経済

2008年7月 4日 (金)

相対価格と経済数量(2)

 様々な価格のなかに、あまり気がつきにくいが経済全体に大きく影響する価格がある。それは、賃金率(=単位時間あたりの労働報酬金額)と利子率である。ただ、賃金率は労働もしくは仕事の質的多様性と、企業内部における分配状態とに関連するため、極めて重要な価格ではあるが、ここでははずしておくことにする。

 さて、利子率である。これはカネの貸し借りにおける価格だ。登場するのは、売り手、買い手ではなく、貸し手、借り手である。

 日本国における最大の債務者はだれか。もちろん日本国政府である。平成20年3月末現在で、償還10年以内の長期国債の発行残高は、360兆円。平成20年度予算でも、国債発行額は、25兆円。この5年間でみれば、国債の毎年の平均発行額は、約30兆円。

 すると、バブル期以降、経済の長期的低迷の中で、景気の下支えとして説明されてきた低金利政策の最大の受益者は、日本国政府そのものと言ってもよいだろう*。

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2008年7月 2日 (水)

相対価格と経済数量(1.1)

 このところ、原油価格が暴騰している。*

 こういったとき思い出すのが、我々が中学校・高校の社会科で習い覚えた「需要(曲線)と供給(曲線)の等しいところ(交点)で、市場価格と需給量が決定する」というおとぎ話である。

 しかし、資本主義経済の中で、稼ぎ、喰い、あるいは、子どもを育てている我々にとって、肝心なことは、己の収入がどうなるか、だろう。だから、そういうことへの見通しを少しでももたらしてくれる「経済の学」でなければ、存在価値ゼロと言ってよい。その意味で、経済への基本的見方を誤らせるとしか表現の仕様のない、いわゆるミクロ経済学は、市井の民にとって無用の長物である。

 経済を見る上で大事なことは、価格、それも相対価格が動いたとき、誰が得をして、誰が損をするのか、ということへの洞察だ。

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2008年5月 4日 (日)

太閤検地の再検討

 少し前に、石高制について四回ばかり記事(下段・注参照)を書いた。今回気になり、その記事を自分で読み直したら、幾分おかしいことに気付いたので、再述する。

 中身は、池上裕子『織豊政権と江戸幕府』(日本の歴史15)、講談社(2002年)、第五章、「1 太閤検地の再検討」、pp.172-190、のリライトである。

 同著のその節における池上氏の本来の意図は、これまで、戦後マルクス主義経済史学の強い影響力の下で、結果的に日本近世史上、特権視されてきた‘太閤検 地’を、もう少し長いスパンで見直すことで、中世、または戦国期からの連続性の中で‘太閤検地’を妥当に評価し直そうというものである。しかし、私の目的 は、その内の‘石高制とはなにか’という部分に限定される。ただ、その限定した目的だけでも、事が少々ややこしいので、頭の整理には役立つと思う。

■斗代、ほかの再定義

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2008年4月12日 (土)

開発援助“帝国主義”(さらに少し追記)

 あるコメントへのresから敷衍して記事化しておくことにする。

 これまで、開発途上国への援助は、主に旧宗主国を主体として、アフリカなら西欧諸国、中南米ならアメリカ合衆国、アジアなら日本、という具合に分担化されてきた。

 この動きは、第二次大戦終了後から延々と続いてきた。「延々と続いてきた」ということは、開発援助は大抵失敗していた、ということに等しい。なぜなら、「開発」援助がうまく行っているなら、途中で経済的に自立し、先進国からの援助なしで自立できているはずだからである。

■なぜ、先進国の開発援助は失敗しつづけたのか

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2008年3月29日 (土)

日本初期近代(徳川期)における「勤勉革命 Industrious Revolution 」(1)

■「勤勉革命 Industrious Revolution 」とはなにか

「江戸時代の農業生産力の上昇は、間作・裏作や二毛作による土地利用頻度の高度化という点ではイングランドに似ていたが、経営規模の縮小、家畜利用の減少という点では正反対の方向に向かっていた。労働節約的ではなく、牛馬の代わりに家族労働力を惜しみなく注ぎ込む、労働集約的な発展経路を進んだのである。
 このような変化を速水融氏は「勤勉革命」(Industrious Revolution)と呼ぶ。密植に耐える水稲農耕が土地節約的農業を可能にしていたという生態学的な条件を前提にして、人口密度が高く、耕地・人口比率が低かったことが、土地利用の高度化と投下労働量の増大からなる労働集約的農業を生んだのである。産業革命 (Industrial revolurtion)の労働節約的な性格と対比させて「勤勉」を強調したのであるが、その内実は、長時間の激しい労働であった。」
鬼頭宏『文明としての江戸システム』日本の歴史19、講談社(2002年)、p.275

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2008年3月 8日 (土)

「石高制」ってなに?(4・結語)

