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2006年6月28日 (水)

勝ちにまさかの勝ちあり、負けにまさかの負けなし(3)

 これ(=風刺のこと。renqing註)に反して、ユーモアは人間生活の内部における潤滑油のようなものであります。それも緊張に際して行動の自由を奪われる人間の窮屈な神経を解きほぐし、生活上の行動に対して自由な楽な気分にしてはげますものであります。ですから、イギリス人は戦場において厳しい戦闘のさなかにもユーモアの精神を発揮します。ユーモアと冷静さと、男性的勇気とは、いつも車の両輪のように相伴うもので、ユーモアとは理知のもっともなごやかな形式なのであります。ドイツ人はいかにも男性的尚武の国民として知られていますが、ユーモアの感覚の欠如している点で、男性的特質の大事なものを一つ欠いているということができましょう。
三島由紀夫 『文章読本』 中公文庫(1995) 、p.219

 おそらく、サッカー日本代表チーム、スタッフ、そして何より、眦(まなじり)を上げて、「絶対に負けられない」と絶叫する、知性のかけらもないメ ディアに、俄(にわ)か愛国者たち。彼らにもっとも欠けていたのが、追い詰められた戦場においてだからこそ必要な「ユーモア」だったのではないか。

 先の文で、ドイツと日本を入れ替えたとして、三島も否定はしまい。口元を苦そうに歪めるだろうが。

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