幕末に列島の植民地化危機はない(2)
本件に関して、同時代の証言、それも当事者に近い立場の人間の言を一つ引いておきます。
彼の下ノ関砲撃事件の如きも、各公使が臨機の計ひにして、深きを考ありしに非ず。現に後日、彼の砲撃に与りたる或る米国士官の実話に、彼の時は、他国の軍艦が行かんとするゆゑ、強いて同行したるまでにて、恰も銃猟にても誘われたる積りなりしと語りたることあり。以て其事情を知る可し。
右の如き始末にして、外国政府が、日本の内乱に乗じ、兵力を用ひて大に干渉を試みんとするの意思を懐きたるなど、到底思ひも寄らざる所なれども、・・・
「瘠我慢の説に対する評論に就て」碩果生(福沢諭吉の口述筆記、明治34年)
福沢諭吉選集〈第12巻〉 (1981年)(岩波書店)、P.262
| 固定リンク
「Tokugawa Japan (徳川史)」カテゴリの記事
- 「産業革命」の起源(2)/ The origins of the ‘Industrial Revolution’(2)(2024.11.10)
- 徂徠における規範と自我 対談 尾藤正英×日野龍夫(1974年11月8日)/Norms and Ego in the Thought of Ogyu Sorai [荻生徂徠](2023.08.30)
- 暑き日を海にいれたり最上川(芭蕉、1689年)(2023.08.02)
- Giuseppe Arcimboldo vs. Utagawa Kuniyoshi(歌川国芳)(2023.05.24)
- 徳川日本のニュートニアン/ a Newtonian in Tokugawa Japan(2023.05.18)
「戦争 (war)」カテゴリの記事
- 薔薇戦争と中世イングランドのメリトクラシー/The War of the Roses and the Meritocracy of Medieval England(2024.11.28)
- 対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案(昭和十六年十一月十五日/大本営政府連絡会議決定)/Japan's Plan to Promote the End of the War against the U.S., Britain, the Netherlands, and Chiang Kai-shek 〔November 15, 1941〕(2024.06.02)
- イスラエルの戦争犯罪は続く・・・/ Israel’s war crimes will continue.(2023.11.29)
- いじめ、紅衛兵、内務班(2022.09.30)
- For what purpose does our country go to war?, by Akiko Yosano, 1918(2022.05.19)
「幕末・明治維新」カテゴリの記事
- リア・グリーンフェルド『ナショナリズム入門』2023年11月慶應義塾大学出版会/訳:小坂恵理, 解説:張 彧暋〔書評③〕(2024.09.23)
- 書評:関 良基『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』作品社 2024年3月(2024.05.13)
- 徳川思想史と「心」を巡る幾つかの備忘録(3)/Some Remarks on the History of Tokugawa Thought and the "mind"(kokoro「こころ」)(2023.06.11)
- 日本の教育システムの硬直性は「儒教」文化に起因するか?(2021.05.18)
- 藤井哲博『咸臨丸航海長小野友五郎の生涯』1985年中公新書〔承前〕(2021.03.14)
「福沢諭吉 (Fukuzawa Yukichi)」カテゴリの記事
- 書評:関 良基『江戸の憲法構想 日本近代史の〝イフ〟』作品社 2024年3月(2024.05.13)
- 藤井哲博『咸臨丸航海長小野友五郎の生涯』1985年中公新書〔承前〕(2021.03.14)
- 丸山真男を逆から読む(2020.09.01)
- 「身分社会」再考(2020.09.01)
- 江戸モラリズムへの死刑宣告者(2020.06.24)
コメント