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2007年3月12日 (月)

文学の効用

問い「文学研究の心得についてひとこと・・・。」

吉川「文学研究は、本によるもんです。書物というものは言語で出来ているから、方法の初めは、その言語を著者の気持のとおりに読み、再体験するということで、まずそれが必要でしょうね。すべてはそこから出発する。そして著者の言語の奥に、著者自身でさえも自覚しなかったものを掘り出すということが、文学研究の目的だと思いますね。

 人間の現実の複雑さを教えるものは文学だと思います。だから、全然文学を読まない人のものの考え方は、往々にしてたいへん独断的です。独断的だけならいいですけれど、他人に対して冷酷になるんじゃないんでしょうか。人の美を成さない*ようになるんじゃないでしょうか。だから文学は皆さんお読み下さ い、その方が人生に役立ちます、ということは自信をもって申せると思います。」

吉川幸次郎「中国文学のために」、より
『わが道をゆく ―人生随談話― 』吉川幸次郎、福原麟太郎ほか、p.116
 雷鳴社1974年

*子曰。君子成人之美。不成人之惡。小人反是。
子(し)曰(いわ)く、君子は人の美をなし、人の悪をなさず。小人(しょうじん)はこれに反(はん)す。
『論語』 顔淵第十二(16)

※参照 弊ブログ記事 「心に棲む鬼

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