理科は難しくない(かも知れない)
■理科は難しい?
理科は難しいと感じている中学生は多いと思われる。
中3ならば、中学校に入ってから既に2年半、理科を学習してきて、ますますそう思っている人もいるだろう。
何しろ、中1、中2、中3と別々のことを習っていて、英語や数学のようにそれ以前に学習したこと(暗記したこと)があまり役に立たない。そこのところが腹の立つ部分ではないかと思われる。
これで高校入試の出題範囲が、中学3年間全部だというなら、「いったいどこから覚えればいいのよぉ」と愚痴の一つも言いたくなるのは当然だ。
■ゾウもネズミも同じ時間だけ生きている?!
受験生ならばこれから高校入試に向けて勉強し直さなければならないことが天こ盛だ。だから、理科だけを勉強・暗記するわけにはいかない。
そこで角度を少し変えて「理科」を眺めてみることにする。あれもこれも別々に覚えたり、考えたりせずに、できるだけ似たような考え方・アプローチ(接近法)で「理科」の勉強を進められれば(少しは)楽だ。
ここに理科的な考え方で書かれ、ロングセラーとなっている素晴らしい本がある。
本川達雄 著 『ゾウの時間 ネズミの時間』中公新書(1992年)
※将来理系分野に行きたい人は必読。
この本には私たちにとって意外な事実が天こ盛で、その一つが有名な「ゾウとネズミは同じだけ生きている」というもの。でも少し変だ。ゾウは人間と同じくらいの寿命(約70歳)があるし、ネズミは数年しか生きない。なんで「同じだけ」になるのか。それはこの式に根拠がある。
ゾウの寿命(秒)÷ ゾウの心臓の鼓動時間(秒/回)= 約20億回
ネズミの寿命(秒)÷ ネズミの心臓の鼓動時間(秒/回)=約20億回
つまり、体のサイズの小さなネズミの一生は、陸上最大の動物ゾウのに比べればとても短そうだが、心臓の鼓動時間で計ってみると同じ回数だけ脈打っていて、「物理的」時間は違っても「生きた」時間は同じと見なしても構わないという訳だ。
■理科の肝(きも)は《割り算=分数の計算》!
この式で重要なのは、《同じ単位で測ってみる》=《割り算》ということ。小学校の5、6年生の算数でやった内容を覚えているだろうか? 「単位あたりの量」「割合」「速さ・時間・道のり」。実はこれらは全て《割り算》で《分数の計算》なのだった。
理科の中心的な考え方は、実はこの《割り算》である。なぜなら、一見ばらばらにみえる現象のその奥に共通のものがあるのではないか、と考えるのが理科(自然科学)の特徴で、そのために《共通する単位・基準で計り直してみる》ことが必要。その操作が《割り算》だからだ。また、中学校では小学校と違い、《割り算》をあまり使わず、《分数の掛け算》に直して計算する。 したがって、
「理科に強くなる」=「割り算に強くなる」=「分数計算に強くなる」
というわけだ。実は、数学も同じ。高校数学で習う微分積分はまさに変化率(割り算)の延長線上にある考え方である。理数系の学科(数学・物理・化学など)の中心にある計算は、《割り算=分数の計算》なのだ。理科1分野、数学の苦手な人は大概ここに弱点がある。今からでも遅くない。理数系の苦手な人は、分数の計算問題をたくさん解いてその「苦手感」を克服しておこう。かなり違ってくるはず。
■理科は難しくない
理科を《割り算》という視点から眺めると、煩瑣で輻輳し、結局「暗記すればいいんでしょ?」と思い込んでいた理科(特に中学理科)という分野を統一的に考えることが可能だ。
具体的内容は次回以降少しづつ記事化するつもり。
「理科なんて簡単だ」とまでは言えなくとも「理科は難しくない」ぐらいまでは言ってよいだろう。
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