マリア様はひと様か、それとも神様か
Max Weber は、人間集団の組織化に二つのカテゴリーを作りました。
Anstalt アンシュタルト(=institution)
Verein フェライン(=club or association)
前者は、カトリック教会(Kirche キルヘ)、後者は、プロテスタントの教派(Sekte ゼクテ)、からモデリングされています。この二つは、組織とメンバーの関係で、free entry and free exit できるかどうか、が目安です。
カトリックは、katholikos(普遍的、全体的)の名の通り、一(いつ)以外の他(た)、を認めませんでしたから、異論があれば教義の会議を開き、論争し、勝利した方が負けたほうを異端と認定して、殲滅する、ということを繰り返して来ました。従いまして、free entry and free exit を制度的に組み入れることはあり得ませんでした。生まれ落ちた時にentryし、死ぬときにexitする。
禁欲的プロテスタント諸派のひとつ、Anabaptist(再-洗礼派、Mennoniteはその末裔)の名の由来は、幼児洗礼の廃止と自覚的信仰告白による成人洗礼(つまり成人になって判断力を持った時に、再び自覚的に洗礼を選ぶ)からです。
プロテスタントはその出自そのものに、ローマ教会から抹殺されるところを、たまたま、近代主権国家のひな型、絶対王権と結びつくことによってサバイバルした経緯があり、free entry and free exit を原理的に拒否できません。従いまして、異論があれば、サッサとexitし、新たな Sekte を仲間と形成する。カトリックが組織的には教皇を唯一の首長とする一なる組織なのに、対するプロテスタントが新興もふくめれば無限に増殖するのはそのためです。
ただし、ものには表があれば裏があり、教会の霊的指導、あるいはローマ教皇を信徒の唯一の首長と認めるかぎり、マリア信仰だろうが、聖者信仰だろうが、飲んでしまうのが、教線をローマ人、ケルト人、ゲルマン人にひろげた古代西方教会の経営戦略でした。マリア信仰などは、いかにもイエスの母ちゃんへの愛にもとづいた、西方教会の延長のような外観をしていますが、その根っこはクリスマス(ローマのミトラス教の祭日、ゲルマン人の冬至祭ユール等、異教の慣習が起源)の教会内慣習化と同様で、ゲルマン人の古い地母神信仰の教会内化、妥協の産物です。付け加えれば、古代地中海世界での女神信仰である、エジプトのイシス,シリアのアスタルテ,小アジアのアルテミスやキュベレ,ギリシアのデメテルやアテナ、たちに対応するものです。民衆には、父なる神だけでなく、無条件で自己を肯定し、抱擁してくれる母神、あるいは女神が必要なのです。
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