和辻哲郎の明治維新批判
下記の本に、和辻の明治維新批判エッセイがあります。軽いものですが、核心をついた批判だと思います。
講座現代倫理〈第11巻〉転換期の倫理思想(日本) (1959年)
筑摩書房刊、所収
和辻哲郎 「日本古来の伝統と明治維新の歪曲について」
1.紀元節の問題
2.宮城の問題
1.の文中に、
”しかし武力を以て幕府を倒した「武士」たちは、”
とわざわざ括弧書きで「武士」と憎憎しげに書いてます。
同書の最後に、
「共同討議日本における危機意識の特質
」
竹内好、石母田正、鶴見俊輔、中村光夫、丸山真男
という、ご近所座談会が掲載されているのも一興です。
そこで、丸山は、幕末明治初年は客観的には植民地化の危機はなかったが、明治20年代(1880年代)になって現実化してきた、と考えているようです。その点、石母田正も、日本の植民地化の危機は明治維新過ぎてから、と発言してます。
和辻は、お公家さんが好きで、武士が嫌い、丸山は、武士が好きで、和辻を毛嫌いしていたようですので、好対照といえます。
〔参照〕
和辻哲郎「日本古来の伝統と明治維新の歪曲について」(1)
和辻哲郎「日本古来の伝統と明治維新の歪曲について」(2)
〔註〕下記も参照されたし。
《祀る神》vs.《祀られる神》
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