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2014年8月13日 (水)

2014年香川真司の選択

マンチェスター・ユナイテッドに移籍して2年間、ボルシア・ドルトムント時代の躍動感が香川に戻らない。

香川のドルトムント時代は2010-11、2011-12の2シーズン。この間、ドルトムントは、ブンデスリーガを2連覇した。

2011-12のドルトムントはドイツ・カップ戦の決勝戦でバイエンルン・ミュンヘンを5-2で粉砕しチーム史上初の国内2冠を達成した。この試合の香川の活躍は特筆される。まず21分に先制点をあげ、46分には3点目のレヴァンドウスキのゴールをアシストした。この前半終了寸前のゴールはブンデス盟主であるバイエルンの意気をかなり阻喪するボディーブローの効果があった。57分の4点目には直接絡まなかったが、PAのニアに侵入しバイエンルンDF2名を引きつけ、ファーのレヴァをフリーにして彼のこの日2点目を演出した。ドルのこの4点目(4:1)はバイエルンの息に根を止めてしまった。それが決まったときの敵将ハインケスの引きつった表情からは翌年の3冠を達成した名将を想像できない。そして、このビッグ・ゲームには、バイエルンにはトニ・クロースが10番のポジションで出ていたがドルトムントの勢いの影にかくれてしまっていたし、ドルのマリオ・ゲッツェは負傷で出ていない。2011-12はクロースやゲッツェを上回る輝きを香川は示していたことになる。そして、終始、このゲーム中、バイエルンの各選手が自信なさ気な様子が印象的だった。

※参照:【動画】香川真司1ゴール1アシスト!ドルトムント優勝、バイエルン戦[ドイツカップ決勝]:YouTubeサッカー動画速報

2000年代に入ってから、バイエルンが2年連続で国内タイトルを逃したことは、2010-11、2011-12の2シーズンを除いてない。そして、ドルトムントは香川移籍後、リーグタイトルから見放されているし、香川もユナイテッドの2年間、中途半端に燻ったまま。

これらは、プレーヤー香川とボルシア・ドルトムントというチームの相性がピッタリ合ったことが両者の素晴らしい2年間になったことを示唆するだろう。香川個人の貢献云々というより、とにかく香川がドルトムントという組織の中で完全にポジティブに機能した結果といえる。

香川が躍動していたのは、前方敵陣に縦のスペースがあるショートカウンターの場面だ。縦へのスピードのある動きの中でボールをコントロールするテクニック、動きの中でのプレー・ビジョンの的確さ、これが香川自身の得点と仲間へのアシストを量産した。

※参照: ボルシア・ドルトムントのフォーメーション変化(2010→2011)

一方、ユナイテッドでの香川は、ファーガソンの最期のシーズンにおいても、モイーズの最初で最後のシーズンにおいても、縦に殆んどスペースが無い、相手がブロックを敷いた中で、サイドとセンターからどう守備ブロックをこじ開けるかが常に課題となっていた。ファーガソン時代において辛うじて有効だったのは、万能の天才プレーヤー、ウェイン・ルーニーとのコンビネーションがうまく機能した場面だけだったのは、香川がMFとしては珍しいハットトリックを達成した、2014年3月2日のノリッジ・シティFC戦を見てもわかる。

※参照:【動画】香川真司ハットトリック!マンチェスター・ユナイテッド×ノリッジ・シティ[12/13]:YouTubeサッカー動画速報

これからすると、いくら世界有数のメガクラブであるユナイテッドからの誘いだとしても、香川の移籍先選択は間違っていたと言われても致し方あるまい。

そしてここにきて、ルイス・ファン・ハールに監督が交代した。香川がドルトムントに移籍していきなりブレークした2010-11シーズンは、バイエルンの監督はそのファン・ハールだった。彼はそのシーズン後半には優勝できなかった責任を取らされ監督を解任されている。その一因を作ったのは紛れも無く、シーズン前半に大活躍しドルトムントを上昇気流に乗せた香川だ。したがって、ファン・ハールは香川の能力を3年前に身をもって知らされたと言ってもいい。だから、今のユナイテッドで実戦において香川が機能していないとしても、すぐに香川を首にするのには少し躊躇があるはず。「もったいない」からだ。

ユナイテッドでポイントゲッターは幾らでもいる。それも世界有数の。RVPしかり、ルーニーしかり。マタも得点能力はワールドクラス。香川にゴールを求める必要は全くない。

それに対してスコールズ引退以後、センターハーフの適任者が一向に見つからない。現有戦力でテクニカルに及第点なのは怪我で出れないキャリックくらい。そこでスペインのビルバオからエレーラをフロント主導でとったのだが、ファン・ハールの3-4-1-2システムでは、センター・ハーフは2名必要。キャリックは3ヶ月無理。また、ユベントスのアルトゥーロ・ビダルなどの獲得も視野に入っているようだが、どうも合意寸前で何かの事情で止まっている様子。怪我の具合を計りかねているらしい。ビダルがすんなり獲得できていて、アトレティコからのオファーが現実のものなら、センターハーフとしての香川に必要性はなくなり、あっさり放出となっていたと予想する。

また、プレシーズンマッチで、香川をNo.10ではなく、No.6かNo.8で使ってみたいとファン・ハールが発言し、「No.10が多すぎる」とファン・ハール自身が公言している。そのうえ、スコールズまでが「No.10が多くてチームのバランスが悪い。」と言い出した。これらの発言は、明らかに香川を狙い撃ちでポジションの再考を促してる(圧力?)ように感じた。

そこで香川は折れたらしい。

--ボランチのポジションは久しぶりですよね。
「そうですね。僕がプロになって1年ぶり以来だから、7、8年はやっていなかったから。すごく久しぶりにやっていますけど、まだ慣れない感じは多少はあります。でも、どんなポジションでも自分が求められることをしっかりとこなしていければと思っています。そのポジションで与えられたチャンスで結果を残していくしかないので」シンジ「すごく楽しくできている」 - マンチェスター・ユナイテッド 公式ホームページ

どこが「すごく楽しくできている」んだ?

ファン・ハールが個人面談で香川に迫ったのは、あくまでNo.10にだけ拘るなら2番手、3番手のベンチ要員あるいは移籍、No.6もしくはNo.8にも意欲があるなら起用の可能性大、ただし有力なNo.6(No.8)候補が獲得できたら、そこでもポジション争いだぞ、といったところなのではないか。

夏の移籍市場が閉じるまでには約2週間超ある。香川が忍の一字でセンター・ハーフを飲む覚悟でも、最終的にそれ以上のプレーヤーが獲得できる目処が立ったなら、移籍期限ぎりぎりに、「香川、アトレティコ移籍」が一気に実現するかもしれない。アトレティコがユナイテッドに香川の身分照会をしていることは事実らしいので。

私の判断は、もしアトレティコが本気なら香川も移籍を考えたほうがよい、という下記の海老沢純一氏のご意見を支持するものだ。

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