バグダード、2007年4月26日、午後5時03分、木曜日
「もちろん、その壁は誰をも保護などしない。 私は時々、ヨーロッパで強制収容所が始まる時もこんなだったのではないかと思う。ナチ政府はおそらくこう言っただろう「いいかい、私たちはこの小さな壁でユダヤ人たちを保護しようとしているだけなんだよ。これで、誰もこの特別地域に入って彼らに危害を加えることはできなくなるだろう!」と。 しかし、それはまた、そこから出られなくなるということでもある。」
「壁が崩壊する前のベルリンや現在のパレスチナのように、今こそアメリカにとっては、物理的に分割して征服する時になった。このようにして、彼らは、「シーア派地区」からスンニ派を、「スンニ派地区」からシーア派を追い出し続けることができるというわけだ。 」
「一方で、国を去ってまだどこかわからないところで新しい生活を始めることはとても大変なことなのだから、小さな関心事などどうでもよくなってしま うだろうということは、私はわかってはいるのだけれど。 おかしいのは、私たちの生活はどうやら些細なことに占められているように見えること。私たちは、写真アルバムを持っていくかどうかを議論している。 4歳の時から持っている私のぬいぐるみを持っていってもよいかしら?弟Eのギターの余地はある?どんな服を持っていく? 夏服? 冬服も? 私の本については? CDや赤ちゃんの写真についてはどうかしら?」
「ばかものが侵略しようと思いついたという、ただそれだけのために、国を去らなければならなくなるほどの不正義が、すべてを飲み込んでしまう時もあ るのだ。私たちが、生き残って普通の生活をするために、家や、家族の生活の痕跡や友人を後にしなくてはならないなんて不公平だわ・・・そして何に向かっ て?」
「自動車爆弾と私兵集団か、それとも、確実なものが何もない未来のどことも知れない場所に、なじみ愛しているものすべてを捨てて去っていくか、どちらがより怖しいかを判断するのはむずかしい。
午後5時03分 リバー
(翻訳:ヤスミン植月千春)」
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