マンスフィールド短編集(新潮文庫1979)
この短編中に、「パーカーおばあさんの人生」という一編があります。私はこの小品を読むと決まって最後は涙でテキストが読めなくります(鼻水も出てティッシュで取るのが忙しい)。
老女とそれにまとわりつく小さい孫息子。そのやりとりの何とかわいらしいこと。子を持つことなく生涯を終えた作家になぜこんな描写ができるのか。奇跡としか思えません。そして「これが人生か」という結末。この作家を私は阿部昭とともに「素晴らしい」と思いますし、「・・・、その苦労をすることが出來るものにとっては文学はさうした作品以外のどのようなものでもない筈である。」という、吉田健一の中島敦評をそのままマンスフィールドに捧げたいと思います。作家ってなんて不思議な生き物なんでしょう。
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