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2005年11月26日 (土)

なぜ米国は平然と他国を侵略できるか?/ Why can the U.S. invade other countries with impunity?(link切れ補正:20230315)

 その理由の一端が、‘Manifest Destiny’ という言葉にあります。

 これは、John O'Sullivan(1813‐95)なるジャーナリストが、《United States Magazine and Democratic Review》誌の1845年7・8月号に発表した《Annexation 併合》と題する論文で使った語です。以下、その一節を引用します。ただし、原文はダラダラ、延々と1文を6行に渡って書いているため、引用は、Manifest Destiny が出てくる一部に限定します。

“our manifest destiny to overspread the continent allotted by Providence for the free development of our yearly multiplying millions.”

「年々増加する幾百万の我が同胞の自由の発展のために、神意によって与えられたこの大陸を我々が覆い尽くすという、我々の明白なる運命」

 この論文は、テキサス併合をサポートする論説ですが、実際はそれ以上に、当時の米国民を熱くしていた、西へのフロンティア膨張の熱狂を代弁し、倫理的に正当化したことが決定的に重要です。

 《現代のローマ帝国》を建設するのだということは米国の建国の父たちも意識していましたが、そこに庶民にも納得できる《言葉》をドンピシャで提供したのが Manifest Destiny だったわけです。この言葉の発明以降、米国の帝国主義(対内/対外ともに)を陰に陽に支えていく言葉となります。

ビッドル東インド艦隊司令長官(James Biddle)が、ペリー(Matthew Calbraith Perry)の黒船騒動の七年前、1846年7月19日(弘化3年閏5月26日)に浦賀に入港、浦賀奉行と通商条約を折衝したのも、この米国人の西漸運動の機運に乗じたものと言えます。(202006追記)

参考
1)平凡社世界大百科事典最新版「マニフェスト・デスティニー」の項。清水知久氏執筆。簡便で見通しのよい日本語文献。
2)“Manifest Destiny” From Wikipedia, the free encyclopedia.さすがに非常に詳しい。
3)John O'Sullivan, "Annexation," United States Magazine and Democratic Review 17, no.1 (July-August 1845): 5-10
まさに、その当該資料。第一次文献。(link切れを補正しました:20230315)
1. John O’Sullivan Declares America’s Manifest Destiny, 1845 | The American Yawp Reader
2. Microsoft Word - O'Sullivan Annexation.doc - OSullivanAnnexation.pdf
4)当blog記事、朝鮮人を甘やかすな、も参照されたし。(2008.10.01追記)
5)参照⇒トランプは「覇権主義者」か?/ Is Trump a Hegemonist?: 本に溺れたい(20200630追記)

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