野家啓一「経験批判論」1998
《経験批判論》
純粋経験に基礎を置く実証主義的認識論の一形態。アベナリウスおよびマッハによって創始され,ペツォルト J. Petzoldt,ゴンペルツ H. Gomperzらによって受け継がれた。影響はおもにドイツ語圏内にとどまったが,イギリスの K. ピアソンにも同様の思想が見られる。
物理的事象と心理的事象,主観と客観,意識と存在などの二元論的仮定や,実体,因果などの形而上学的付加物を排除し,その結果得られる純粋に経験的な世界概念を思考経済に従って記述することを認識の目標と考えた。〈物心二元論の克服〉および〈直接与件への還帰〉というテーゼは,W. ジェームズの根本的経験論,ベルグソンの生の哲学,西田幾多郎の純粋経験論などと軌を一にする19世紀末の基本思潮であった。その科学論的側面は,マッハおよびピアソンを通じて後の論理実証主義に影響を与えた。またレーニンは《唯物論と経験批判論》(1909)を著し,マルクス主義の立場から経験批判論の観念論的傾向を厳しく批判した。
(野家啓一筆「経験批判論」、平凡社世界大百科事典1998)
上の記述を眼にしてからかなり経つが、妙に引っかかって頭から離れない。拙ブログで既に取り上げている、科学哲学者・思想史家Stephen Toulminの議論や、水波朗「指月の譬え」、塩沢由典の《複雑系》の議論と関連するはずなのだが、今ひとつ正体が掴めないまま。とりあえず、備忘録としてメモしておくことにする。
※参照 ポアンカレ『科学と仮説』岩波文庫(1985年) Jules-Henri Poincaré, La Science et l’hypothèse(1902): 本に溺れたい
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