するものだったのです。己の不明を恥じるばかり。なにしろ、この法律の第一条以下に威風堂々とこう記されていたのです。

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2020年9月 2日 (水)

1945年9月2日日曜日

 1945年9月2日日曜日、東京湾に浮かぶ米国戦艦ミズーリ号上で、大日本帝国の、重光葵外務大臣、梅津美治郎陸軍参謀総長が、連合国との降伏文書に調印しました。

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2018年3月20日 (火)

My First Rifle(初めてのライフル)

 米国で、9歳男児が13歳の姉を射殺しました。3月19日、ミシシッピ州にて。

米で9歳男児が姉射殺 ゲームめぐりけんか 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

 なんで、こんな事件が頻発するのかという法的根拠は、合衆国憲法に明記されています。

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2017年2月28日 (火)

関良基『赤松小三郎ともう一つの明治維新』作品社(2016年)

 一書を全編書き下ろすことは、尋常ではない精力を必要とするだろう。著者は森林生態政策学者である。つまり、本書の内容は著者の専門の畑と異なり、その要求されるエネルギーも倍加する。

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2009年9月24日 (木)

徳川期の「天皇機関説」/ The Constitutionalism of "the Emperor" in Tokugawa Japan

①「本条(明治憲法第4条のこと:引用者注)ハ此憲法ノ骨子ナリ。抑憲法ヲ創設シテ統治ヲ施スト云フモノハ、君主ノ大権ヲ制規ニ明記シ、其ノ幾部分ヲ制限スルモノナリ。又君主ノ権力ハ制限ナキヲ自然ノモノトスルモ、已ニ憲法政治ヲ施行スルトキニハ其君主権ヲ制限セザルヲ得ズ。」
憲法草案枢密院会議筆記(明治21年6月18日午後の条)、
鳥海靖『日本近代史講義』東大出版会(1988) 、p.228

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2007年10月11日 (木)

♪あなたも私も犯罪者♪

 あまりにも常識ハズレ(少なくとも私の)な冤罪事件が10月10日、一つ決着した。関連記事を三つ挙げておく。↓

1)冤罪男性、再審で無罪判決=検察控訴せず確定-女性暴行誤認逮捕・富山地裁支部
10月10日15時31分配信 時事通信
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 女性暴行事件で富山県警に誤認逮捕され、実刑判決を受け服役後に無実と判明した柳原浩さん(40)の再審判決公判が10日、富山地裁高岡支部で開かれ、藤田敏裁判長は「被告人が犯人でないことは明らか」と述べ無罪を言い渡した。検察側は控訴しないことを決め、逮捕から5年半かかって柳原さんの無罪が確定した。
 藤田裁判長は、再審公判に提出された大津英一被告(52)=公判中=の調書や、事件現場に残された足跡に関する資料などの証拠から、柳原さんが起訴された2事件について「各犯行の真犯人は大津被告と認められる」と認定した。
 さらに、犯行時刻に柳原さんが自宅で電話をかけていたことを示す通信記録などから、アリバイが成立するとして、犯行を自白した柳原さんの供述調書は「信用性がないことは明らか」とした。 
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2007年5月18日 (金)

日本国憲法は、1946年、すでに「改正」されている

 日本国憲法は、昭和21年(1946)に公布される時点で、すでに「改正」済みである。

 ではいかなる意味でそう言えるのか。そのことのリアリティを実感してもらうため、一つのシミュレーションをしてみよう。現行の憲法がいかにあなたを守ってくれないか、という実験である。

〔註〕本記事は、「あなたが、ある朝突然、逮捕されたとき、」05/11/17、という過去記事の焼き直しである。国民投票法成立を「祝」して、再度掲載し直してみることとする。

