佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔1〕
表題作の「バスラーの白い空から」で、筆者が出会うビジネスマンの中に、ふと自分と同じ旧海軍軍人のにおい嗅ぎ取る場面があります。お互いにそれを感じ取りながらも、あえて互いに触れずまた別れていきます。そこに、戦争に青春を賭けざるを得なかった世代の国を超えた共感と痛みが、控えめだが動かざるものとして込められていました。痛切さも自分の存在の一部であることを改めて知らされる場面です。
皆さん、是非、ご一読を。
佐野英二郎『バスラーの白い空から』青土社(2019/03/09)
〔参照〕
佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔2〕:本に溺れたい
佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔3〕: 本に溺れたい
| 固定リンク
「文学(literature)」カテゴリの記事
- 関 曠野「知は遅れて到来する ―ドラマにおける時間について―」(1985年5月)/Seki Hirono, Knowledge Comes Late, On Time in Drama, 1985(2024.07.20)
- 徂徠における規範と自我 対談 尾藤正英×日野龍夫(1974年11月8日)/Norms and Ego in the Thought of Ogyu Sorai [荻生徂徠](2023.08.30)
- What is 'lucid writing'?/ Yukio Mishima (1959)(2023.08.06)
- 「明晰な文章」とはなにか/三島由紀夫(1959年)(2023.08.06)
- 暑き日を海にいれたり最上川(芭蕉、1689年)(2023.08.02)
「書評・紹介(book review)」カテゴリの記事
- ドアを閉じる学問とドアを開く学問/ The study of closing doors and the study of opening doors(2024.10.27)
- 柳田国男「實驗の史學」昭和十年十二月、日本民俗學研究/ Yanagida Kunio, Experimental historiography, 1935(2024.10.20)
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理, 解説:張 彧暋〔書評③〕(2024.09.23)
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理, 解説:張 彧暋〔書評②〕(2024.09.18)
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理,解説:張 彧暋〔書評①〕(2024.09.16)
「戦争 (war)」カテゴリの記事
- 薔薇戦争と中世イングランドのメリトクラシー/The War of the Roses and the Meritocracy of Medieval England(2024.11.28)
- 対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案(昭和十六年十一月十五日/大本営政府連絡会議決定)/Japan's Plan to Promote the End of the War against the U.S., Britain, the Netherlands, and Chiang Kai-shek 〔November 15, 1941〕(2024.06.02)
- イスラエルの戦争犯罪は続く・・・/ Israel’s war crimes will continue.(2023.11.29)
- いじめ、紅衛兵、内務班(2022.09.30)
- For what purpose does our country go to war?, by Akiko Yosano, 1918(2022.05.19)
「佐野英二郎」カテゴリの記事
- 佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔3〕(2021.12.23)
- 「言葉の力」を思い出させるエッセイ(2007.04.03)
- 美しき“青 azur”の、フランス・アニメ(2006.11.12)
- 浅い眠り(2005.10.27)
- 佐野英二郎『バスラーの白い空から』1992年〔2〕(2005.10.06)
コメント