中世日本における、selfishとしての「自由」
吉田兼好、徒然草(1317年・文保1から1331年・元弘1の間に成立?)より
〔60段〕
この僧都、みめよく、力つよく、大食(たいしょく)にて、能書、學匠、辯説人にすぐれて、宗の法燈〔一宗の光明たる中心人物〕なれば、寺中にも重く思はれたりけれども、世を輕く思ひたる曲者にて、よろづ自由にして、大かた人に隨ふといふ事なし。
(1) 1-60
〔187段〕
萬の道の人、たとひ不堪なりといへども、堪能の非家の人にならぶ時、必ずまさることは、たゆみなく愼みて輕々しくせぬと、偏に自由なるとの等しからぬなり。藝能所作のみにあらず、大方の振舞、心づかひも、愚かにして謹めるは得の本なり、巧みにしてほしきまゝなるは失の本なり。
(4) 181-243
この徒然草、もともと貴人むけ読物として企図されたが、まあ余り世人には受けず、細々と中世知識人たち(歌人、僧など)に読み継がれていた。
ところが、江戸期になって町人層にブレーク。いくつも注釈書が出回り、当然、目端の利く物書きは本歌取りを狙うわけで、井原西鶴に『西鶴俗つれづれ』(没1693年の遺稿)なんていうのもある。
とすると、江戸期の「自由」用例に、この徒然草刊本類(と言っても二箇所しかない)がある程度の影響を与えていたことは推測可能かも。
そう言えば、研究書で、日本における「自由」を博捜した本があったっけ。
宮村治雄『日本政治思想史――「自由」の観念を軸にして』放送大学教育振興会(2005年)
これを読んでから、書けばよかった。(-_-; そのうち、ということでご容赦。
註 Wikipedia、および、平凡社世界大百科事典(1998)、の該当箇所を参考にしました。
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