誰にも言えそうなことで、誰も言えなかったこと(1)/ What anyone could have said and no one else could have said (1)
「誰にも言えそうな事で、誰にも言えなかったことを言っているというのは、和泉式部の感性と知性とのしていることなのである。」
窪田空穂 『窪田空穂歌文集』講談社文芸文庫(2005年)、「歌人和泉式部」より、P.147
古典にほとんど疎い私だが、優れた読み手に教えられ、和泉式部の、そっとやり過ごすしかない悲しみに触れることができた。"What have I done?"とつぶやくマンスフィールド描く老女と相通ずるものがあると思う。
小式部内侍なくなりて、孫(うまご)どもの侍りけるを見てよみ侍りける
とどめ置きて誰をあはれと思ふらむ子は増さるらむ子は増さりけり
産のために早世した娘は、この世に己が子とこの母を残して行ってしまった。娘は、己が子を哀れと思うか、この母を哀れと思うか。それは、己が子を哀れと思うだろう。私だっておまえを亡くしてこれほど悲しいのだから。そして子どもを残して逝く母として悲しむおまえを、さらにお前の母として私は哀れに思うのだよ。
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