有効需要と価格硬直性
先日、大震災と経済学、なる記事をポストした。
その一方で、最近、①、②の二つ記事を眼にした。そこで、先の記事の内容を若干修正してみる。ま、とりあえずアイデアのみ。
■準備
ハンガリーの経済学者コルナイ・ヤーノシュ
は、市場の状態を二つのカテゴリーに分類した。「圧力」と「吸引」である。平たく言えば、前者が「買い手市場」、後者が「売り手市場」のことである。
2011年現在の超氷河期の学卒者の就職難は、買い手市場の典型だ。バブル時の青田買いは、売り手市場だったということになる。
マクロ経済で言うと、経済全体の産出能力に比して有効需要が不足しているとき、市場は「圧力」状態にあるといい、産出能力に比して有効需要が過剰のとき、市場は「吸引」状態という。
この「圧力」概念と「吸引」概念を、価格の、上方もしくは下方硬直性と結びつけて、2×2のマトリックスを作成する。
■圧力・吸引マトリクス
市場の状態 | 価格 | |
上方硬直性 | 下方硬直性 | |
圧力 | 強い | 弱い |
吸引 | 弱い | 強い |
①薄型テレビと同様にパソコンも価格急落
産経新聞 5月30日(月)21時20分配信
薄型テレビと同様、パソコンの販売価格が急落している。今年2 月に米インテル製の半導体部品の不具合問題で春商戦向け新製品の発売が遅れたところに、東日本大震災発生に伴う消費の冷え込みが直撃し、平均単価は一時1 万円超も下落した。パソコンより安価なスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末の販売拡大もあり、価格の下落傾向は今後も避けられそうにない。 BCNによると、家電量販店などでのパソコンの平均単価は震災直後の3月14日の週に8万7500円だったが、4月18日の週には8万円台を割り込み、連 休明けの5月9日には7万4800円と、わずか2カ月弱で1万円超も下落した。 現在、急激な価格下落は一段落したものの、依然として7万円台後半と低水準にとどまっている。メーカー各社も「当面は抜本的な価格上昇が見込めない」(富 士通)とし、販売数量の拡大とコスト削減で、苦境を乗り切ろうと躍起になっている。
②TV進む価格下落 エコポイント特需空振り 在庫解消狙い薄利多売も 震災影響
産経新聞 5月31日(火)7時57分配信
東日本大震災の影響で、家電エコポイント制度終了直前の駆け込み需要は冷え込んだ。
薄型テレビの価格下落が止まらない。家電エコポイント制度が終了した4月以降に軒並み下落し、サイズによっては1年前から4割も落ち込んだ。東日本大震災 後の買い控えで在庫がだぶついたことが原因とされており、各社による“たたき売り”で販売台数そのものは増加。薄利多売を強いられている各社の苦境をよそ に消費者は、思わぬ“買い時”の恩恵を受けている。(古川有希)
[表で確認]値下がり薄型TV、家電量販店が提示した価格は?
「例年、新生活需要の高い3月は小型テレビを中心に売れ、価格も3月を底値に4月は若干値上がりするものだが、今年はそのまま下がり続けている」
こう指摘するのは調査会社BCNの森英二アナリスト。同社の調査では、4月の薄型テレビの平均価格は20型未満から50型以上まですべてのサイズで価格が 下がった。特に国内市場の43%を占める30型台は、3月初旬から5月中旬までの間に6千円以上下がり、5月23日からの1週間は平均4万9100円と1 年前に比べ4割近くも下落した。
都内の家電量販店では昨年末に発売された32型が3万円台で売られ、ポイント還元分などを引くと実質価格が2万円台のケースも見られるようになった。
価格下落の原因の一つが在庫の山だ。「各社ともエコポイント終了前の駆け込み需要を狙って大量出荷したが、震災で特需が吹っ飛んだ」と話すのは米ディスプ レイサーチの鳥居寿一アナリスト。大量の在庫を抱え「4月に入って量販店、メーカーとも大幅値下げに踏み切ったのではないか」(鳥居氏)とみている。
国内シェア首位のシャープは4月から1カ月以上にわたって液晶パネル生産工場を休止したが、この背景には、工業用ガスなどの部材不足に加えて、「在庫の解消を狙った」(業界関係者)との見方が根強い。
価格の下落は、薄利多売の“たたき売り”にもつながっており、BCNによると、4月の薄型テレビの販売台数は前年同月比46・2%増と大幅に伸びた。ある メーカー幹部は「4月は例年の3倍売れた。国内市場で1100万台程度にとどまるとみられた今年度の販売台数が上ぶれする可能性もある」と指摘している。
メーカーにとっては、ただでさえ利幅の小さいテレビ事業の採算性が一段と悪化する恐れもあるが、次の需要期である7月24日のアナログ停波を前に、一部量販店は「6月上旬にかけて在庫が底をつく可能性がある」などとして今が“買い時”とアピールしている。
■PCは平均1万円超 続く低水準
薄型テレビと同様、パソコンの販売価格が急落している。今年2月に米インテル製の半導体部品の不具合問題で春商戦向け新製品の発売が遅れたところに、東日 本大震災発生に伴う消費の冷え込みが直撃し、平均単価は一時1万円超も下落した。パソコンより安価なスマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット端末の 販売拡大もあり、価格の下落傾向は今後も避けられそうにない。
BCNによると、家電量販店などでのパソコンの平均単価は震災直後の3月14日の週に8万7500円だったが、4月18日の週には8万円台を割り込み、連休明けの5月9日には7万4800円と、わずか2カ月弱で1万円超も下落した。
現在、急激な価格下落は一段落したものの、依然として7万円台後半と低水準にとどまっている。メーカー各社も「当面は抜本的な価格上昇が見込めない」(富士通)とし、販売数量の拡大とコスト削減で、苦境を乗り切ろうと躍起になっている。
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コメント
塩沢由典 様
ご紹介の本、現在第4章「古典派価値論のリドメイニング」が終わろうか、というところまで読みすすめています。一応第5章まで読了したところで書評の形で記事化するつもりです。
つまらないことですが、急がれて本にされたとのことで、誤植が少し気になります。論旨に関係しないものなら良いのですが、そうとも言えないものも一箇所ありました。
それも含め、少々お待ち頂ければ幸甚。
投稿: renqing | 2015年6月18日 (木) 12時57分
もう4年も前の記事ですが、コメントさせてください。
ここで議論されているテーマについて、昨年の3月に出した本の第3章「価格と数量の二重調整過程」で議論しています。
塩沢由典・有賀裕二『経済学を再建する』中央大学出版部。
また、この点と古典派価値論のと関係については、同書の第4章「古典派価値論のリドメイニング」で議論しています。
機会があれば、ご一読くださればさいわいです。
投稿: 塩沢由典 | 2015年6月18日 (木) 01時01分