 私は、戦国期の最新通史として池上裕子氏の著作を読んだのだが、前回記事の箇所を読んで仰天してしまった。確かに、池上氏自身が少数派だとは書いている が、事はかつての「太閤検地論争」を含めて、太閤検地や徳川期の「石高」の前提をすべて根底から揺るがすものだ。私が注目評価する、日本近世経済史研究を 一新した Hayami school の研究蓄積でさえその例外ではない。彼等も「石高」を生産高と認識しているのだから。

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2008年3月 7日 (金)

「石高制」ってなに?(3)

 身辺多忙で記事を書くのが間遠くなってしまっている。

 池上裕子氏(成蹊大)の議論はこうである。

 戦国期から太閤検地期における史料での斗代の使用法をみると、

 斗代 = 本年貢 + 加地子(一種の小作料)

となっている。「斗代」を「年貢」と表記している史料もある。こういうことが一般的になると、これらを負担する側でも、取る側でも、両方込みで、「年貢」「斗代」とみる意識が成立する。

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2008年3月 3日 (月)

「石高制」ってなに?(2)

「石高制」ってなに?(2)

 いま、自分でもあまり明確になっていない事を書こうとしている。したがって、論にぶれや乱れがあると思うので、そのように感じた方がいらしたら、ご指摘いただければと思う。

1)用語の整理
 まず、用語の整理からしておこう。以下、語義はすべて、『岩波日本史辞典』(1999年、第1刷)からのものである。

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2008年2月28日 (木)

「石高制」ってなに?

古井戸さんのコメントがらみから。

>米自体が貨幣の役割

 はい、そうだと思います。そしてこれには重要な理論的問題が秘められています。

 かつて、カール・ポランニー(Karl Polanyi)は、貨幣を論じて、多目的貨幣 all purpose money と、特定目的貨幣 special purpose money という概念を提出*しました。

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武士と変動相場制(2)

古井戸さん、コメントありがとうございます。

>米自体が貨幣の役割

これは大事な論点なので、別記事にします。

>米で給料をもらう武士が相場、と睨めっこ、して何ができるのでしょうか?

これについては、私が語るより、参考文献から引用しましょう。

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2008年2月22日 (金)

武士と変動相場制

 「士族の商法」という言葉がある。たいていは揶揄として使われる。しかし、これは本当なのだろうか。

 徳川期、武士の禄は、米で支給された。その一方で、武士を取り囲む経済生活は、実質的に貨幣経済である。したがって、武士も支給された米を換金しなければならない。しかし、現代の米価と異なり、当時の米価は相場品である。その上、幣制が、金遣い、銀遣い、銭使いと複雑で、取引のオーダーによって、支払い貨幣は異なっていたのだ、金⇔銀⇔銭、にもそれぞれ相場がたち、日々変っていた。

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2008年2月 1日 (金)

経済学部史学 vs. 文学部史学

 前稿の問題は、所属学部の違いにも起因する可能性はある。

 そもそも速水融自身が、慶応大学経済学部で野村兼太郎の薫陶を受けており、経済学、歴史学、史料学の修練を経た研究者であった。従って当然の流れとして Hayami school は経済学部をその根城とすることになる。

 それに対して従来の、文献学的という意味での実証主義的日本史学は、元来が文学部を基盤として学界を作ってきている。

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2008年1月31日 (木)

歴史人口学と日本史学の微妙な関係(ver1.2)

 いま、この列島における、近世国制史と近世人口史の融合を目論んでいる。

 そこで1点気になることがある。それは、吉川弘文館から出版されるような、従来型の文献に基づくいわゆる実証史学系統の日本史学と、宗門改帳などから数量的データを構成・抽出し、それを統計学の手法や人口学の分野で鍛えられてきた概念を駆使して、斬新な近世像を次々と提出し、一定の地歩を知的世界に築きつつある歴史人口学の関係である。

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2007年11月11日 (日)

近世初期における人的資源としての牢人(浪人)問題

 藤原惺窩(1561 - 1619)、林羅山(1583 - 1657)、山崎闇斎(1618 - 1682)。さて、この徳川思想史初期のビッグネームたちの共通点は何か。

1)いずれも牢人(惺窩は没落貴族)の子弟であること。

2)いずれも人生の活路を求めて禅寺へ出され、そこで朱子学と出会い、思想的な開眼をしていったこと。

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2007年7月 9日 (月)

現代日本のミリオネア(millionaire)、500万人に。

 以下、ニュースから。

日本の「富裕層」、147万人に…金融資産100万ドル超
7月7日20時10分配信 読売新聞
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 100万ドル(約1億2300万円)以上の金融資産を持つ日本国内の「富裕層」が、昨年1年間で5・1%増加し、147万人となったことが、米証券大手のメリルリンチなどが実施した調査でわかった。

 増加率は、前年(4・7%)を上回った。富裕層は企業経営者が多いとみられ、同社は「戦後最大の景気拡大が続き、ビジネス環境が好転したことが要因ではないか」と分析している。

 世界全体の富裕層は、新興国の急成長を背景に8・3%増えて950万人に達した。日本の富裕層はこのうち15・5%を占め、米国に次いで世界2位となっている。

最終更新:7月7日20時10分
読売新聞
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 上記の情報源は、下記。

