享保五年、徂徠哭す
青 | 始 | 尋 | 黄 |
春 | 訝 | 常 | 鳥 |
到 | 掌 | 草 | 哭 |
處 | 珠 | 色 | 花 |
總 | 光 | 似 | 花 |
成 | 許 | 墳 | 泣 |
暮 | 多 | 墓 | 露 |
黄鳥うぐいすは花に哭なき花は露に泣く
尋常なべての草の色は墳墓に似らる
始めて訝いぶかる掌のなかの珠の光りは許かくも多きを
青さかりの春の到る処 総すべて暮ゆうべと成る
徂徠は次々と家族を失った。
享保五(1720)年、一人残った娘増ますが十七歳で病死する。その深い嘆きを上記の七言絶句に詠っている。時に、徂徠55歳。
《徂徠学革命》とも言うべき、徳川知性史のエピステーメーを塗り替え、男子としてやれることはやり切ったのだろうが、現代日本に比べると平均寿命が短いとはいえ、それにしても辛すぎる私生活と思える。
〔出典〕
「徂徠集」巻五
吉川幸次郎「徂徠学案」、日本思想大系36(1973) 、P.717、岩波書店
尾藤正英「国家主義の祖型としての徂徠」、荻生徂徠「政談」尾藤正英抄訳、講談社学術文庫(2013) 、P.297
あるいは、尾藤正英『日本の国家主義-「国体」思想の形成』2014年5月、岩波書店 所収「国家主義の祖型としての徂徠」pp.167-221
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