第85回全国高校サッカー選手権大会決勝
第85回全国高校サッカー選手権大会、盛岡商(岩手)対作陽(岡山)の決勝戦。0対0で折り返した後半のみテレビ観戦。
両校無得点の均衡が破れたのが、後半11分。
作陽DF13桑元剛が右サイドからドリブルで盛岡商の中央に切れ込み、ペナルティーエリア手前、正面右にいる、負傷のため後半から投入された作陽FW9・エース村井匠へパス。この村井が3人のDFに囲まれながら、ジダンばりの足裏でボールを引くフェイントでDFの密集していない逆サイドの左へボールをコントロールし、ワンステップでよくボールの芯を振りぬき、強烈なシュートを放つ。これがクロスバーの当たり、跳ね返ったボールに、走り込んできた作陽DF13桑元がしっかり反応し、ヘディングで押し込み、ゴール。
ゴール前での、作陽FW村井の落ち着いた個人技に感心。なかなかのものだ。Jリーグからも何チームか誘いがあったのも頷ける。しかし、関西学院大に進学が決まっているという。これには感心しない。いったい彼は大学に行ってなにがしたいのか。サラリーマンになりたいのだろうか。大学なんて、プロの道を断念してからだっていくらでもいける御時勢なのに。おおよそ周りの大人から、「大学ぐらい出ておけ。」程度の、何の定見もない助言を受けたのだろうと察しがつく。しかし、大学リーグのレベルにがっかりして、プロに行かないことを後悔するだろう、平山相太(国見高→筑波大→オランダ・ヘラクレス→FC東京)みたいに。フィジカルコンタクトが常に付きまとう、サッカー選手の寿命は、野球などのプロスポーツに比べて、平均的にかなり短い。自分の人生にとって、「今」何が最も大切なのか、自分の頭でよーく考えろよ、村井。大学進学後、「失敗したぁ。」と思ったら、バルセロナ(スペイン)のテストでも受けるんだね。己のあやまちに気づいて直すのに遅いということはないから。
横道に逸れたが、村井にパスを出した後、しっかり状況を見て、ゴールに詰めていた桑元も素晴しい。フットボールは、ゴールというラスト・ピースを入れることでそのプロセス全てが意味を持つジグソー・パズルだ。ゴール前までどれほど美しく華麗にボールを運んでも、最後にゴールマウスに押し込めなければ、DFの一瞬の隙でボールをかっさらわれ、キーパーの脇にそっと流し込まれてしまえば、その試合は失われてしまうのだ。ゴール、ゴール、ゴール。それを意識した桑元は賞賛に値する。
そして、後半26分。後半途中投入されたばかりのスピードのある盛岡商MF13大山徹が、ペナルティーエリア左サイドを鋭く抉り、フェイントで相手DFを振り切って、ゴールそばの左ライン際から低く折り返す。すると、ゴール正面で待っていた、先ほどPKを外した盛岡商レフティMF11林勇介が、一度ボレーシュートをミスりながらも、自分の前に転がり出てきたボールを諦めずに、しぶとくつま先で押し込む。これで、盛岡商が同点に追いつき、試合は振り出しに戻る。
さらに、後半40分。盛岡商FW9成田大樹が左サイドをドリブル突破。左ゴールライン際に切り込んで、一瞬ボールを止め、作陽DFを置き去りにし、ゴール前にパス。ゴール前に詰めていた、盛岡商FW10東舘勇貴がスルーし、裏に走り込んだ盛岡商MF8千葉真太朗がドンピシャでゴール右に決める。これで盛岡商が逆転成功。
ここで、感心するのは、成田の見せたテクニックと盛岡商FW10東舘勇貴が、自分の目の前に来たラスト・パスをスルーしたプレイ。自分の右後ろから、千葉が来るのを「感じ」、確信をもって落ち着いて、ゴール眼の前でスルーしていた。これには脱帽。高校生のレベルもここまで来たか、という印象。
全体として、随所に「フットボールしているなぁ」という感想を持った。日本のユースのレベルは確実に、かつての「サッカー」から、世界共通の「フットボール」へ脱皮しつつあるのは間違いない。日本サッカー協会の指導者層からの育成事業が、うまく回りだしているのだろう。あとは、「ゴール」を奪う楽しさ、面白さ、醍醐味を真正面から肯定する空気を幼少期から醸成すれば、ゴール欠乏症候群は遠からず治癒されると思う。
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