思想史研究における生産者主権と消費者主権
思想史の研究には、大別して二つのアプローチ、ないし目的があるだろう。
一つは、「思想」史である。つまり、歴史的に実在したある特定の人間の思惟の過程、その帰結、達成、影響を、できる限り内在的、詳細に理解した上で、研究者の立場から現代的意義を考えること。
二つめは、思想「史」である。ある特定の時、場所に芽生えた、ある個人の思惟が、いかなる文脈(時代的、地理的、社会的)のもとで誕生し、そしていかなる文脈(時代的、地理的、社会的)のもとで人々に受け入れられ、流通し、変容していったのか、を可能な限り理解したうえで、その一連のプロセスが、研究者の生きる現代にとっていかなる歴史的意味を有しているのか、を考えること。
以上の二つである。そして、いささか唯物的(「唯物論」的ではない!)謂いにはなるが、前者を、「思想の生産者主権」アプローチ、後者を「思想の消費者主権」アプローチ、と名づけてみよう。
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