「良き古き法」gutes altes Recht
現代社会は、整備された合理的な法秩序なしでは、一日たりとも動いていけない。当然、19世紀後半からこの方、懸命に近代化を突き進んできた日本社会もその例外ではない。
では、近代日本が受け入れた西欧の「法」とは、一体全体どのようなものなのか。その本質の一端を示す例をあげてみよう。「法」がなぜ、治者と被治者の上位にあるとみなせるのか、そこが大きなポイントだ。以下、《》内はすべて引用。
《市民共同体と都市領主の対決、市民共同体内部における抗争、そのほか中世に見られる無数のこの種の闘争は、近代的意味における反乱または革命であったのではなく、真の法ないし、法と信じたものをめざす闘争であり、不法に対する抵抗であった。》
オットー・ブルンナー『ヨーロッパ-その歴史と精神』岩波書店1974、p.103
《・・・、法が原理的に支配者と被支配者の上にあり、「神と法」、具体的な法と同じものである「正義」、を引き合いに出すことができる、という一つの観念を前提としている。》同上、p.104
《人々は伝統、すなわち伝わってきたものそれ自体、をよりどころとしたのではなくて、たとえば、「良き古き法」に依拠したのであり、これを「悪い慣習」と区別していた。古きものなるがゆえに良きものとされたわけではなく、良きものと見られるがゆえに古きものとされたのである。》同上、p.104
| 固定リンク
「書評・紹介(book review)」カテゴリの記事
- ドアを閉じる学問とドアを開く学問/ The study of closing doors and the study of opening doors(2024.10.27)
- 柳田国男「實驗の史學」昭和十年十二月、日本民俗學研究/ Yanagida Kunio, Experimental historiography, 1935(2024.10.20)
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理, 解説:張 彧暋〔書評③〕(2024.09.23)
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理, 解説:張 彧暋〔書評②〕(2024.09.18)
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理,解説:張 彧暋〔書評①〕(2024.09.16)
「思想史(history of ideas)」カテゴリの記事
- 「資本主義」の歴史的起源/ The Historical Origins of “Capitalism”(2024.11.22)
- 「ナショナリズム」の起源/ The Origin of “Nationalism”(2024.11.21)
- 20世紀におけるドイツ「概念史」とアメリカ「観念史」の思想史的比較 / A historical comparison of the German “Begriffsgeschichte” and American “History of Ideas”of the 20th century(2024.11.19)
- 比較思想からみた「原罪」(peccatum originale/original sin)| Original Sin from the Perspective of Comparative Thought(2024.10.31)
- Michael Oakeshott's Review(1949), O.S.Wauchope, Deviation into Sense, 1948(2024.08.17)
「法哲学・法理論/jurisprudence Rechtsphilosophie」カテゴリの記事
- Universal Declaration of Human Rights (1948)/世界人権宣言(2024.11.29)
- 「法の支配」か「法による支配」か?/ Rule of Law or Rule by Law?(2024.08.19)
- 「獲得と所有権」志向から「ケアと義務」志向への転換のために/For a shift from an “acquisition and property” to a “care and obligation”(2024.08.11)
- 自由と尊厳を持つのは、よく笑い、よく泣く者のことである(2)/ Freiheit und Würde haben diejenigen, die oft lachen und oft weinen (2)(2023.06.06)
- 自由と尊厳を持つのは、よく笑い、よく泣く者のことである(1)/ To have freedom and dignity is to be one who laughs often and cries often (1)(2023.06.05)
コメント