Question 「あなたが、ある朝突然逮捕されたとき、日本国憲法(1946)はあなたを守ってくれるのか。」

 すぐ、私たちが頼りにしなければならないのは、第33、34条である。

〔逮捕の制約〕
第33条 何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

〔抑留及び拘禁の制約〕
第34条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。

 あなたは、二つの事をすぐ実行する必要がある。

1)「逮捕令状を確認させて下さい。」、と令状を確認する。任意同行なら拒絶できるが、拒絶の仕方に難癖をつけて、公務執行妨害の現行犯として逮捕される可能性もある。

2)「弁護人を依頼します。(例えば)東京弁護士会の弁護士を選任しますから、連絡させてください。弁護士が来るまで、黙秘権を行使します。」

 ただ、警察官たちは、権利の説明をしながら、怒涛のように、あなたを何人もの捜査員で取り囲み、パトカーに押し込む。すると、弁護士会に連絡するのは、警察署に連行されてからになる可能性が高い。

 問題はここから。警察官たちは、あなたを取調室に連れてきて、尋問を始める。そして、あなたの外部への連絡の要請を、のらりくらりと先延ばし、はぐらかしつつ、尋問を続ける。また、捜査員たちは、あなたを休ませないように、複数捜査員が交代であなたの取調べを延々と続ける。

 無実の罪だから、物的証拠はない(当然だ!)。すると、自白の実質的強要を画策する。それで、最も効果的なのは、上記のような外部との遮断、および疲労である。

 日本の刑事事件で冤罪が絶えないのは、憲法第38条で、自白の証拠能力について留保がついているにも関わらず、裁判でも自白が重視され、それにあわせて、捜査員たちが自白を創造してしまうためだ。

〔自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界〕
第38条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
2 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
3 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

 それらの防ぐには、最低限、被疑者が外部と連絡する権利が保障されている必要がある。それを「外部交通権」という。現行の1946年憲法ではその点が明示されていない。

 ところが、マッカーサー憲法案では、しっかり存在していた*。↓

《 he shall not be held incommunicado. 》*
「何人も、外部との連絡を一切遮断されたままで留め置かれることはない。」

 何のことはない、日本側の役人によって、削除されていたのである。

 また、外国の例で言えば、スイス憲法第31条第二項では、

Article 31  Habeas Corpus
(2) In particular, he or she has the right to have his or her close relatives informed.
特に、最も身近な親族にその旨を告げる権利を有する。

、という形で、「外部交通権」を保障する工夫をしている。

 憲法の“柔軟な”解釈運用は、結局、憲法の名宛人である“霞ヶ関”の恣意的な解釈を許してしまう。日本の1946年以降の半世紀はその連続だ。それは、彼らが、実は《改憲》より歓迎する、《憲法=法》の空文化、を可能とさせてきた。

 例えば「外部交通権」を明文化する憲法条項の改正は、恣意的憲法運用を防ぎ、より明確に権力者たちを縛る改正の、一つの例といえよう**。

〔註〕

*マッカーサー草案については、下記を参照。

国会図書館(NDL)、日本国憲法の誕生、資料と解説、第3章 GHQ草案と日本政府の対応、
3-15 GHQ草案 1946.2.13

**「外部交通権」を含む問題については、日弁連の下記サイト記事を参照。
第56回定期総会・未決拘禁制度の抜本的改革と代用監獄の廃止を求める決議

○また、「国民投票法」に関しても下記を参照。
日本弁護士連合会

○1946年憲法の成立過程を振り返りたい方は、ぜひ下記を参照されたし。
日本国憲法の誕生

○国民投票法については下記参照。
参議院ホームページ

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2007年5月14日 (月)

Meiji Constitution の賞味期限

 簡略に、Meiji Constitution の命脈が、ほぼ80年間(1868-1945)で尽きた理由を述べてみよう。

1)近代主権国家を作れなかったこと。
 薩長クーデタ集団は、結果的に分権的な「幕藩体制」を武力で清算した。しかし、兆民の「多頭一身の怪物」、丸山の「無責任の体系」、ウォルフレンの「権力構造の謎」、といわれ続けてるように、中央(=東京)集権にも関わらず、その中央部で、最終的に統治に関する権力と責任が一人の人間ないし一つのポストに集約されていなかったこと。これは、民主政とか君主政、などとは別次元の事であることに注意。妙な表現だが、いわば「アナーキーな権力」、であったことになろう。

2)「(合理的)法の支配」がないこと。

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