第11 回 ワールド・ウェルス・レポート
(PDFファイル)

 当blog記事の「500万人」の根拠は、ミリオネアたちの世帯が平均3.5人だとすると、147万人(世帯)×3.5人=514万人、になるからである。

 一応、マーケッティング会社などでは、ミリオネアたちの職業とは、以下のような人々を指すらしい。ハァ~、っと(歎息)。

社長、優良企業役員、医者・歯科医、弁護士、公認会計士、大学教授、マンションオーナー、議員、著名人

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2007年6月 8日 (金)

賞典禄、あるいは「革命家」のボーナス(2)

                                                                                                                                                                                                                                                                         
 

石高

 
 

宮、公家

 
 

薩摩

 
 

長州

 
 

土佐

 
 

佐賀

 
 

 
 

100000

 
 

 

 
 

島津久光・忠義

 
 

毛利敬親

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

40000

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

山内豊信

 
 

 

 
 

 

 
 

20000

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

鍋島直大

 
 

 

 
 

5000

 
 

三条実美   岩倉具視

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

2000

 
 

 

 
 

西郷隆盛

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

1800

 
 

 

 
 

大久保利通

 
 

木戸孝之広沢真臣

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

1500

 
 

嘉彰親王 中山忠能

 
 

 

 
 

大村益次郎

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

1200

 
 

熾仁親王

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

1000

 
 

 

 
 

吉井友実

 
 

 

 
 

板垣退助後藤象二郎

 
 

 

 
 

 

 
 

800

 
 

沢宣嘉

 
 

大山綱良

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

由利公正(福井)

 
 

700

 
 

 

 
 

黒田清隆

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

600

 
 

 

 
 

 

 
 

前原一誠山県有朋山田彰義 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

300

 
 

西園寺公望  四条隆うた  柳原前光

 
 

西郷従道

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

250

 
 

清水谷公考

 
 

 

 
 

桂太郎

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

200

 
 

 

 
 

桐野利秋

 
 

 

 
 

岩村高俊

 
 

 

 
 

船越衛(広島)

 
 

150

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

中牟田倉之助

 
 

 

 
 

曽我祐準(福岡) 

 
 

100

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

土方久元

 
 

江藤新平 島義勇

 
 

 

 
 

60

 
 

 

 
 

 

 
 

 

 
 

谷干城

 
 

 

 
 

 

 

 利用した秦氏の表を少し組み替えたのだが、意外なことに、この組み換え後の表から、ある種の規則性が伺われる。左上から右下へ、斜めの序列がありそうだ。ま、褒賞なので、不平が出ないように、何らかのルールがないと当然まずいのかもしれないが。この件、要検討とする。

出典 『明治史要』付表、東京大学出版会(1966年)
ただし、秦郁彦『統帥権と帝国陸海軍の時代』平凡社選書(2006年)、p.104より孫引き

*参照  賞典禄、あるいは「革命家」のボーナス(1)

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2007年6月 4日 (月)

国民生活基礎調査(表を修正6/5)

 厚生労働省から、「平成18年 国民生活基礎調査の概況」が2007年5月30日に発表されている。詳細は最下部のリンクをたどられたい。

 この調査結果を「平成17年 国民生活基礎調査の概況」と比較してみよう。視点を絞ってまとめると以下のようになる。


                                         
 

 

 
 

平均値

 
 

中央値

 
 

最頻値

 
 

100-400万

 
 

500-1000万

 
 

1000万以上 

 
 

H.17

 
 

580.4

 
 

462

 
 

300-400

 
 

36.2%

 
 

31.1%

 
 

15.1%

 
 

H.18

 
 

563.8

 
 

458

 
 

100-200

 
 

37.4%

 
 

33.1%

 
 

12.8%

 

特徴的なことは、所得上位世帯階級から中位世帯階級へ、また、中位世帯階級から下位世帯階級へ、ズルっとすべり落ちている人々が増えていることか。これは一年遅れのデータなので、タイムラグのため、昨年のデータではないので注意が必要だが、貧窮化が昂進している可能性は高い。

参照サイト

1)平成18年 国民生活基礎調査の概況
(平成17年1月1日から12月31日までの1年間の所得)

2)平成17年 国民生活基礎調査の概況
(平成16年1月1日から12月31日までの1年間の所得) 

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2007年3月30日 (金)

牧原憲夫『民権と憲法―シリーズ日本近現代史〈2〉』岩波新書(2006年)

 興味深く読んだ。その意味で買って損はない。800円弱の支出は、倹(つま)しい昼食代なら2日から1.6日分か。

①肯定的評価。明治前期の史実に関するリソースとして価値は高い。というより、大量の、気付きにくい、ただし重要な情報満載である。学界の研究業績への目配りの広さには感心する。読者はこの本のどこかしらに、己の興味関心を惹く話題を眼にすることができる。私にしても、幾つもの再発見をさせてもらった。

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