末木文美士『近世の仏教 華ひらく思想と文化』吉川弘文館2010年(前編)
今年、渡辺浩氏による徳川政治(=儒家)思想史の梗概が出版された時、次は徳川仏教思想史かな、と思ったが、その時すぐ名前が浮かんだのが、末木文美士氏だ。ただ、もともと平安仏教を専門とする研究者だから、氏によるこれまでの優れた通史*とは異なり難しいかな?と思ったりもしたのだが、ついこの七月に出ていた。
各種出ている新聞などの書評は、概ね好評だ。
・【レビュー・書評】歴史文化ライブラリー300 近世の仏教―華ひらく思想と文化― [著]末木文美士 - BOOK TIMES - BOOK:asahi.com(朝日新聞社)
・近世の仏教 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
・今週の本棚・新刊:『近世の仏教 華ひらく思想と文化』=末木文美士・著 - 毎日jp(毎日新聞)
・【レビュー・書評】近世の仏教―華ひらく思想と文化 [著]末木文美士 - 書評 - BOOK:asahi.com(朝日新聞社)
・書評
私の読後感は上記書評子たちと若干異なる。それは後編に記そう。
*末木文美士『日本仏教史 思想史としてのアプローチ』新潮文庫(1992)
末木文美士『日本宗教史』岩波新書(2006)
**参照されたし
日本思想の通史として(ver.2)
末木文美士『近世の仏教 華ひらく思想と文化』吉川弘文館2010年
○詳細目次
近世仏教を見なおす―プロローグ
・近世仏教は堕落仏教か 辻善之助の堕落仏教論/近世は儒教の時代か
・新しい近世仏教像へ 柳宗悦と中村元の近世仏教評価/パラダイムの転換
・中世仏教観の転換 顕密体制論とそれ以後/「顕」と「冥」の重層
中世から近世へ
中世仏教の展開 兼学兼修の時代/戦国期の仏教
信長・秀吉と仏教 信長の仏教弾圧と安土宗論/秀吉の宗教政策
徳川幕府の宗教政策 幕府の宗教統制策/近世寺院の役割
天海と家康信仰 天海と寛永寺/家康の神格化
儒教と仏教 近世儒教の形成/羅山と貞徳の儒仏論争/神道への対応
開かれた近世
キリシタンの時代 キリスト教との出会い/キリシタンの広まりと禁制/鎖国体制
キリスト教と仏教の論争 ハビアンの『妙貞問答』/キリスト教批判の諸相
黄檗宗のもたらしたもの 明末仏教の隆盛/隠元の来日/隠元の教説
ケンペル、シーボルトと日本の宗教 ケンペルの日本宗教観/シーボルトの『日本』
の宗教記述/シーボルトの弟子たちの研究
思想と実践
大蔵経の出版 写本から版本へ/鉄眼版の開版/了翁による鉄眼版普及/出版文化の もたらしたもの
教学の刷新 文献主義の興隆/霊空の本覚思想批判
戒律の復興 具足戒と大乗戒/戒律復興運動と安楽律騒動/普寂と慈雲の場合
批判的研究 鳳潭の華厳研究/普寂の鳳潭批判/富永仲基の大乗非仏論
世俗の倫理 鈴木正三の職分仏行論/盤珪・白隠・慈雲/仏教世俗化の問題点
諸教との交渉 排仏論の動向/新井白石の『鬼神論』/仏教側の三教一致論と『旧事 本紀大成経』
信仰の広がり
畸人と仏教 畸人と僧侶/売茶翁高遊外/良寛の漢詩
女性と仏教 仏教における女性/祖心尼/橘染子
民衆の信仰 多様な庶民信仰/地下信仰と新宗教
真宗の信仰 真宗の特殊性/肉食妻帯論/三業惑乱の論争/妙好人の信仰
信仰と造形 円空と木喰/仏教絵画の自由表現/『仏像図彙』とギメ仏像収集
近世から近代へ―エピローグ
・仏教から神道へ 近世思想の変遷/平田篤胤の死生観
・近代仏教の形成 明治初期の神仏関係/島地黙雷と信教の自由/近代仏教の重層性
・改めて近世を問う 近世の位置づけ/「顕」と「冥」から見た思想史
あとがき
参考文献
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