朝鮮人を甘やかすな
11月17日に、国連総会第3委員会は、北朝鮮による「外国人拉致」などの人権侵害を非難した決議案を賛成多数で採択した。共同提案者はEU加盟国や日米など計45カ国である。このとき、六ヶ国協議に直面している中国、韓国は投票を棄権した。
私の記憶に間違いがなければ、この日の夜、フジテレビの23:30から放送している「LIVE2005 ニュースJAPAN」なる番組で、キャスターの松方某が、棄権した中国、韓国を指して、
「北朝鮮を甘やかす中国、韓国」
と発言していた。
この、曲がりなりにも独立した主権国家を「甘やかす」と言い放つ感覚をどう表現したらよいか私は困っていた。そこに、天佑というべきか:-)、同じようなことを高言している人物について、あるMLで知る機会があった。
1941年6月、当時の司法大臣・柳川平助と記者団との会見が、閣議後設けられた。結果的に、記者会見というより大臣談話のようなものであったが、その内容のあまりの露骨さにどの新聞社も記事にしていない。以下がその発言である。
近衛内閣の治安対策についての質疑応答。
(引用開始)
--------------------------------------------
「戦時下の治安対策は完璧だ。まだ共産主義に同調する輩と不良外人がいるが、それも間もなく一網打尽できるだろう。問題なのは欧米かぶれの自由主義者と不良外人だが、とくに不逞鮮人だ。支那人は、天道主義で諦めが早いし、印度人は来世の極楽浄土を夢みて温順しい。問題は不逞鮮人だ。朝鮮人は昔から外国人にたびたび征服されているせいでずるくなり、なかなか服従しない。朝鮮人は表面上服従しているかのように装うが内面では抵抗している。」
「それじゃ、その不逞鮮人の対策は-」
「わしは、ヒットラー総統のユダヤ人に対する政策と同じように、不逞鮮人をことごとく、どこかの島に隔離してみな去勢してしまった方がよいと思っている。そうすれば、不逞鮮人はいなくなるし、これからも出てこないだろう。これから、大東亜10億の民を統治して行かなければならない皇国日本が、たかだか二千万そこそこの 朝鮮人をあまやかす ことなんかないじゃないか。それで、わしはまず朝鮮人の思想犯を一人残らず去勢してしまうのが一番よいと思っている。ヒットラー総統は、すでにユダヤ人の去勢を実行しているそうではないか。優生学上からいっても、劣等民族は滅ぼされるべきもので、西では独伊の両民族、東ではわが大和民族が他民族を統治することは天の定め*でもあるんだよ。」
(三行省略)
日本の司法大臣柳川平助は、自分の前に坐っている内閣担当記者がまさか「不逞鮮人」であることに思いも寄らなかったであろうし、日本人記者たちは柳川の言葉に一瞬びっくりした表情を示したが、かれらは柳川がファッシスト軍人だからそれ位のことは当然言うだろうと思ったのか、それ以上質問しなかった。また、そのようなことを記事に書くことなど、できるものではなかった。
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(引用終わり)
出典
『朝鮮人・私の記録 体験的日本植民史朝鮮解放までの三十六年』
高峻石 著、同成社、1971年、p.185-186、の引用。
著者は、日本人と偽って、中外商業新聞社(=現、日本経済新聞社)に昭和15年入社する。最初、地方局に配属されるが、ほどなくして編集局政治部記者となり、初め逓信省担当であったが、すぐ内閣担当記者にまわる。自動的に、首相官邸内、内閣記者会(朝日、毎日、中外商業で構成)メンバーとして、大臣たちから直接、取材可能となる。その折の、貴重な(-:成果が↑である。
ま、フジテレビ・ニュースキャスター、松方某は、さしずめこの南京事件当時の司令官の一人でもある、柳川平助陸軍中将となにほどか共通点はあるということなのだろう。
*引用者注 米国の、Manifest Destiny(明白なる運命)、を彷彿とさせる。詳しくは、
「なぜ米国は平然と他国を侵略できるか?/ Why can the United States openly invade other countries?(追記20200630): 本に溺れたい」
を参照されたし。
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コメント
嗚咽は、「おえつ」と読み、名詞で、「声を詰まらせて泣くこと。むせび泣き。」のことで、「嗚咽する声がもれる」という風に使います。
また、「 * * が走る」なら、通常なら、「虫酸(虫唾)」(むしず、むしづ)、を使います。意味は「胸のむかむかしたときに、口に逆流する酸っぱい胃液。」のことで、「 虫唾が走る」といえば、「吐き気がするほど不快でたまらない。」ことを評言する際に使用します。
ということで、「脱亜入欧には嗚咽が走る」の意味がうまく了解できませんでした。
また、「自国の多様な意見」が存在するなら、「独自の価値観を持」てずに、《多様な価値観》を持つことが論理的に導き出されるように考えざるを得ませんので、「自国の多様な意見の下、独自の価値観を持つ」の文意も、私の頭では理解できませんでした。恐縮ですが、コメントは控えさせて戴きます。
なお、「何で日本人が亜細亜人なのだ 誰が決めたんだ」について、遅ればせながらコメントします。
アジアは、古くは,アッシリアの碑文に見える asu と erebの対応,すなわち〈日いづる所〉(東)と〈日没する所〉(西)の対応があり,この asu が asia へ転訛したといわれます。そして、これがギリシアに伝わり、Asia と Europa となります。ただし、エウローパは,ホメロスのアポロン賛歌(前9世紀)のなかでは,当時の彼らの世界であるペロポネソス半島とエーゲ諸島のみを指していますので、もう一つのアジアのほうは,それ以外の東のほうを広く,漠然と指していたとみられます。東の限界が,ペルシアまでかインドまでかは不明*ですから、もともと地中海文明の人々が己をエウローパと呼び、己の東方向を単にアジアと呼んだにすぎません。
