二つの貨幣論
日本史家の著した貨幣論として注目すべきものに、
網野善彦「貨幣と資本」、岩波講座日本通史 (第9巻)1994、所収、がある。
「・・、十六世紀後半、畿内・西国で銭から米への転換があったこと、さらに太閤検地が石高制を基本にしたことを「現物経済への復帰」などとするのは全くの的はずれであり、これは長い歴史を持つ米の貨幣機能が西日本においてあらためて表面に現われ、統一権力がそれを国制として採用したと考えなくてはならない。」 同上、p.241
この網野貨幣論は、古代から16世紀にかけての列島貨幣史を網羅していて圧巻なのであるが、その一方でなんとも形容し難い隔靴痛痒の感が残る。何故かといえば、そこに「貨幣とは何か」を問う理論的視座が欠けているからである。もし網野が生前、下記の議論を見知っていれば、上記の網野貨幣論も随分整理され見通しのよいものになっていたに間違いない。
カール・ポランニー「貨幣使用の意味論」(1957年)、 『経済の文明史』(ちくま学芸文庫2003)、所収
現今の新しい世界大恐慌は、人類にとっての貨幣の意味を再び人類へ投げかけ返している。貨幣の歴史を差し当たりこの二編からたどり直すことは、そのための有意義な作業になると思う。
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