未踏の江戸時代
福沢諭吉が大嫌い、坂本竜馬が大嫌い、という、国文学者・中野三敏氏の講演(約110分)がYouTubeで視聴可能です。
奈良時代から明治以前に成った書物はいったい何点あるか。
国書総目録に収録しているのは点数50万点。当然、それからの遺漏が膨大にあり、それを勘案すると少なく見積もっても概数、150万点。その9割は江戸時代の出来た書物。おそらく、江戸期の書物、少なく見積もって100万点。
その100万点の書物のうち、明治以降、活版印刷されて、つまり活字化されているものは何点か。中野氏の推測は約1万点。すなわち、約1%。
そして、上記以外の活字化されていない和本の紙面は、変体仮名、草書体漢字、で印されています。なにしろ、福沢諭吉『学問のすすめ』(初版明治5年・1872)の原書でさえ、変体仮名・草書体漢字で印されています。
明治以前に日本列島で生み出された書物は、活字化されて岩波・古典大系、やら、岩波・思想大系に収録されているもの以外(つまり図書館にあるもの以外)がほとんど、ということです。
すなわち、現代の我々の江戸評価は、江戸時代に書かれた書物の99%を読まずに下されている可能性があり、逆説的に言えば、そのうちの少しでも光をあてられれば、日本史(明治以降の江戸理解)がひっくり返る可能性があるというわけです。
110分を使って見る価値はあると思います。
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