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2017年12月11日 (月)

古代弥生人の名前

 縄文、弥生、古墳等の日本古代は無文字社会なので、基本的に人名は残りません。ま、残りようがない訳です。名は当然あったでしょうが、それを記録保存する文字がないからです。

 ただ、中華王朝側の史書に残るケースがあります。魏志倭人伝には、かの有名な邪馬台(やまと)国の卑弥呼(ひみこ)の名があります。彼女は三世紀の弥生人です。したがって、その名は当時の倭国王(女王)の名ということになります。ただし、倭国の使者の言う音を漢字音に当て嵌めただけらしいので、「ひみこ(ひめこ)」という音のみが弥生日本語と推測されます。

 その卑弥呼さんと仲が悪くて戦争した男王がいます(その戦争の真っ最中に卑弥呼さんは亡くなってます)。その男王の名は、卑弥弓呼〔ひみきゅうこ、ひみここ、ひこみこ〕さんと言い、邪馬台国の南に位置していた狗奴国〔くぬこく、くなこく、くなのくに〕の王です。

 それで、その女王と男王の名を並べてみます。

漢字表記 弥生日本語
 
きゅう

 「ひみ」と「こ」の部分が共通していますから、この部分は「王」を意味する弥生日本語の可能性があります。「弓〔きゅう or こ〕」の部分は、武器である「弓」の漢字を中華王朝側は当てていますから、男性の性別をあらわす弥生日本語が「きゅう」か「こ」だったので、それらしい漢字をあてたのだ、と推測できます。

 そうだとすると、卑弥呼、卑弥弓呼は、倭の使者が魏の使者に、単に「王」(尊称)、特に「男王」(尊称)と弥生日本語の発音で伝えたことを、お経のサンスクリット語の漢字音への「転写」よろしく、漢字表記しただけ、という可能性もありそうです。もしそうであれば、弓呼は〔ひこ〕つまり、古代日本語の男子尊称の「彦(ひこ)」かも知れません。

 すなわち、卑弥呼さんも卑弥弓呼さんも固有名詞、つまり人名ではなかった、という結末もあり得ます。さて、どうでしょうか。

〔参考・弊ブログ記事〕
天皇の姓(family name)
天皇の姓( family name) (2)
百姓と朝廷
国制と名前(name)
古代ギリシア人の名 (1)

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