インターフェースとしての言葉( Language as an interface ) 〔20260901改訂〕
今日、地球上に各地に見られる、ヒト以外の多様な生物種は、自然の選択圧のscreeningを受け、fitnessの高い身体(表現型)の生物種へと置換(=進化)して、その生物相を構成している。
ヒトは、その身に受ける選択圧に、表現型進化より圧倒的に速く、道具類を進化(変化)させることで、適応して生存してきた。
道具とは、すなわち言語である。
個体としてのヒトはかなり脆弱だ。冬期に裸体で屋外に出されたら、3時間ほどで死に至る。そのヒトの体を保護する衣服、家屋は、ヒトが相互にコミュニケートし、機能する集団として働きかけあってできた結果である。コミュニケートや相互の働きかけには、非言語の部分もあるが、これには同じ場所、同じ時刻の共有という条件が必要となる。異なる場所、異なる時刻でのコミュニケートに、ヒトどうしでは言語を媒介とせざるを得ない。我々が孔子やプラトンからの、二千年を超えるメッセージを受け取るには、ビデオレターでなく、言葉が刻まれた木簡、碑文やパピルス文書を介するしか方法がない。
ヒトにおける大脳の存在と言語の発達は相即するものなのだろう。このいかにもバランスを欠いた身体構造は、ヒトが身体進化を(相対的に)停止して、道具としての言語を進化させたことを意味する。
動物は、その身体を外界とのinterfaceとする。無論、外気にさらされている体表面だけのことではなく、内臓を含むbodyすべてが彼が身を置く環境世界とのinterfaceとなる。そして、動植物等の生物は自己のmaterialな存在すべてが自然の選択圧に常時晒されている。例えば温暖化や寒冷化といった数百年、数千年単位の地球環境の変化は、生物にとって、選択圧の変化を意味する。たとえ環境世界に変化が起きなくとも、生物種側において、なんらかの遺伝子上の変異mutationや、交配crossingの結果、各生物種に表現型上の変化が発生するだけでも、各生物種のfitnessに有意な差が生じる。
生物種の進化とは、いわば、環境世界という《鍵穴》の自律的な変化と、生物種の表現型という《鍵》の自律的変化の、contingent な組み合わせの帰結なのである。その場合、結果的に、数世代を跨いで、無性生殖なら1以上の、有性生殖なら2以上の fitness という performance を示した生物種が生き残る。その経緯が化石として残り、人間に発見されるなら、その生物種の事後的置き換わりの過程を我々人類は「進化」と呼ぶ。生物の「進化」の本質は、contingent replace と言えるだろう。従って、その coningency ゆえに、「カンブリア紀大爆発」のようなヒトの想像力を超えた爆発的進化も起こる。
動物を含む生物種は「物自体」Ding an sich (Kant)と触れている表現型(=身体/外殻)が interface となっている。その変化が進化として地球上に、いま痕跡を残している。その一方で、ヒトはある時点(言語の獲得)から、環境世界と、己のmaterialなbodyとの間に、言語を挿し込んだ。それ以降、ヒトは「物自体」Ding an sich とは直接触れることはできなくなる。一度かぶってしまった、言語というマスク、すなわちinterface をはずすことはヒトにはできなくなっているからだ。
地球上のあらゆる生物は、ユクスキュル(Uexküll)のいう環世界 (Umwelt)を構築して生存している。動物の環世界にはその身体がinterfaceとして含まれ、したがって、環境世界の急激、あるいは漸次的変化や生物種の遺伝的変異が生じた場合、各生物種のそれまでの安定していた fitness に変化が生じる。結果としてその環境世界の生物相は変化する。
ヒトの環世界はinterfaceとしての言葉によって構築されているため、身体(=表現型)を媒介とする他の生物種に比べると環世界の可塑性が圧倒的に大きい。これが、ヒトが生物種として現在の地球上に一種類しか存在しないのに、万華鏡のような、多様な生活スタイルで地球上各地で適応している理由である。
ヒトは言葉を獲得したことで、生物種としての巨大な自由を得た。しかし、その自由は、「物自体」Ding an sich としての環境世界にアクセスすることが不可能となる代償のうえにある。ヒトは「自然」から「歴史」へと追放され、常に新たな「歴史」を創造せざるを得ない永い苦役と、ひと時の歓喜の間で彷徨う存在なのである。
〔関連記事〕
言葉ともの(language and object)
人は言葉の外に出られない
※注記
本記事を英訳しました。下記ご参照。
Language as an Interface: 本に溺れたい 2025.01.20
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