日米安保=日英同盟?
日米安保条約の廃棄を検討する際、歴史的な先行事例として重要なのは、日英同盟である。
日英同盟が廃棄されたのは1923年(大正12年)。8年後の1931年には、関東軍の石原・板垣コンビがやらかした満州事変を皮切りに、あれよあれよという間に、中国と全面戦争化し、あまつさえ、廃棄18年後の1941年には、米国との戦火を交えるところまでエスカレートした。
日英同盟廃棄後の大日本帝国には、どう考えても国家理性らしきものがあったと思えない。国家非理性(クレージー)である。象徴的なのは、国際連盟脱退。
今の小泉氏と外務省がのどから手が出るほど欲しい常任理事国のポストを1920年の連盟発足当初から確保し、事務次長ポストも二度ゲット、常設下部機関である国際司法裁判所に判事も何人か送り込み、この旧国連を舞台に国際的影響力をそれなりに行使していた。
あー、それなのにそれなのに、1933年満州事変処理を不満として自分から脱退してしまうのだ。アホかい、って!
明治クーデタ以後、日本の権力者たちは、国際関係を「弱肉強食」ととらえていたから、常に自分を支持し、日本の対外的国家行動をナビゲートしてくれる〈力〉を求めていた。それが日英同盟の大日本帝国にとっての《主観的》意味。つまり、主権国家としてのアイデンティティの代替物に等しかったわけだ。
だから、日英同盟という(日本にとっての)国際ナビがなくなると、糸の切れた凧のように、支離滅裂な行動を示すことになる。
現代に生きる我々が教訓としなければならないのは、自らの国家としてのアイデンティティをよその強国に負わせるのでなく、〈力〉以外の外交指針もつことであろう。それが、国際社会秩序における〈力から法への発展〉への貢献なのだ。
現代における、主権国家間の秩序は、ひとえに、〈法の支配〉実現にかかっているわけだから、日本の国際的アイデンティティはその〈法の支配〉にいかに、どのように貢献できるか、で図るしかない。
にも関わらず、国際法違反の常習犯、ならず者国家である米国に、金魚の糞よろしくくっついて歩くとはどういうことか。これこそ、《人の世を統(す)べるのは力 power のみ》ということの現れ以外に何ものでもない。これじゃぁ、国際社会から信用も、尊敬もされないよなぁ。特に弱小国から。国連安保理常任理事国入りを大国だけでなく、小国からも反対されるのは無理もない。
このように、日本の主権国家としての対外パーセプションを明確に切り替えておかないと、日英同盟後の国家的漂流の轍をまた踏む危険性があることは、肝に銘じておいたほうがよい。
憶測すれば、日本周辺のたくさんの小国は、日米安保の継続を密かに念じているかもしれない。なぜなら、米国という調教師の手から離れると、日本という野獣国家が暴れだすのではないか、と懸念している可能性があるからだ。
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コメント
そうですよね。自分の手を汚さないだけ、よけいたちが悪いと思われそう。「平和憲法」って、鰯の頭や護符じゃぁないんだから、一生懸命それにお祈りしたってだめなんだよね。
投稿: renqing | 2006年1月 4日 (水) 08時34分
>米国という調教師の手から離れると、日本という野獣国家が暴れだすのではないか、と懸念している可能性があるからだ。
ええ。アジア諸国は日本の護憲派が(海外使節がリップサービスで持ち上げることもあるので?)信じるほどには、「平和憲法」の神通力を信じてないと思いますよ。とくに「平和憲法」下で日本から飛んでくる飛行機に空爆されたイラク、アフガニスタン、北朝鮮(韓国もか)、ベトナムは。
投稿: 松本和志 | 2006年1月 4日 (水) 07時57分