リベラリズムの核心は、自由ではなく正義である
自由は、正義理念が課す公共性の規律に服してはじめて、「他者からの自由」、すなわち、他者を支配ないし同化するか、それができなければ排除するという権力への欲動を秘めた自己力能化としての自由から、「他者への自由」、すなわち、他者の批判と撹乱的影響を自己の精神の地平を拡大再編する自己変容の触媒として受けとめる自由へと成熟することができます。正義に先立つ主体の能力としての「他者からの自由」」ではなく、正義が可能にする「他者への自由」こそが、リベラリズムの認知をうける自由です。リベラリズムの基底的理念は自由ではなく正義であるとというのは、この意味でおいてです。
井上達夫「リベラリズムをなぜ問うのか―『他者への自由 』韓国語版への序文―」 『創文』NO.519(2009年5月)、p.6より
うーむ、なかなか難しい。相互批判の自由が人間各自の人間的成長の機会であり、相互批判という他者干渉が許されるのは、正義という名の公共性の規律に各自が服しているときである、という意味のような気がする。ま、捲土重来、と言うことにしておこう。
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