この観念がヨーロッパに入り、マテオ・リッチが17世紀初頭、世界地図を中国語に翻訳した折、《亜細亜》なる言葉が初めて作られました。ですから、「何で日本人が亜細亜人なのだ 誰が決めたんだ」に対する答えとしては、古代ギリシア人が日出る地域としてアジア概念を創出し、それを近世ヨーロッパ人の宣教師が漢語化したのを、自称として《アジア人》が使用した、というのが今わかる範囲での回答です。
*平凡社世界大百科事典(1998)、アジアの項より。
投稿: renqing | 2006年12月 8日 (金) 01時16分
最近の中韓蔑視は良い薬と思う反面、麻生の様な属米左派が利用すれば簡単に支持を得られるという危険性もはらんでいると思います。特に脱亜入欧には嗚咽が走る、東洋人が世界を支配した事を知らないのだろうか?白人上気の馬鹿はモンゴル帝国の歴史でも知ってアジア人ではなく東洋人という自覚を持って欲しいと思う。自分は大東亜戦争を聖戦と思うしアメリカナイズされた者を嫌悪するし虐殺や慰安婦は大嘘と知っている、日本には何所の国にも依らぬ「誠」の保守の国になって欲しいと思う。それでこそ東洋の真骨頂に成れるのではないでしょうか?日本は民族国家ですよ、自覚を持って欲しい。世界基準など無用、自国の多様な意見の下、独自の価値観を持つ「異常」な国であって欲しいです。 以上チンギスオタの保守論でした かしこ
投稿: たかま | 2006年12月 7日 (木) 15時07分
何で日本人が亜細亜人なのだ
誰が決めたんだ
投稿: 666 | 2005年12月27日 (火) 23時30分
我々は朝鮮のために
また戦争をするんでしょうから
岩波戦争といわれるかな
何処とやるって
アメリカしかないんじゃない
投稿: 666 | 2005年12月27日 (火) 23時25分
ほっとけば崩壊するのだから
アー、でもバカな日本人は
第二の祖国とか言って
また救済するんだな
投稿: 666 | 2005年12月27日 (火) 05時25分
差別発言を平気でするような、不逞日本人の、“政治家”、“ニュース・キャスター”を《甘やかしている》のは、わが大日本国民であるところが、なんとも忸怩たるものがあります。
投稿: renqing | 2005年11月29日 (火) 13時22分
renqingさんTBありがとうございます。
最近ココログが夜重たいので、TBをお返しできません。もう少し早い時間に帰れたときに再度チャレンジしてみます。
外国人を蔑視すればするほど、自分の見識の無さを露呈しているというか、人間性の貧しさを曝け出していてみっともないだけだということに気付かないのかもしれません。甘えているのは、そういった妄言を恥ずかしげもなく言える人物ではないかと思ったりします。
投稿: miyau | 2005年11月29日 (火) 00時05分
しかし まだ アジア蔑視が進んいるのでしょうか。どこから見たって 日本人はアジア人だし。根本的に 戦争の反省がなさ過ぎるのでしょうか。自虐史観なんてとんでもない倒錯だのに それが解らないそういうと おまえは 新中国かって馬鹿いうしね。新中国も新アメリカもない。戦争そのものが もはや悪なのだと言うことを根本にすえて ことに当たる覚悟の問題と 単純に考えないとそれこそ 未来が開けない。と思うだけ。新しい教科書じゃないが。ほんと 国家は教育から手をつけようと余念がない。するとお前が戦後教育で平和ボケだ。といわれるだろうか。こまった。
投稿: かものはし | 2005年11月28日 (月) 15時48分
こんにちは。
いつもTBありがとうございます。興味深いテーマですね。差別は5世紀末ごろ既に発生(諸蛮扱い)してたと思いますが、文化発信または伝達者としての敬意・近親感がすくなくとも福沢諭吉の「脱亜論」頃まではあったと思います。また、戦前まで漢文が中学生の必修科目で、それを通じて儒教(孔子)や漢詩を学び杜甫・李白などに親しみました。明治生まれの男性で、教養人といわれる人なら、自作の漢詩をひねることなどあたりまえでした。
最近の極端な嫌中・韓情報の氾濫と、政治利用の傾向に歯止めをかける。これは最大の課題ですね。
投稿: ましま | 2005年11月28日 (月) 09時56分
岸田秀さんは『ものぐさ精神分析』で、列島住民が欧米列強からの圧迫感から、抑圧移譲にはしった=東アジア蔑視を共有化した。っていう見解を展開しています。■「国民」という実体ができあがるのは、どうみても明治中期以降だから、モデルとしてはズサンですけど、総論的には魅力的。
投稿: ハラナ・タカマサ | 2005年11月28日 (月) 07時15分
ハラナ・タカマサ 様
この、韓国・朝鮮人+中国人、を侮蔑しないと自我が保てない、という、さもしくも、物悲しい日本人の心性は、いったいどこからくるんでしょうね。日本人の対中国観の正から負の逆転は、すでに徳川期に始まっていることが渡辺浩氏によって指摘されています。素直に考えれば、長い歴史における文明的劣等感の重圧が、パックス・トクガワナ期に、パチンと一気に弾けたということなんだと思いますが。近いうちに記事にしてみます。
投稿: renqing | 2005年11月28日 (月) 01時13分
トラックバック/コメントありがとうございました。
小熊英二さんの『〈日本人〉の境界』をもう一度よみかえそうとおもいました。
投稿: ハラナ・タカマサ | 2005年11月27日 (日) 21時21分