"Bon Appettit !"と「いただきます」
時々、拝見しに行く blogに「 Fixing A Hole」さんがある。そこに面白い記事があった。
実は、「いただきます」や「ごちそうさま」は、中国語にもない。食事の際、それを目の当りにした北京出身の中国女性は不思議な顔をしていた。
英語にもなさそうだ。
『これを英語で言えますか?―学校で教えてくれない身近な英単語』講談社インターナショナル(1999)
この本の導入部は、屋外の雪かきから戻った実家の兄に対して、何か労(ねぎら)いの言葉をかけようとした在日27年の米国人が、「ごくろうさま(日本語)」といえず、グッとことばに詰まってしまうエピソードから始まっている。で、その一部に、同じ「いただきます」問題が書いてある。
Fixing A Holeさんは、
「誰に向かって言っているのか、声をかける相手が誰なのか、その対象はどちらかというとあいまいである。」
と述べられているが、明らかに自己を含む「われわれ」だろう。すくなくとも「あなたたち」ではなさそうだ。
ただし、ここには「観念の考古学」を考える必要がある。ひょっとすると、この「いただきます」や「ごちそうさま」が、明治の「学制」発足時に、学校文化として権力者達によってでっち上げられたものである可能性もあるからだ。
「創造された歴史」、「創造された文化」を、伝統とか呼んで、思考停止の「呪術の園」(M.Weber)にはまり込む愚だけは避けたい。ただし、今のところ、私にはその evidence はないが。
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コメント
ハラナ・タカマサさん
徳川末期から明治中期にかけての《社会の紀律化》は、現代につながる根深い問題です。明治期に導入が図られた「工場」ですが、女工達が仕事中、歌いだしたりしていて、職長や工場長が困っている様子が、横山源之助『日本之下層社会』1899年(明治32)に描写されています。
投稿: renqing | 2006年4月10日 (月) 01時19分
■例の「起立・礼」の号令ですが、おそらく戦前のばあいは、教諭が指名した級長が指揮するように指導されていたんだとおもいます。でもって、教諭が礼をしているようにみえるのは、生徒への返礼であって、いまも軍隊や警察で維持されている敬礼の文脈ですね(笑)。だから、あの返礼は「会釈」だと。
■それが、戦後の学制改革で、学級委員は選挙にしなきゃいけないとか、当番制だ委員会だと、いわゆる自治的組織のマネごとがムリやり導入されたと。■そこで、もうおぼえていませんが、「起立・礼」の号令は、学級委員が交代でだすか、週番みたいな子がかけていたんでは?
■でもって、こういった、生活文化にねざさない、うすっぺらな制度文化は当然空洞化するし、「教師なんて、公務員で、おれたちのオヤや消費税で給料もらっている公僕じゃないか」なんて、「ナマイキ」な批判精神がめばえれば、当然崩壊すると(笑)。■でもって、木村先生のいう「士族の商法」よろしく権威主義にすがっていた教員層も、その空洞化・崩壊に、なすすべもなく したがったか、反動的に抵抗しているんでは?
■ちなみに、「いただきます」文化は、幼稚園や小学校のおやつ・昼食時間帯冒頭に、あの奇妙なイントネーションでもって、くりかえされていますが、あれも「かけごえ」文化の典型ですね。
投稿: ハラナ・タカマサ | 2006年4月 9日 (日) 15時22分
ハラナ・タカマサさん こちらこそ、ごぶさたです。
へんですよねぇ。江戸期の寺子屋で、寺子たちは、時代劇ドラマと異なって、てんでんばらばらの方向を向いて学んでいることは、既に実証されています。私はもっぱら、明治政府を疑ってますが。
投稿: renqing | 2006年4月 8日 (土) 05時15分
■ごぶさたしております。
■高校で公民科をご担当の、木村先生が、先日
「起立・礼・着席」はだれが命じているのか?
という文章をかいてらっしゃいます(http://blog.goo.ne.jp/kmasaji/e/3f03d511642c0fdb2f9040a72edcf7a7)。
■いわれてみれば、たしかに妙(笑)。
投稿: ハラナ・タカマサ | 2006年4月 7日 (金) 19時01分