モーツァルト vs. 美空ひばり(2)
つらつらと考えるに、モーツァルトと美空ひばりには共通点がある。
それは、モーツァルトなら父レオポルトが、美空ひばりなら母喜美枝が、己の子の天才を世に認めさせるため、ドサ回り、つまり地方巡業をさせた点だ。
モーツァルトは6歳(1762年)から、なんと10歳(1766年)まで、ミュンヘン、ウィーン、ドイツ各地、ベルギー、パリ、ロンドン、オランダ、パリ、スイス、と、4年間も「巡業」に明け暮れていた。美空ひばりは、8歳(1945年)から、11歳(1948年)までの3年間、売り出すことを目的に、各劇団に所属し、その巡業に同行する。
何のことはない、モーツァルトも美空ひばりも、ステージ・パパ or ママが本人たちにくっついて、各地で必死に売り込んでいるわけだ。ま、それは後年、実を結ぶことになるのだが。
〔註〕前回記事へのコメントで、かぐら川さんが重要な指摘をしてくれている。
>(日本の音楽界は、軍楽隊というメディアによって西洋音楽を吸収した時代の「しっぽ」が、この「通俗曲」という言葉に残っていることを忘れて、「精神性」に走ってはいけないと考えるのです。)
これは、旧日本軍が、軍の外側世界の民間のことを「地方」と言い習わしていたことと相等だろう。日本の近代文化への「軍隊」からの刻印は意外に根深いといわねばならない。
〔註〕下記も参照されたし。
モーツァルト vs. 美空ひばり
モーツァルト vs. 美空ひばり(2)
モーツァルト vs. 美空ひばり(3)
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コメント
muji男さん、どうも。
天才は、それにふさわしい努力をするようになっています。天から指名されるということはそういうことでしょう。天才も大変ですよね。
投稿: renqing | 2007年1月15日 (月) 02時09分
トラバありがとうございます。偉大な人たちは努力するのですね。勉強になりました。
投稿: muji男 | 2007年1月15日 (月) 00時27分