天台本覚論から西田へ、徳川人文主義から和辻へ
・・西田も和辻も、抽象的な意味での「個人」にとらわれた考え方から脱却している点では共通しているが、その中でも、社会的存在として活動している時の、 内面的な心のあり方に焦点を置いたのが、西田の哲学であり、これに対していわば客観的に、人々の社会的な行動の様式の方に関心を向けたとき、和辻の思想となった、といえよう。
前者は、伝統的な日本の思想の上で、天台本覚論から鎌倉仏教の流れにつながり、また後者は、仁斎、徂徠から本居宣長らへの系譜につながる。この両方に共通しているのは、抽象的な意味での個人を基本とするよりも、社会の中で行動する個人を基本として、人生の諸問題を考えようとしている点である。
尾藤正英『日本文化の歴史』岩波新書(2000年) 、pp.225-6
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