チーム・マネジメントにおける現在と未来
まず、前日本代表監督の、現在の発言を聞こう。
――今月末2月26日(土)には家長選手の所属するマジョルカがバルセロナと対戦します。家長選手に対して、岡田さんはどういう印象をお持ちですか?
家長は実を言うと、ワールドカップの時に23人のメンバーにサプライズで入れようか最後まで悩んだ選手。彼は、すごいポテンシャルと決定的な武器を持っている。体の強さ、スピードに技術。パスするふりをして相手を抜く選手はいるけど、相手と向かい合って “さぁいくぞ”という状態から、1対1で勝負できる数少ない日本人。今は、香川や宮市も出てきたけど、その中でも家長が持っているモノはピカイチだと思っています。
スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ|WOWOWオンライン
代表監督に求められるのは、勝利という名の「現在」と、次世代の強化という「未来」のバランスをぎりぎりまで追求することだろう。それからすれば、彼の口から、上のような発言を今さら聞きたくもない。私から言わせれば、「それなら使えよ!」だ。彼の選手起用をみると、ブラジル大会を見据えた日本代表の成長という視点がまったく感じられなかった。強化の視点(未来)が感じられれば、たとえ勝利(現在)が伴わなくとも、これほど閉塞感を代表のゲームに感じることはなかったのではないか。さらに言えば、次世代を交えたとき、戦力が低下していたのかといえば、香川、家長のポテンシャルを考えれば、トータルした戦力はむしろ上がっていたのではないかとさえ思える。今さらながら腹が立つ。
前日本代表監督と似た印象を持つのは、バルセロナのジョゼップ・グアルディオラ監督だ。選手起用で疑問を感じるのは、バルサの背番号9番(すなわちCF)をつけたボージャン・クルキッチ(満20歳)を使わない点。今のバルサのFWの席は、左からペドロ、ビジャ、メッシ、と三人あわせて56点(今シーズン、リーガ)を稼ぎ出すスーパーな選手たちで満杯だ。したがって、勝利を優先すれば、可能ならば現状のベストメンバーで戦い続けたほうがよいに決まっている。しかし、下記の表を見てもらえば一目瞭然だが、
位置 | 番号 | 選手名 | 生年 | 年齢 | 平均年齢 |
GK | 1 | ビクトル・バルデス | 1982 | 28 | |
DF | 2 | ダニエウ・アウヴェス | 1983 | 27 | 28.25 |
DF | 3 | ジェラール・ピケ | 1987 | 23 | |
DF | 5 | カルレス・プジョル | 1978 | 32 | |
DF | 22 | エリック・アビダル | 1979 | 31 | |
MF | 6 | シャビ | 1980 | 30 | 26 |
MF | 8 | アンドレス・イニエスタ | 1984 | 26 | |
MF | 16 | セルヒ・ブスケツ | 1988 | 22 | |
FW | 7 | ダビド・ビジャ | 1981 | 29 | 25 |
FW | 10 | リオネル・メッシ | 1987 | 23 | |
FW | 17 | ペドロ | 1987 | 23 |
ビジャの年齢を考えると、現在ピーク・アウトを迎えているわけで、この1,2年で後継者を定めなければならないのはほぼ確実なのが実情だろう。だからこそ、バルサはボージャンに9番のユニフォームを着せたと考えられる。しかしながら、その使い方は、はっきり言って残務整理でしかない。CFはそのキャリアのピークを迎えているビジャを使わなければもったいないし、投入コストからみて不合理だ。左ウィングは勝負強く若いペドロが確実に結果を出している。右ウィングはいわずと知れたメッシで動かしようがない。そうなると、追走してくるレアルを蹴落とすことを考慮すれば、勝ち続けためにベストメンバーでゲームに臨まなければならないのは理解できる。しかし、今のバルサのCFビジャの使えなくなるのを待ってボージャンをリザーブに残しているなら、バルサの未来のCFの成長する機会をむざむざ逸してしまうことにしかならない。ここは攻撃陣もローテーションを組むしかないだろう。もしくは、ペップの左ウィングのファーストチョイスがどうしてもペドロなら、ボージャンを他チームへ(完全買取条項を含まない)レンタル移籍でビッグゲームでの実戦経験をつませる必要がある。それをもしないのであれば、いわば飼い殺しに等しいのではないか? 結局、若手が成長する最高の糧は公式戦以外ないのだから。
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