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2006年12月

2006年12月31日 (日)

奇妙な果実、あるいは、ワクワク(2)

 手塚治虫「メトロポリス」、R.スコット「ブレードランナー」、F.ラング「メトロポリス」。これらに共通しているものはなにか。それは、女性型ロボットと人間男性との恋愛である。

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奇妙な果実、あるいは、ワクワク

ボルヘスは書いていないが、私はさらに、この系列に属する植物の怪異として、中世のペルシア詩人の作品によってヨーロッパに伝えられた、支那海の果てにあるというワクワク島の伝説をも付け加えなければならないと思う。
 ワクワク島では、イチジクに似た植物の果実から、羊ではなくて、人間の若い娘が生じるのである。果実が熟すると、娘は完全な肉体を備えて、髪の毛で枝からぶら下がり、やがて熟し切ると、「ワクワク」という悲しげな叫び声をあげながら、枝から落ちて死んでしまう。哀切な童話的な幻想にみちた伝説と言ってよいだろう。
 私はイランに旅行したとき、薔薇の花の咲き乱れたイスパハンのホテルの中庭で、西瓜のように大きな、中身が黄色くて甘いメロンを食べたが、残念ながら、メロンの中から羊は飛び出してこなかった。
『澁澤龍彦全集』河出書房新社(1994年)、第16巻所収、「幻想博物誌」中、「羊の物語」より

 この物語から一篇のアニメ映画が作れそう。手塚治虫原作の『メトロポリス』(2001年)に登場するティマの記憶が不思議に甦る。

〔追記20210912〕小野不由美『十二国記』における、ひとの子の生る木 、のモデルはこのワクワクだろうか。

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2006年12月25日 (月)

teaching と communicating は異なる

 teaching と communicating は異なる。安倍教育改革なるものが目指すというのはあくまで前者。これには、始めから、「教える」立場の人間と、「教わる」立場の人間が前提とされている。ここに対等な人間関係の入り込む余地はない。しかし、子供たちが大人に求めているものは後者だ。なぜなら、communicatingは相互に敬意を払う人間関係にしか成立しないから。そもそも、これがなければ他者の人権など理解出来まい。

 孔子も言っている。

子曰。不曰如之何。如之何者。吾末如之何也已矣。
 子(し)曰(いわ)く、これをいかん、これをいかんと曰わざる者は、
 われこれをいかんともする末(な)きのみ。
『論語』巻第八 衛霊公第十五(Web漢文大系)

 ここに表明されている思想は、teaching としての《教育》の原理的不可能性であり、communicating としての《教育》の原理的可能性なのである。

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2006年12月24日 (日)

治者であるがゆえに正しいわけでなく、被治者であるがゆえに正しくないわけではない(1)Being the ruler doesn't mean he is right, so being the governed doesn't mean they aren't right.

「よりひろい視野からすれば、民俗信仰の抑圧は、明治維新をはさむ日本社会の体制的な転換にさいして、百姓一揆、若者組、ヨバイ、さまざまな民俗行事、乞食などが禁圧され、人々の生活態度や地域の生活秩序が再編成され、再掌握されてゆく過程の一環、そのもっとも重要な部分の一つであった。

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2006年12月20日 (水)

甘酒売りは夏歩く

 ここで言う甘酒は、実は酒ではない。飯と米こうじだけで作る発酵飲料のことである。こうしてできた甘酒は、でんぷんが酵素により分解され、ブドウ糖が生成され、必須アミノ酸も含まれる、体力回復ドリンクなわけである。成分的には、現代の病院で使用される点滴とほぼ同じ。

 近世、最初のころは、冬のものだったようだが、その後一年中売られるようになり、そうしてくると、夏バテにも効き目があることが経験的に知られ、「甘酒」が夏の季語にもなる。

 ノロ・ウィルスも流行るご時世。「どうも、ヤバイ。」と感じたら、(酒を含まない)甘酒を召し上がるのも、健康維持法かと愚考致す次第。

参照
1)甘酒と健康(かねこみそ株式会社)

2)長崎大学附属図書館 幕末・明治期日本古写真メタデータ・データベースより
甘酒売り(1)
甘酒売り(2)
甘酒売り(3)
甘酒売り(4)

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2006年12月18日 (月)

未来を予言する最良の方法は、未来を作ってしまうことだ

 このセリフ、複写機メーカー、Xeroxのパロアルト研究所の中の、今のPCの始祖鳥(ちょっと古すぎるか?)ともいうべき、Alto開発チームの合言葉だったんだそうだ。

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2006年12月16日 (土)

天皇の菩提寺(2)

 この天皇家の菩提寺、泉涌寺(せんにゆうじ)には、霊明殿という建物がある。そこには、なんと、天智天皇の位牌があるという。これには、くりびつ・てんぎょう!(ガラパゴスさんとこのネタを拝借しました。^-^v)

 これはありえなーい。

 なぜなら、「位牌」という道具は、鎌倉期に禅僧が日本に持ち込んだ儒教アイテムだからだ*。その頃、入宋したものの中に、泉涌寺中興の祖、俊巣(しゆんじよう)もいる。

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2006年12月14日 (木)

天皇家の菩提寺

 京都市東山区に、泉涌寺(せんにゆうじ)がある。この寺、つい140年前、幕末の孝明天皇*まで、れっきとした禁裏様のお家の菩提寺だった。

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2006年12月 9日 (土)

「こころ」は、heart か、mind か?(2)

 中国語の心 xin 。これ、なかなかわからん。中国語大辞典(角川書店1994)によっても、漠として捕まえ難い。多少、興味深い用例が、「心地 xindi 」。  こう書いてある。

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2006年12月 2日 (土)

「こころ」は、heart か、mind か?(道草篇)

「裸像の肉体は、いわば完全な肉体である。ギリシア語では肉体と人間とは、同じ単語で表現されていた。このような人間像は、ローマ人あるいはエトルリア人のような他民族の人間像ときわだった対照をなしている。ローマ人やエトルリア人にとっては、頭が人間の主要部であった。

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2006年12月 1日 (金)

明治の立身出世主義の起源について(2)

「仰げば尊し」のフル・コーラスを、ご参考に。

文部省唱歌(一八八四(明治十七)年発行の「小学唱歌集第三編」)

一、
  仰げば尊し、わが師の恩。
  教の庭にも、はやいくとせ。
  おもえばいと疾し、このとし月。
  今こそわかれめ、いざさらば。

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