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2011年5月 3日 (火)

原発はなぜ儲かるか?(20190321リンク更新)

 下記は東電のサイトにある電気料金決定のフローチャートである。

 実はこの中に、なぜ東電が原子力発電所を作りたがり、そしてその出力(つまり稼働率)を高めたがるかを解明する鍵がある。

※参照
原発、トイレのないマンション( Nuclear power generation is a condominium without a toilet.): 本に溺れたい

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 電力会社も、電力供給という公益を担いながらも、その一方で企業なので、最低限、支出はその収入で購わなくてはならないし、会社存続のことを考えれば、多少の利潤もあげなくてはならない。ただ儲けすぎてもいけない。地域独占を認められているから。

 ということで、総原価=電気料金収入、となるように電気料金を定めることになっている。しかし、コスト=収入、では利潤は出ない。したがって、予め、利潤が計画として保証される仕組みとなっている。それが図中の「総原価の算定」にある「事業報酬」である。「事業報酬」などと言っているが、何のことはない利潤のことである。「事業報酬」は以下の方法で算出される。

事業報酬 = 〔レートベース〕×報酬率

 〔レートベース〕 = 特定固定資産+建設中の資産+核燃料資産+特定投資+
             運転資本+繰延償却資産

      報酬率 = 自己資本報酬率×30/100+他人資本報酬率×70/100

 「レートベース」とは、簡単に言えば、電力会社のメインの固定資産である発送電のための機械設備のこと。「自己資本報酬率」とか「他人資本報酬率」とは、他業種でいえば、自己資本利益率と他人資本利益率のことで、それをウェイト付けして合計したものが「報酬率」であり、他業種でいう総資産利益率(いわゆる利潤率のこと)である。この「報酬率」は借入金利より高くなくてはならないが(そうでなければ借金の返済も出来ない)、他の高収益業種の利潤率を上回ってもならない。電力業界では足並みを揃えているので、3%と思われる。なぜ「と思われる」と書くかといえば、東電が有価証券報告書でも、ネット上でも自社の電気料金算定の基礎計数である、報酬率を公表していないからである。たまたま中部電力の平成20年度の報酬率がネット上で3%とあったので、それを利用しただけ。

 なぜ、電力会社は原発を作りたがるか、といえば、以下のようになる。

 つまり、電力会社の利潤とは、電気料金算定のための根拠となる、「総原価等」に含まれる事業報酬のことであるから、事業報酬を大きく算定できれ ば、電力会社の利潤も大きくなるはずだ。報酬率は上限下限ともに業界水準というものがあるので、これはなかなか恣意的に操作できない。であれば、固定資産を増やせば自動的に「レートベース」は膨らみ、報酬率が不変でも利潤は大きくなる

 福島県の資料*によれば、

*原子力発電所の設置概要表 - 福島県原子力安全対策課

東京電力(株)福島第二原子力発電所の、昭和50年代に着工して昭和60年代に運転を開始した、4機の原発の平均建設工事費は、1機あたり3100億円である。90年代中ごろまではそうやって、原子炉を作れば作るほど「レートベース」が膨らみ、「事業報酬」は大きくなり、つまり「儲かった」。しかし、90年後半から、日本の代表的な公共料金との一つとして電気料金の内外価格差*が問題となり、「電力自由化」の圧力に電力業界や経済産業省も抗し切れなくなる。そのため、しぶしぶ電気料金を値下げせざるを得なくなった**。

*電力自由化の効果:電気料金の国際比較

(20190321リンク更新)

**電気料金 -料金の推移

(20190321リンク更新)

 これでは、原発を含む固定資産を安易に膨らませてしまうと、減価償却費の増大による利潤圧迫と、電気料金の引き下げで、計画利潤である「事業報酬」を予定通り回収できなくなってしまう。そこから導き出される結論は、稼働率の引き上げである。これは電力業界だけの特質ではなく、巨額の固定資本を使う巨大な製造業では、売上が上がれば上がるほど(生産量が増えれば増えるほど=稼働率があがればあがるほど)、生産物1単位当りの平均費用は低下するので、利潤は大きくなる。そこで、CO2削減のためと、あたかも「環境に優し」そうなことを名目にして、元来操業効率の悪い原発の稼働率を何とか引きあげ*、その分、水力、火力の稼働率を引き下げてきた**。

*わが国原子力発電所稼働率の低迷と今後の課題(平成23年2月15日、(社)日本原子力産業協会)
(20190321リンク更新)
**過剰な発電所と無力な原子力(京都大学 原子炉実験所 小出裕章)
(20190321リンク更新)

 また、そもそも、原発は物理的にエネルギー効率が悪い

エネルギーの産出/投入比率
資源を掘りだしてエネルギーを作り出すまでに、1calを投入して何calを産出できるか

石油・天然ガス     :100倍(中東湾岸等)~20倍(米国)
石炭     :30倍前後
原子力     :20倍前後
風力発電     :10倍~20倍
太陽光発電     :5倍~10倍
原子力発電の代替エネルギーは何か:日経ビジネスオンライン

 さらに、原発は熱から電気へのエネルギー変換効率も悪い。今回の事故で明らかになったように、核燃料を制御するためは「冷やさ」なければならない。したがって、火力において使用されている高温高圧の媒体による効率的な《熱→電気》変換技術が使えないからだ。

 そのうえ、事故発生の確率と発生したときの甚大な経済的損害をリスク評価し、それを保険でカバーしようとすれば、その額は、水力や火力の比ではなく、その保険料を原発がもたらす利潤から支払えば完璧に赤字だ。つまり、原発は経済的にもペイしない。

 「朝まで(アホ)テレビ」を朝まで見て、出演者と同レベルに洗脳される者は、愚か者以外の何者でもないことは、これで明らかだろう。

〔参考1〕根気のある方で詳細を知りたい方は、下記のまどろっこしい規則をご覧下さい。
一般電気事業供給約款料金算定規則

〔参考2〕東電の有価証券報告書は下記から、PDFファイルでダウンロードできます。
有価証券報告書等 バックナンバー|企業情報|東京電力

〔リンク追加1〕
ね式(世界の読み方): リンクとメモ
上記記事は、地震と原発関連のリンク集。特に、「Japan Quake Map」には
びっくり。これほど、大小の地震が頻発しているとは・・・。
パリ在住の方のブログ。EU関連のニュースを追いかけるなら必見のサイトでもあります。

〔リンク追加1.5〕
東京大停電の可能性は(たぶん)ない

〔リンク追加2〕
Japanese symbolic elite の実態をこの列島の外に暮らしている人にも、アカラサマにしようとされた奇特な方がおられます。是非、海外にお披露目戴ければ。

Japanese Intellectuals Talk about Fukushima (26/Mar/2011)

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