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2006年11月 2日 (木)

思い出したことども(2)

(1)より、続編を。
 amazon.co.jp で、最所フミ『英語類義語活用辞典』の書評で、要するに「古い」という批判があった。

例えば、rogueという言葉。これは、最所の辞典では、「愛嬌じみた『わるもの』の意に今では多く用いられる」とある。だが、Bushが北朝鮮を「ならず者国家」(a rogue state)と名指しているのを見ると、「愛嬌じみた『わるもの』」では既にズレが生じているのではないか、というのだ。

 一方で、アメコミを映画化した「X-MEN 」(2000)に登場する、他者の生気を吸い取るミュータントに、Anna Paquin(「ピアノ・レッスン」の子役)演ずる Rogue がいる。この役どころは、恋人とキスをしたり抱き合ったりすると、相手をクタクタの干物にしてしまう少女なのだから、これなどは、最所の辞書とピッタリではないか、と思うのだが?

 言葉の世界は、反証を一つ出しただけで崩れる数学とは異なる。通常、論理の世界は仮定から結論まで1つの道で構成されるが、言葉の世界は、いわば重ね着だろう。表面の色合いや柄が単純に見えても、その裏地にどのような趣向を凝らしているかで、トータルとして表出されるものは異なってくるのは当然だ。そこには、読まれるテキストの深さとともに、読み手自身の深さも反映される。

 さしずめ、この評者は、お堅い記事はよく読んでいるのだろうが、ちとエンターテイメント系は苦手ということだろうか。最所を批判するなら、もう少し映画を見てからのほうがよさそうだ。

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コメント

御意。

投稿: renqing | 2006年11月 2日 (木) 13時13分

最所フミ、とアホ・ブッシュ。どっちが英語とモノの道理、を分かっていると思っているのだろうかねえ。言葉はナマモン。辞書が多少古くなるのは当然。ひとつふたつ古いからといって四の五のゆうのは言葉を知らぬ人だろう。古い人間は、古い語義で今も使っている。

詩人は私人。男女のどろどろはあって当然。吉本隆明なんぞもすったもんだをやった。小林、大岡、中原の有名な例もある。英語学者は英語で勝負、詩人は詩で勝負。男女の組んずほぐれつ相関図、ゴシップ、わたしにとってはどうでもよいこだ。

投稿: 古井戸 | 2006年11月 2日 (木) 02時30分

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受信: 2006年11月26日 (日) 22時58分

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